第56話 新戦力

 マリアナ諸島に来寇した米軍を撃滅すべく、連合艦隊司令長官はあ号作戦決戦発動を発令した。

 作戦決戦の主力となるのは第一機動艦隊。

 同機動艦隊は二個水上打撃部隊と同じく二個機動部隊からなり、戦艦一四隻に空母一二隻、それに重巡一六隻に駆逐艦四八隻からなる、地球上では太平洋艦隊に次ぐ一大戦力だった。



 第一機動艦隊


 第一艦隊

 戦艦「大和」「武蔵」「信濃」「紀伊」「比叡」「霧島」「金剛」「榛名」

 重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」

 重巡「青葉」

 駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」

 重巡「衣笠」

 駆逐艦「野分」「嵐」「萩風」「舞風」「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」


 第二艦隊

 戦艦「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「山城」「扶桑」

 重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「妙高」「羽黒」「那智」

 重巡「古鷹」

 駆逐艦「清波」「玉波」「涼波」「藤波」「早波」「浜波」「沖波」「岸波」

 重巡「加古」

 駆逐艦「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」「長波」「巻波」「高波」「大波」


 第三艦隊

 「加賀」(零戦四八、四式艦偵二四、九七艦攻三)

 「赤城」(零戦四八、四式艦偵一二、九七艦攻三)

 「龍驤」(零戦二四、九七艦攻九)

 「瑞鳳」(零戦二四、九七艦攻三)

 「祥鳳」(零戦二四、九七艦攻三)

 「龍鳳」(零戦二四、九七艦攻三)

 重巡「利根」

 駆逐艦「朝雲」「山雲」「夏雲」「峰雲」「朝潮」「大潮」「満潮」「荒潮」


 第四艦隊

 「蒼龍」(零戦四八、四式艦偵六、九七艦攻三)

 「飛龍」(零戦四八、四式艦偵六、九七艦攻三)

 「千歳」(零戦二四、九七艦攻三)

 「千代田」(零戦二四、九七艦攻三)

 「日進」(零戦二四、九七艦攻三)

 「瑞穂」(零戦二四、九七艦攻三)

 重巡「筑摩」

 駆逐艦「海風」「山風」「江風」「涼風」「陽炎」「不知火」「霞」「霰」



 基幹戦力である「大和」型戦艦はブリスベン沖海戦で露呈した対空能力の貧弱さをカバーするために副砲を廃止、四基あった一五・五センチ三連装砲塔をすべて撤去し、代わりに一二・七センチ連装高角砲を一〇基増備した。

 現場としてはより高性能な一〇センチ連装高角砲、いわゆる長一〇センチ砲を希望していたのだが、こちらは生産数が少なく、「夕雲」型駆逐艦ならびに「大和」型五、六、七番艦に割り当てるので精いっぱいだった。

 「大和」型以外の戦艦も副砲の一部を撤去して高角砲や機銃を増備、さらにドイツから供与された射撃指揮装置の採用によってその能力を大きく向上させている。


 機動部隊のほうはこれまで一個艦隊四隻態勢だったのが「千歳」と「千代田」、それに「日進」と「瑞穂」の加入によってこれが六隻態勢となった。

 それら空母に搭載されている零戦は基地航空隊が運用しているものとは違う。

 基地航空隊のほうはそのほとんどが三二型だが、母艦航空隊のほうは新型の五三型で揃えられている。

 その五三型はこれまで二一型や三二型で採用されていた金星発動機とは違い、新たに一九〇〇馬力を叩き出す誉発動機を搭載している。

 三二型に比べて五割近い出力増は、従来の零戦とは別次元の運動性能と速度性能を同機にもたらしていた。

 また、日本機共通の泣き所である潤滑油や電装系部品もドイツからの高品質なそれを得ることが出来るおかげで稼働率も従来のものと変わらない水準を維持している。

 また、武装も強化され、ホ103に替えて二号機銃が搭載されている。

 ベルト給弾式で一丁あたり二〇〇発搭載される二〇ミリ弾は二一型の七・七ミリ弾はもちろん三二型の一二・七ミリ弾よりも格段に威力が大きい。

 防御力に定評のある米艦上機も二〇ミリ弾をまともに浴びればさすがにもたないはずだ。


 これまで索敵の主力だった九七艦攻のほうはもっぱら対潜哨戒に使うことにしている。

 脚の遅い九七艦攻では高速化が著しい敵戦闘機に狙われたらよほどの幸運にでも恵まれない限り逃げ切ることは至難だ。

 今後の索敵については新たに戦力に加わった四式艦偵がこれを行う。

 四式艦偵はぶっちゃけて言えば零戦五三型の改造機だ。

 航法員を乗せるために複座化したことで風防はオリジナルよりも長くなっている。

 その四式艦偵は重量と空気抵抗の増大で最高速度は零戦五三型の六二〇キロから五六〇キロにまで落ち込んだが、それでも九七艦攻や零式水偵に比べれば遥かに優速であり、それは間違いなく生存率を向上させるはずだった。


 戦闘海域に入ると同時に第三艦隊司令長官の小沢中将と第四艦隊の桑原中将はそれぞれ四式艦偵を発進させる。

 三六機にもおよぶそれらは、マリアナ近傍海域に潜む米艦隊を必ず見つけ出してくれるはずだった。

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