クーン20歳

第231話 あれから色々あったが

 俺は20歳になった。


 あれから随分色々あったが、やっと新領地が領地として舵を切り始めた。


 20年。


 俺が異世界に転生してからこれだけの時間が経った。

 もはや日本に居た時より長く生きてきたとさえ感じてしまう程だ。


「パパだっこ!」


 おっと、今は3歳になる息子と散歩をしている。

 俺とヤーナは16歳で結婚した。


 この世界は16歳で結婚できるのだ。

 いや、正確には15歳だな。


 ヤーナは2歳になる女の子を抱っこし、お腹には3人目がいる。

「おーユーリ疲れたか?」

「あっちいって。」


 3歳の男の子はすぐに飽きる。

 今度は抱っこで移動か。


 それに比べ、下の子は女の子。

 よくわからんが落ち着いていて大人しい。

 総じて男の子と女の子はこうした違いがあるようだ。まあ、その子の性格もあるから一概には決められないが、概ねこうした傾向があるらしい。

「ミーケは何しているんだ?」

「あっちでおままごとよ。女の子達で何か楽しそうにしているわ。」

 領地は今、すさまじい数の子供がいる。


 5年前に本格的な移住が募集となり、若い男女がたくさん集まった。

 そうした男女が結ばれ、新領地で夫婦となり新たな生活を始めるようになった。

 だが子供は働く夫婦にとって、宝であると同時に、特に母親にとっては働く障害となってしまう。

 大多数は働く事を止め、子育てに専念せざるを得ない。


 それはこの世界では常識。

 だが俺は折角なんだから子育てしつつ母親にも安心して働く環境を用意したかった。

 そこで考えたのが、日本では当たり前の保育所だ。

 幸いな事に子育てを終えたベテランママさんも沢山いる。

 そういったママさんは、中々働き口が無いのが現状。

 働き手は常に若い連中が沢山いて、中年に差し掛かった女には殆ど働き口がないと言う何とも言えない残念さ。


 開墾して新たな農地を得、そこで働こうにも力仕事では男にはとうていかなわない。

 だからと言って辛抱強く細かな仕事を任せようにも・・・・ない。


 そんな女性達に、保育を任せようと考えたのだが、最初は猛反対にあってしまった。


 そんなに駄目な提案なのか?

 そう思ったが、何事にも最初というのは中々にハードルが高い。

「クーンさん、そろそろ別の街でも定員が一杯になりそうなんです。」


 やはりマースと結婚したフロリーナ。

 そんなフロリーナも子供を抱っこしている。

 旦那であるマースは今、厩舎で従魔の世話をしている。

 何せ移動手段として従魔は貴重なのだ。


 天馬もそうだが、馬型の魔獣は馬車などをけん引して大量の荷物や人を運ぶ手段として便利なのだ。


 そしてフロリーナは、ヤーナと共にこの保育施設でどうすればもっと快適に子供が過ごす事が出来るか、また、母親が安心して子供を預ける事のできる施設を目指し日々奮闘中だ。


 さて俺は何をしているかって?

 領主という非常に面倒な事は親父と兄貴に押し付けた。

 すると俺は【土】で何か作れと言われ、既に色々な物を作ったが、今後何が必要か、日本で本を取り寄せたりしつつ考えている所だ。決して子供と散歩をしながら仕事をしていない訳ではない。断じてない!

 本を読んでもこの世界でできる事は限られている。

 なのでこの世界でできる事を、こうして子供と散歩しながら考えているのだ!

「パパでた。」


 抱っこしながらウンチをした様だ。うわ、いくら実の子とはいえ、臭いのは臭い!

 俺はヤーナに泣きつきつつウンチの処理をするのだった。




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