第38話 豪州へ
正面装備や戦技に気を取られ、とかく情報というものを軽視しがちな帝国海軍といえども、さすがに太平洋艦隊の全力出撃を見落とすほど間抜けではない。
哨戒任務にあたっている伊号潜水艦からの報告やあるいは敵信傍受などによってすでに太平洋艦隊の主力がブリスベン沖に布陣していることは分かっていた。
太平洋艦隊はおそらくはブリスベン周辺に展開する基地航空隊と連携をとったうえで戦おうとするはずだ。
それを見越して空母の艦上機については戦闘機の比率を上げている。
敵陸上機の行動範囲内に踏み込むため、まずは敵艦の撃破よりも制空権の獲得とその維持を重視した編成だった。
第一艦隊
戦艦「大和」「武蔵」「信濃」「紀伊」「比叡」「霧島」「金剛」「榛名」
重巡「熊野」「鈴谷」「最上」「三隈」
重巡「青葉」
駆逐艦「雪風」「初風」「天津風」「時津風」「浦風」「磯風」「浜風」「谷風」
重巡「衣笠」
駆逐艦「萩風」「舞風」「野分」「嵐」「秋雲」「夕雲」「巻雲」「風雲」
第二艦隊
戦艦「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」「山城」「扶桑」
重巡「愛宕」「高雄」「摩耶」「妙高」「羽黒」「那智」
重巡「古鷹」
駆逐艦「黒潮」「親潮」「早潮」「夏潮」「陽炎」「不知火」「霞」「霰」
重巡「加古」
駆逐艦「朝雲」「山雲」「夏雲」「峰雲」「朝潮」「大潮」「満潮」「荒潮」
第三艦隊
「加賀」(零戦三六、九七艦攻四五)
「赤城」(零戦三六、九七艦攻二七)
「龍驤」(零戦二四、九七艦攻九)
「龍鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
重巡「利根」
駆逐艦「海風」「山風」「江風」「涼風」「村雨」「夕立」「春雨」「五月雨」
第四艦隊
「蒼龍」(零戦三六、九七艦攻二一)
「飛龍」(零戦三六、九七艦攻二一)
「瑞鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
「祥鳳」(零戦二四、九七艦攻三)
重巡「筑摩」
駆逐艦「白露」「時雨」「初春」「子日」「若葉」「初霜」「有明」「夕暮」
戦艦一四隻に空母八隻、それに重巡一六隻に駆逐艦四八隻からなる大艦隊だった。
全体指揮は第二艦隊司令長官の近藤中将がこれを執り、第一艦隊と第三艦隊はマーシャル沖海戦の時と同様に高須中将と小沢中将がそれぞれ指揮する。
マーシャル沖海戦と違うのは、空母の増加に伴って第四艦隊が新設されたことだ。
やはり、一個艦隊に空母八隻というのはどう見ても多すぎる。
まとまった数の敵機の攻撃にさらされれば、それこそ一網打尽とされかねない。
空母部隊を二個艦隊に分けること、つまりは従来よりも巡洋艦や駆逐艦といった護衛艦艇が必要になることで鉄砲屋は良い顔をしなかったが、それでも艦隊決戦における航空優勢獲得の重要性もまた理解していたのでそこは渋々ながらも了承していた。
そして、その第四艦隊には桑原中将が新たに司令長官として就任している。
八隻の空母に搭載されている零戦や九七艦攻だが、それらはいずれも新型で、防弾装備を充実させたのにもかかわらず両機種ともに一三〇〇馬力を発揮する五〇系統の金星発動機によって最高速度を向上させており、零戦のほうは加速や上昇力も少なからずアップしていた。
それと、開戦当初から貧弱さを指摘されていた零戦の武装は従来の七・七ミリ機銃四丁から陸軍が装備するホ103、つまりはブローニング機銃の劣化版ともいえる一二・七ミリ機銃四丁に強化されている。
これは、援蒋ルートを断つために帝国海軍にインド洋作戦を要請した帝国陸軍が、その際の見返りとして技術供与を申し出たものの一つだった。
他にも海軍は陸軍から少なくない一〇〇式司偵を供与されるなど、いろいろと便宜を図ってもらっている。
二つの水上打撃部隊と同じく二つの機動部隊は対潜警戒を厳にしながらブリスベンへと急ぐ。
表向きの目的はブリスベンにある潜水艦基地の撃滅。
だが、実際のそれは太平洋艦隊の殲滅とブリスベンという都市そのものの掃滅。
続々と新造艦や新鋭機を配備している米海軍は今年中には帝国海軍の戦力を追い抜き、来年以降はその差は隔絶する一方となる。
だからこそ、その前に米海軍に痛撃を与え豪州を戦争から脱落させておく必要があった。
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