第190話 世界樹のある生活

  あまり長居をするもんじゃないらしく、俺達は世界樹の根元まで戻った。


 ここはエルフが住まう土地だが、他の種族と交流はあるようで、人間も利用できる宿があるそうな。


 ディアナさんにおすすめの宿を聞き、部屋を確保した。

 これで心配する事なく食事を楽しめる!


 もう夕方。


 さっき凄い夕方を見たんだが、おかしい。

 ここはまだ明るい。


「さっきあんなすげえ夕方だったのに、何でここはまだ明るいんだ?」

 俺はつい聞いた。

「何を言っているんだ。世界樹だから当然ではないか。」

 意味不明な回答が返ってきた。

「なあディアナさん、世界樹だから当然って何が当然なんだ?」

 はて?今の何処に疑問を感じるんだ?

 そんな顔をしているんだけど、俺は何か間違っているのか?


 結局この後も世界樹だから云々ばかりで俺にはさっぱり理解できなかった。

 世界樹っていったい何なんだ?


 俺はこの時思い違いをしていた。

 その事に気が付いて、思い知らされるのは翌日の事になる。


 この日は只管野菜を食べた。

 そして果物だ。

 何故か天ぷら料理も出る。

 天ぷら・・・・なんだかよい油を使っているのか、かりっとした出来で、とても美味しかった。

 そしてつゆではなく塩で食べた。

 緑色の塩・・・・抹茶塩か?

 柑橘類を混ぜている塩など、数種類の塩があったのには驚いた。

 柑橘類はたぶん柚だな。


「いろんなお塩があるのね。あら、これはおいしいわね。何のお塩かしら。」

 ヤーナが今口にした塩は・・・・ピンク色をした岩塩らしい。


 野菜だけだったが、素材のよさを相当高いレベルで引き出していた料理に俺は満足し、この日は宿で寝た。

 何か聞き忘れていた気もするが、何だかどうでもよくなった・・・・


 翌朝、宿で朝食を取り、再びディアナさんの所へ向かった。

 今日はカルラという女も一緒らしい。


 誰だっけ?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「ようこそ我が住まいへ。本日はどう過ごされますか?」

 ディアナさんと違い丁寧な接し方だよなあ。

「ねえクーン、今日はどうするのよ?」


 そう言えばヤーナには言ってなかったっけ。

 それはつまり・・・・何か予定ってあったっけ?


 ここに来たはいいが、特にこれをする!と思って来た訳じゃないからなあ。


 魔大陸がどんな場所か、それに変な道具・・・・魔道具か?あれらを確認したかったんだが・・・・少なくともエルフの里には・・・・里でいいよな?こんな高度な物を作る場所があるようには見えなかったんだ。


「例の通信道具、あんなのをどこで作っているのか興味があったんだが、何処かにあるのか?」


「あら?クーン様とヤーナ様は昨日世界樹に行かれたのですよね?」


「ああ行った。だが樹にあんなものは作れねえだろう?」


「ディアナ、昨日中には入らなかったのですか?」

「はいカルラ様。昨日は世界樹の上に興味があったようなので、お連れしました。」

「そうなの?では今日は中へ参りましょうか。」


 中って何処だよ?

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