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 研究棟5階のオフィスから、カナはぼんやりと駐車場の方を眺めた。大きなバイクが施設の正門ヘ向かい、出た。

 どんどん小さくなる姿、小さくなるバイクの音/いまどき珍しいレシプロガソリン エンジン。聞き間違えるはずもなく。

「想いを伝えるって、難しいわね」

 心のつぶやきが声になる。慌てて周囲に人影がないことを確認した。

 とはいえ/たぶん、分かっている。今の彼にとっていちばん大切なのは5人の孤児たち。あ、最近は1人増えたんだった。想いを伝えても「ごめん、今は。他にやりたいことがあるだ」って言われる。ドラマでよく見るシーン。彼の声で再現される。

 反対側の窓=イライラの原因。

 私たちを邪険に扱った黒ずくめの兵士×10。4輪駆動の戦闘用バギーと6輪駆動の軍用トラック。そのなかに、抑制フィールドの共振器に似た魔導陣が描かれた檻もあった。ほんとうに怪異を捕まえるつもりなのか。そんなことをしても危険が増すだけだ。

 兵士たちの隊長は防護マスクをしていない=顔に傷のある魔導士。しかし/機関銃メインアーム拳銃サイドアーム /手榴弾で重武装している。

 噂に聞く保安部第一課長。魔導士でありながら、あの戦争で世界中の紛争地を渡り歩いた元傭兵=魔導士が紛争に参加することを禁止する条約ができたきっかけ。世界中で魔導士が核兵器と同じ扱いを受けるきっかけに。

 申請書類では、作戦時間は1日となっているが、中で何をするかわからない。余計なことをやらかして、厄介事が増えなければいいけど。

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