第147話 ワンパターンなハプニング

 俺は自室に戻り本を読んだ。

 迷わずに一冊の本を手にしていたのだ。

 何故かは分からないが、自然と知識が入り込む。


 そして幾つかのアイデアが浮かんだ。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



《ドンドン》

 何だ?うるさいなあ。

《ドンドンドン》

 入ってます。

《ドゴ!ドゴ!!》

 うへ?何事だ!


 どうやら俺は机で寝ていたらしい。

 う、腰が痛い。

 椅子に腰掛け本を読んでいたのだが、どうやらそのまま机に突っ伏してくたばっていたようだな。

 だが本が無い。あれ?本を読んでいたと思ったのだが、気のせいだったか?


 それよりドアだ。

『ちょっと居るんでしょ!開けなさいよ!』

 ヤーナだな。だが鍵なんて閉めた覚えがないぞ。

 そもそもこの部屋は鍵がない。

 取られて困るような荷物は鍵付きのボックスに入れてある。

 見られて困る荷物は・・・・今の所はないな。

 女性達は下着が見られたら困るからと厳重な管理をしているようだが、下着なんてただの布だろう?

 俺はそう思ったのだが、

【まだまだ青いな。あの布にはロマンが詰まっているのだよ。】

 うん?何か言ったか?


 ただの布切れにロマンとは大げさだ。

 そんな事よりもヤーナを出迎えないと。


『仕方がない!無理やり体当たりで開けるしかないわね!』

 俺がドアを開けたのとヤーナがそう呟いたのがほぼ同時。いや、呟きを終えてからだな、俺がドアを開けたのは。


 ヤーナはドアに体当たりをしようとしていて、そのままドアに突進していたようだが、急にドアが開いたものだからヤーナはドアに触れる事なく、俺に突進をかましやがった!


【ぐへ!】

 ヤーナのタックルをもろに食らい、2人して倒れる。

【きゃあ!】

 いてええ!

 そして柔らかい?


 俺の視界は何かに妨げられた。

 これはヤーナが俺に覆いかぶさっているパターンだな。

 何か以前にもあった気がするが、【異世界あるある】ではこうしたハプニングは必ずと言っていいほど起こる。

 そう、俺はヤーナの事故主張・・・・、違った自己主張・・・・によってその命を終えようとしていたのだ。

 息が出来ん!

 何とか片手が動いたので、辛うじてヤーナを押し返す。中々に柔らかだな。


 やっと息が出来る様になったので、力を取り戻す事に成功、ヤーナから脱出する。

 ワンパターンだな。


 そして今日は白か。

 ヤーナは最近短いスカートで俺の部屋に来る事が多い。

 今日もそうだ。

 そして見えてはいけない禁断の逆三角形が見えたのだ。

 屈んだ時にも見えるのだが内緒だ。

 そっとスカートを直して証拠を隠滅、何事もなかったかのように起き上がる。


「おーいヤーナよ!こんな所で何をしているんだ。」

「う、うーん・・・・あれ?私ってば何してたんだっけ?」

「何か俺が居る部屋のドアを叩きまくっていたぞ。入り口は開いているんだからそのまま入ればいいものを。」


「え?うそ!鍵が掛かってたわよ。」


 おかしい。この部屋のドアには鍵がない。

「ヤーナ、この部屋だが鍵を閉める事が出来るように作ってあると思うか?」


「え?あれ?ないわね。じゃあ何故開かなかったのよ!」


 そういえば俺、何か思いついていた気がしたのだが何だったっけ?

「それよりどうした?」

「もう朝だから呼びに来たのよ!さっさと食べる!」

 朝になっていたようだ。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 食事を終え、俺は領内・・・・の遊びを考える。


 結局スキルなしで公平にできるアイデアを考えたが、最初に思いついたのがルーレットだった。


 色々攻略方法があるらしいが、イカサマができにくく、ほぼ運で決まるはずだ。


 そしてやはり賭け事と言えば、競馬のようなレースだ!

 だが馬では駄目だ。もっと小さな生き物で、尚且つ建物に関してもコンパクトでないとな。


 という訳でマースに心当たりを聞く事にした。

 食事を終えたとはいえ、マースもいる。

 マースが戻ろうとしたので捕まえた。

「マース、一寸来い。」

「え?何ですかクーンさん。」


 まだ誰にも知られたくはないから、人の居ない場所へ連れて行く。


「従魔による賭け事のレースをしたい。馬では大きすぎて建物も大きくないと駄目だが、もっと小さな建物でやりたい。お勧めの従魔はいないか?」

 マースは暫く考えこんだな。


ホーンラビット一角兎はいかがでしょうか?スライムではレースそのものが難しいですし。」


 ホーンラビット。

 昔はよく食べたなあ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る