夢編物語―ユメアミモノガタリ―

蓬莱寺 嵐

第一夜

 こんな夢を見た。

私の親友が結核で床に伏せていた。彼は、もう生い先の長くないことが見て取れるくらい衰弱しきっていた。

「お前は、死んでしまうのかい。もう生きられないのかい。」

と、私が聞くと彼は静かに頷いた。

 彼は結核である。骨、筋肉、共に躍動感が無く、ただただ横たわっている。呼吸はしてはいるが、ヒュー、ヒューと音を立ててとても苦しそうである。そんな彼は消えてしまいそうな声で語ってくれた。

「私は、ここに来て命が惜しい。死ぬ覚悟が出来ない。結核にさえかからなかったら、結婚し、子が生まれ、そのうち孫ができ、順風満帆な人生を送れたことだろう。そう考えると私はとても悔しい。」

私は、何も言えなかった。私は、自分の人生を何も考えずにいきている。しかし、彼はちがった。人生を欲せるほど人生を大切にしていた。私は、彼は死ぬのに惜しい存在だと思った。なので、私は彼に言った。

「お前はもう死ぬんだな。次はいつ会える、次の人生はいつだ。」

と。彼は応えた。

「私は、もうお前とは会えない。そして次の人生もない。人生とは一度しかない。だから楽しいし、惜しいんだ。終わりのない生は生とは言えない。それはただの虚無にすぎない。君はいい人生を送ってくれたまえよ、僕の分までとは言えない、だって君の人生だからね。」

その後少し話して、私は、彼の家を出た。その数日後である、私は、彼が死んだことを知らされた。

 私は、空を見上げてこう思う。彼は、本当に次の人生はなかったのかと、そして私は、想い続ける、私の追憶の中で。

亡くなった親友に敬意を込めて。

そんな私の片時の、夢の話。


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