第16話
俺達は「ノバンスキー」という町に辿り着いた。町に着いて早々、少年が何やら文字が書かれた紙を皆に配布していたので、俺達もそれをもらい読んでみた。すると、今日「ミスノバンスキーコンテスト」という女の美を競う大会が開催されるという事が書かれていた。
「ねぇ、私も参加してみようかな…誰でも参加できるって書いてあるし…」
サラは俺の様子を伺いながら尋ねた。
「いいんじゃないか?挑戦してみれば」
「じゃあコンテストで着る水着選ぶの手伝って!」
サラの水着選びに付き合わされる事になってしまった。サラはファッションには気をつかう方だから、水着を選ぶのも時間がかかりそうだ。
水着ショップに着くと、サラは念入りに水着をチェックし始めた。
「ねぇ、これなんてどうかな?」
サラはアゲハ蝶の模様が入ったビキニを手に持って、俺に聞いた。
「ちょっと派手すぎるんじゃないか?」
「やっぱりそうかなぁ…」
サラはラックに水着を戻した。
「シンプルにこんなのどう?」
サラは真っ黒なビキニを手に持っている。
「もうちょっとアクセントが欲しい気もする」
「うーん…」
こんな調子で長時間水着選びに苦心していた。最終的にヒョウ柄のビキニを買った。サラだったら何を着ても似合うのだからなんでも良かった気もするが…
店を出て、町中を探検しているうちにコンテストの時間になった。
「皆さん!大変長らくお待たせしました!今よりミスノバンスキーコンテストを始めたいと思います。今回エントリーしている美女は20人です。ではさっそく一人目からまいりましょう!」
一人目の女性が出てきた。スタイルはいいが、顔があまりかわいいとは言えない感じの子だった。でもこういうタイプが好きな人も結構いるような気がした。
一人目の女性が引っ込み、二人目が出てきた。今度は顔はかわいいが子供のような体形の子だ。俺はこういうのはあまり好きではないが、ハマる人は多そうだと思った。
三人目はよくコンテストに出場する気になったなぁと感心してしまうほどのひどいルックスの女の子だった。本人はビシっとポーズをきめてノリノリの様子である。見ている人達は皆、冷ややかな視線を送っている。
そして四人目、ついにサラが登場してきた。先ほど水着ショップでもヒョウ柄のビキニを着ている姿を見たのだが、やはり壇上で見ると迫力が違った。何かオーラのようなものを感じる。これが本当にあのサラなのか!?サラがポーズをとると観衆は「オー」と沸き上がった。観衆の視線をくぎづけにさせているにも関わらず、サラはなんてことはない表情を見せている。昔から肝の据わった女だと思っていたが、こんなにも平然としていられるなんて驚きだ。サラは終始堂々として壇上から消えていった。
サラの後に出てきた人達もそれなりに皆かわいかったが、とびぬけて美人なのはやはりサラぐらいだろうと思った。
全ての人達のパフォーマンスが終わり、いよいよ結果発表の時だ。
「それでは発表します!今回のコンテストで見事1位に輝いたのは…スレーナさんでーす!」
え?サラが1位じゃないのか?スレーナさんは顔もスタイルもパッとしない普通の女性のように思えたが…
俺は不審に思っていたが周りの人達の話を聞いていて謎がとけた。実はスレーナさんは町長の娘で、町長のご機嫌をとるために、優勝させたようだ。前回もそうだったらしい。どおりで大した事ない子が1番になれたわけだ。もしコネがなければ1番や2番になんて絶対なれなかっただろう。
「では2位の発表です!2位に選ばれたのは…サラさんでーす!おめでとうございます」
やはりサラがきたか。スレーナさんはズルして1番になったようなものなので実質的な1位はやはりサラだろう。ムーオ村でも1番かわいかったが、ここでも1番になれるぐらいの器の持ち主だったか。
「そして3位はベマさんでーす」
ベマさんはサラを睨みつけている。さっきのパフォーマンスで見せた笑顔がまるで嘘のようにものすごい形相をしている。どうしても2位になりたかったんだろうなぁ。女の嫉妬って怖い…
最後の人まで順位が発表され、無事コンテストが終わり出場者達が壇上から下りてきた。サラの周りにはすごい人だかりができていた。
