第206話 戻ってみたのはいいけれど

 俺は日本と念じてみたが、日本の何処へ移動するのかわからない。ついうっかりだな。


 今更なのでどうしようもない。


 で、俺は目をあけた。すると目の前にはコンビニがあった。


 店名は・・・・どうやらここは自宅のある場所から一番近いコンビニのようだ。


 よかった。

 歩いて300メートルほどの距離だ。歩くか。

 俺はヤーナの手を握ったままだったが、ここではぐれたり何かイレギュラーが発生した時に色々問題がありそうなので、そのまま手を繋いでいる。

「ここがクーンの生まれ育った世界なのね。」

 ヤーナは、特に変わった所がなさそうで少し安心した。


 因みに俺が住んでいた実家は今いるコンビニから近い。

 同じ道沿いにあるからだ。


 コンビニ前の道を進んでいけば着くって寸法さ。


 物は試しと実家がどうなっているか確認しておきたかったので、家がある場所へ向かった。


 ・・・・あれ?

 そんなはずはないんだが・・・・ない?

 近所の家はそのままあったし、公園もあった。見間違えようがないのだが・・・・何で?


 無いと言うより別の家が建っていた。

 一応表札を確認するも・・・・別の苗字だった。


 仕方がない、近所の家で知っている所に行って聞いてみよう。

 このご時世、近所付き合いも希薄になりがちで、俺は隣家の家人を知らなかったりする。


 3件向こうの家には小学校時代一緒に通学していた子供が・・・・2歳上だったっけ?いたから遊びに行った事がある。


 そうしよう。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 ピンポーン


 俺は玄関近くのドアホンを押した。


 暫くすると、

「はーい、どちら様ですか?」

 あ、しまった。今の姿は異世界仕様だった。

 俺とヤーナの姿は・・・・アメリカ人に見えなくもない?

 ど、どう伝えれば?

「コンニチハ ワタシ クーン イイマス ドシャ さん  タズネマシタ イエ チガテマシタ ドコニ イタカ シリマセンカ?」


 ちょっとあれだが、若干片言で聞いてみた!


「え?土砂さんを訪ねてきたの?それは残念だわ。もう10年以上前だったと思うけれど、あの家どうしてだったかは忘れたけれど、事故で全壊しちゃってねえ。可哀想にあそこの長男はその事故で死んじゃってね。他の家族も家に住めなくなって、そのうちどっかへ引っ越しちゃったわ。」


 ・・・・何たる事実!結局俺の部屋がつぶれただけじゃなく、家そのものが全壊だったのか!

 かえすがえすもあのジジイ神共が憎い!

「ソデシタカ オシエテ クダサリ アリガト ゴザイマス。」


 俺はこの場を後にした。


 家族に会ってどうしようとか、考えていなかったが、引っ越しちゃっていたか。

 生きているのか死んでいるのかもわからないよなあ。


 もしかして父か母の実家に行ったのか?つまり俺にとっては祖父と祖母だ。

 数年に一度しか行った事ないしなあ。

 場所も殆ど覚えてねえし。


 一度出直すか。


 再び俺はコンビニ前へ向かった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「・・・・とまあ、そういう訳で家族はいなかった。行方も調べねえとわからん。だから一度戻ろうと思う。何にしても金が無いとこの世界ではどうにもならん。そういう訳で済まんがヤーナ、戻るぞ。」

「そ、そう?ちょっと残念ね。見た事のないものだらけだったからもう少し居たかったけれど、そういう事じゃあ仕方ないわね。お金はどうしたらいいかしら?何かを売るか、奪うの?」


「奪わないよ!」


 いや待て、俺には従魔がいる。そう、最近あまり活躍の場が無いがわんこ部隊の一角を占めるあいつだ。

 あいつは地面を移動できる。

 つまり侵入し放題って訳だ。


 反社の屋敷にでも入り込んで根こそぎ奪ってやろうか。

その前にそう言った家が何処にあるのか知らないが。


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