第232話 幼児で埋め尽くされる勢い

 新たな領地へ向かう。

 所謂移民だ。


 近隣からやってきた場合はいいが、遠方からやってくるにはかなりのリスクが必要だ。


 そう、例えば俺達が領地から出た時だ。

 スキルを確認するには大きな街へ向かうしかなく、10歳の子供が1ヶ月かけて向かうにはあまりにもリスクを伴う。

 俺達も徒党を組んで向かったが、生きて領地へ戻る事が叶わなかったメンバーもかなりいた。


 そもそも最初の1週間でかなり減った。つまり死んだって意味だ。

 死んでいなくても死ぬ。

 探しに行けば行った奴が死ぬ。

 そんな命がけの行動をしないと他領へは行けない。

 行商人がどれだけ大変な思いで行商を行っているか推して知るべし、だ。


 だが俺はそんな悲劇を二度と見たくない。

 それを実行できるだけの備えは、その準備という意味でだが、できた、と思う。


 だがその前にやっておかねばならない事がある!

 何せ移民の大半は体力のある若い連中だったからだ。

 ある程度歳を取っている人々は、自分が長旅に耐えられないと思い、自らは残り、息子娘には希望のある場所へ向かわせた、そう信じたい。


 そんな若い連中だ。若い男女が新たな領地で出会い結ばれる。

 子沢山に恵まれ今後の未来に何を感じるか。

 その未来を俺達が照らさねばならない。

 つまり乳幼児対策だ。

 乳児には母親がつきっきりになってもらわねばならないが、それもある程度年数が経てばベテランママさんが授乳以外はやってくれる。

 そして歯やら木世代のママさんには安心して子を預け働く環境を用意する。

 最初は猛反対にあったが、いざ施設をスタートさせると、猛反対だった人々がこぞって賛成に回り、あっという間に定員オーバーになってしまった。嬉しい悲鳴だ。


 施設は別の建物を流用し、人員に関しては年配の女性が引き受けてくれた。


「なんだかすごいパワーを感じるわね!」

 保育施設の監視をしているヤーナ。

「子育てだけでも大変なのに、皆さん何処にあんな体力があるんでしょうね。」

 もう1人の責任者のフロリーナ。


 若いっていいよな。そして希望に満ち溢れているから、子供の為に働いている。


 え?俺が何をしているかって?

 遊具を作っていたりする。

 安全な遊具って難しい。

 何かしら子供は大人の想定していない行動をするものだ。

 だから遊具も想定していない使い方をする事もあるだろう。

 人の目に届かない時もある。

 ちょっと目を離したすきに、遊具の上まで登って落ちてしまう。

 だがまあこの世界、幸いな事に死ななければ魔法で何とかなる。


 一発で死んでしまうのは運が無いと思って諦めてもらうしかないが、今の所そういった事故は起こっていない。

「よっしゃあ!今度は滑り台だぜ!」

 どうしたら安全な遊具を作る事ができるか?

 100%は無理だが、日本の遊具はかなり安全だ。何度も足を運んでは遊具をまねた。

 我ながらいい出来だと思っている。





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