ノート1つ
食連星
第1話
あぁ
やばい.
移動教室.
ノートだけ,
何処かに置いてきた.
何で?私やっちゃったんだ?
物理…
本当に
わっけが分かんない.
理系に行くなら物理でしょ.
化学でしょ.
2つ取って
頭の良い方に行くのよ.
私.
そう思ってたのに.
教頭先生が教えてくれる.
先生は好きだ.
白髪で
知的で
何より
説明が上手.
だと思う…
だけど,
公式も
何をどうするかも
全くもって,よく分からない.
別に投手が
gかかりながら
速度を調整して投げて
どのように届くかだなんて,
その人が
キャッチャー迄
上手に投げたらいいんだって.
届いたらそれでいいんだって.
そう.
数字のマジックなんて
私には関係ない.
生きていくのに
そんなに
数字に囚われてどうするのだ.
…出来ない者の僻みだ.
分かってる…
分かってるけど,
言い訳しか出てこない.
それだけ
よく分からない分野だった.
悔しいも通り越して
出来ない自分を受け入れざるを得ない
初めての敗北.
今まで
どの教科も
やり直しが嫌いで
しても何問かで
試験を乗り切ってきた私が…
初めて
物理で赤点をとった.
テストまで高を括ってた.
分からないなりに
やってはきてたから.
それなりに出来るだろうと.
何だか
非現実の世界にいるようで
驚いた.
あぁ
私
これ
無理だわ.
理科は1つで
文系に行くしかない.
文系化学取るしかないんだけど,
いまさらながら
生物取って置けば良かったなんて
過ぎた日に後悔した.
もう私
物理よく分からないので
ここで辞めます!
なんて
途中で離脱出来なかったので,
のそっと
移動教室.
この辺りでいいか.
前よりの真ん中.
やる気を見せつつ
距離を保った
絶妙なポジション.
座り机の中をまさぐると,
ノートが見つかる.
これはっ!
紛失していた私のノート!!!
ほぉ.
無意識に選択する席は
図らずとも一緒なのね.
とても興味深くなる.
さて.
続きから板書しましょ.
ペラペラっとめくると…
んんん?
なんだなんだ?
私が書き残していた数字の下に
同じ数字がたくさん並ぶ.
特に3の下には更に沢山の跡が…
誰かが私の数字を練習している…
私の数字が好きだったのか…
特に3の文字が愛されている…
複雑っ.
私ねぇ.
物理苦手で,
というか
全く
よく分からなくて,
板書してるけれど
何だか無意味な事のように感じてて.
だけど,
その無意味なような私の書いた板書で
私の書いた数字を何度も練習し
意味を持たせてくれている.
少し不思議な感覚だった.
ここは県下一の進学校.
それなりに
出来る集団が集まる所.
誰が練習していたのか
興味がわいた.
最後のページに
『あなたは誰?』
そう書いて,
また同じ席の机の中に戻した.
返事は来るだろうか.
あっ
持ってきた新しいノートに板書したら良かった.
まぁいっか.
見ても分からないんだから.
ノート1つ 食連星 @kakumi
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