「ねえちゃん、今日俺とデートしないか?」
「サラさんどこから来たの?」
「俺の家に遊びに来ないか?」
「どうすればサラさんみたいにキレイになれるんですか?」
皆、サラに質問を投げかけた。サラは困った表情で答えた。
「用があるので失礼します。ちょっとどいてもらえますか?」
サラは人波をかき分けながら進んでいる。なんとか押しのけて人だかりを抜けたようだが、1人しつこい男がサラにくっついてついてきていた。
「サラちゃんお願いだよ、1度だけ…1度だけデートして下さい!お願いします。サラちゃんがデートしてくれないなら俺死にます」
男は頭を下げてサラに頼み込んでいる。
「もう、しょうがないわねー。一度だけですよ」
サラは迷惑顔で言った。
「やったー、それじゃあ俺のおすすめの喫茶店に案内するよ!」
男は子供のように無邪気に笑っている。
「はいはい」
喫茶店に着くまでに、男はサラに色々と話しかけていたが、サラは適当に相槌を打ってほとんど聞き流していた。喫茶店に着いてからもサラの態度は変わらなかった。
「サラちゃんって本当にかわいいね」
「どうも」
「サラちゃんってどういう男が好み?」
「強くて優しくて誠実な人」
「それってもしかして俺の事かな?」
「違うけど」
サラはこの男との会話にほとほと嫌気がさしている。もうこんな男と時間を共有するのは無駄だと思い、立ち去ろうとした。
「私そろそろ行かないと…」
「わかった、じゃあ最後に1か所だけ付き合ってくれ、すぐ近くだから!頼むよ!」
「そこに行ったら帰るからね」
サラはしぶしぶ男について行った。ひとけのない通路まで来ると男は暴挙にでた。なんといきなりサラに抱きついてきたのだ。
「サラちゃん大好きだー」
男はサラの口びるを奪おうとした。
「何すんのよ、この変態!」
サラは思いっきり男の股間を膝で蹴った。
「いってぇー」
男はころげまわっている。いい気味だと思いながらサラは去って行った。
サラは遠隔で頭の中で会話ができる魔道具を使って、アロルと連絡をとった。
「アロル今どこにいる?」
「さっきのコンテスト会場の近くの原っぱにいるよ」
「わかった、今すぐ行く」
サラはすぐにアロルのいる所に向かった。
目的地付近に着き、キョロキョロと辺りを見回した。すると、仰向けになって倒れているアロルが見えた、そしてそのそばにさっきのコンテストで3位だったベマが立っていた。近づくと、ベマが話しかけてきた。
「邪魔だからコイツは眠らせておいたよ」
ベマは邪悪な笑みを浮かべながら言った。
「なぜアロルを狙ったの?」
サラは怒りの表情を見せながら聞いた。
「狙いはアンタだよ、サラ。お前を1対1でボコボコにしてやりたかったからコイツには眠ってもらったのさ」
「なぜ私と戦いたいの?」
「いつもは私が2番だったのに、アンタに2番をとられてメチャクチャむかついてるからだよ」
「アロルをどうやって気絶させたの?」
「眠らせたって言ったろ?催眠術をかけてやったんだよ。でも安心していいよ、催眠術は2人同時にはかけられないから。さぁおしゃべりはここまでだ。じゃあいくよ!」
ベマは突進してきた。もうやるしかない。サラは構えた。
ベマは飛び蹴りを放った。サラは横にずれて攻撃をかわすと後ろ回し蹴りを打った。しかし蹴りはハズれてしまった。ベマも運動神経がいいようだ。今度はベマがかかと落としをしてきた。サラはなんとかかわして、右ストレートを打ち込んだ。ベマの左頬をかすっただけで決定打にはならず、ベマはパンチの連打で反撃してきた。ほとんどガードしたが、1発くらってしまった。サラは一瞬よろけた。
「くっ…こうなったら魔法を使わせてもらうわよ!ガトリングシャワー!」
サラは水魔法で相手に攻撃した。
「ぎぃえー」
攻撃は全弾命中し、やっとベマは倒れた。
サラはアロルのもとへ行き、両肩をゆさぶった。アロルはすぐに目を覚まし言った。
「ふぁーあー、おはよう、サラ。もう朝か?」
本当にただ眠っていただけのようだ。
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