第146話 遊戯と遊技

 俺はどんな遊技がいいだろうかと考えてみた。

 遊戯は考えるのをやめた。


 よくよく考えたら、何であいつらの為に遊びを考えないといけないんだ?

 さて、ここで【異世界あるある】の出番だ。

 将棋にオセ・・・・いかんいかん、何故かあの言葉は商標登録がされていて・・・・それはいい。簡単なルールだからな。

 だがあの名前で売らずにリバーシとして売っているのは何故なんだ?

 まあ大人の事情があるのだろう。これ以上深く追求するのは何か色々ありそうだからしないが、将棋やチェスはルールが細かいし、駒の動き方を覚えないといけないから敷居が高い。


 だがリバーシならどうだろう。

 この世界で同じようなのを見かけた事が無い。


 もしかしたら、貴族の間ではチェスのようなゲームがあるのかもしれないが、俺には貴族の知り合いは・・・・いた。

 身近にいた。

 そして国のトップにも知り合いがいる。

 今までこの様な話をした事が無いから気が付かなかったが、この世界のゲームってどうなんだろう。

 子供向けの遊びに関しては、今は考える必要が無い。

 時間があれば今後考えてもいいが、今は大人の遊びだ。

 大人の遊びと言っても、怪しげなのではないぞ?一応健全・・・・なはず。


 俺は一度、ヤーナに確認しようと思い、聞いてみる。


「貴族の遊び?乗馬かしら。後はダンスよね。ダンスを遊びと言っていいのかはわからないけれど、貴族の嗜み?みたいな。女子同士だったらやはり恋物語かしら?」

 いきなり躓いた。

 乗馬かよ!そして女子同士だったら恋物語?そっちは想定外だ。話にならん。

 路線は違うが、競馬とか?いや、あれは金食い虫だ。

 馬の管理に金がかかる。

 それに馬を走らすのはそれなりに広い敷地が必要だ。

 ましてや競技をさせるのであれば、馬が走る場所はある程度手入れをしていないと駄目だ。

【賭け事】を考えたが、これでは駄目だな。

 少なくとも俺の手には余る。

 こんな事に時間を掛けられないし・・・・馬だったらマースか?

 いや、テイムした従魔は危険だ。

 八百長が出来てしまう。

 それでは賭けとして成り立たない。

 だがそれも考えようだな。必ずしも、同一人物がテイムした従魔だけでレースをしなくてもいい。

 むしろ他のテイマーから従魔を参加させ、競わせる。

 お?もしかしてこれはいい考えか?

 もし同じテイマーから複数の従魔を参加させた場合、ワンツーフィニッシュの為に作戦を練ってもいいし、これは我ながらいい思い付きではないか!

 あ、もしかして既に行われていないか?そんな話は聞いた事が無いが。


 少なくとも俺がクツーゴ領で暮らしている時には、大人からそんな言葉を聞いた事が無い。

 あの領主だったらきっとハマっていたはずだが、そういった話も聞いた事が無い。

 よし、調査だ!


 そう思ったが、よく考えたらヤーナやフロリーナの兄達が今この場に居るんだ。

 2人はまだ子供だが、兄達は大人だ。


 よし、聞こう!


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


「クーン卿、どうしたのだ?」

「マンフレット、あんたに聞きたい事がある。」

「おお!早速我らの知識が役に立つのだな!何でも聞いてくれたまえ!」

 マンフレットとは、フロリーナの兄だ。

 隣にはヤーナの兄・ペペイン氏がいる。

 一応義理の兄になるかもしれないからな、一寸だけ気を遣っておこう。


「王都でも、王都以外でもいいのだが、貴族の間で賭け事はあったりするのか?」

 2人は顔を見合わせ、変な顔をする。


「子供が賭けをするのは早いと思うが、知識としてであれば伝えよう。カードの賭けは存在するが、それでは人数に限りがあるしお薦めはしない。」

「カードがあるのか!でも駄目なのか?」

「ああ、カッとなって殺傷事件に発展しかねん。」


 貴族や貴族の子息であれば、通常であれば護身用に帯剣しているんだよな。

 ついカッとなって思わず剣を抜き、相手を切ってしまう・・・・有り得そうで怖い。


 では何が賭けになるのだ?


 聞いてみたが結局役に立つ情報はなかった。

 あの男は何人の女に手を出しているのかを当てる賭け、もっと酷いのだと何人の女を妊娠させているのかを当てる賭け。


 はっきり言って貴族の世界も腐っているな。


「そう言うがなクーン卿、我々も娯楽には飢えているのだよ。年に数回従魔によるレースは存在するが、祭りみたいなものだからな。」


 あるんだ賭けのレースが!

 だが、年に数回では話にならんな。

 それではあのぼんくら共をこの地に留め置くのは難しい。

 俺は悩んだ。

 そうだ、こういう時には本からヒントを得よう!


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 クーンはここで、まさかの切り札を使ってしまう。

【神のダイスから得た本】である。

 クーンは自室に向かい、一冊の本を迷う事なく・・・・・手にした。


【人心掌握術】

 そしてその中の項目、

【適切な賭け事】


 これが後にどういう影響が出るのか、クーンはこの時考えてすらいなかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る