第142話 どうしてこうなった?

「お前等なんか知らん!何しに来たのか知らんが、ここにあんた達の居場所はない!」

 するとどうだろう、騒ぎを聞きつけたのか、既に周囲は人だかりだ。

 と言うか誰か間に入ってくれよ!

 だが皆、興味津々と言った所か?

 ぶっちゃけ娯楽が無いからな。

 だからってこんなので楽しむんじゃない!


「下郎如きが!我々にそんな口をきいてもいいと思っているのか?」

「そうだ!下郎は素直に、我々高貴な生まれの者に従わなければいけないのだよ。さあ、今なら謝れば許してやらんでもない。」

「そんな事より早く休む場所を用意しなさいよ!使えないわねえ!」

 すると流石はヤーナ女史・・・・・、俺の前に出てきてそいつ等の鼻先に指を突き出し(言っておくが触れてはいないぞ?それなりに距離はあるし、あんなのに触れてほしくない!)、

「はあ?見た所あなた達伯爵令息と令嬢よね?伯爵令息・・・・令嬢如き・・・・私と私の伴侶・・・・・・にそのような口をきかないで頂けるかしら?」

 うわ!言っちゃったよ!

 しかも何か変な事を言わなかったか?だがこの後もヤーナのマシンガン発言が続き、それどころではなかった。


「本来であればわざわざあんた達に名乗る必要すらないのだけれど、特別に教えてあげるからありがたく思いなさい!私の名はヤーナ・アンネリース・レインチェス。レインチェス侯爵家の3女!それに私の隣にいるのは、フロリーナ・フランカ・フェラウデン。フェラウデン公爵家の5女。わかったらとっとと帰りなさい!」


 皆呆気に取られている。

 俺はヤーナにこっそりと聞いた。

『ヤーナ、あいつらの親は、ヤーナの親より身分が低いんだよな?』

『ええそうよ、一番威張り散らしているのは伯爵家ね。伯爵家が3つ。その取り巻きは子爵家かしら。侯爵家と公爵家はいないわね。』


 ちょっと安心した。

 もし身分が同じだったら後々面倒だからな。


 因みにフロリーナはヤーナに全てを任せているのか、黙ったままだ。

 何気にマース君が手を握っている!

 すると伯爵の息子が顔を真っ赤にさせて、

「こんな辺境に侯爵家の人間がいる訳が無かろう!ここは男爵が管理していた土地だ!嘘を言うな!」


 残念ながらこの自称(笑)伯爵令息は社交場で人の顔を覚えるのが苦手だったらしく、ヤーナの顔を覚えていなかった様子。

 当然ながらフロリーナの顔も、だ。

 ふっ!馬鹿な奴等だぜ!

 ヤーナとフロリーナだが、特にヤーナだが!口を開きさえしなければ、顔面偏差値は突出して高いんだぞ!つまり見た目は抜群にいいって事だ!

 俺はそう思ったのだが、相手にとって残念なのは、ヤーナと年齢が離れすぎていた事だ。

 そしてそれを言うとヤーナにどう思われるかわからんから敢えて言わないでおく。


 今の俺は日本にいた時と違い、クーンとしての年齢に精神が引っ張られてしまっているからな。

 ヤーナを同じ歳の女として見る事が出来るが、あっちは既に成人している。20歳ぐらいか?

 ここまで年齢差があると、ヤーナやフロリーナを子供としてしか認識できなかったのだろうな!馬鹿な奴だ。

 いくら相手が自分にとって子供にしか見えなくても、社交場で顔を合わせた事があるのであれば、それが例え子供であっても顔は覚えておかないとな!


 社交場では色々とあるが、ヤーナに言わせれば【何時】【何処で】【誰が】出席していたか、何か問題や特別な事があるかもしれず、覚えておかなくてはいけないのだとか。

 何故か?今回のような時に対応できないから、だそうな。

 つまりは貴族の息子、令嬢と言ってもピンキリなようで、しっかりとした奴もいれば、こうした勘違い野郎も相当数いるのだとか。


 何となくわかる。

 そして相手が顔を真っ赤にしたり、真っ青になっているのが見え、気が付けば数人のお供?それとも爵位の低い者か?それぞれ抱きかかえられるように、無理やり連れ去られていった。


「クーン、あの3人がきっと、お兄様達が言っていたまともな連中よ。」

 男2人、女1人。

 そしてその3人に従う従者らしき人々。


 後で知ったのだが、この3人は全員子爵令息と令嬢。

 そして威張っていた伯爵令息を筆頭に、中心となっていたのは全員伯爵令息・令嬢だったが、それぞれ別々の家という事らしい。

 伯爵令息2人と、伯爵令嬢1人。

 その3人がそれぞれ自身の家格より格下の子爵家から、人を無理やり引っ張ってきた。

 まあこんな感じらしい。

 ヤーナとフロリーナの身内が、この地に再開発の手助けに向かうのをどうやってか知り、こいつらはそのまま勝手に付いてきたらしい。


 そうそう、ヤーナとフロリーナの身内は、国王からの紹介状を持ってきているようだ。

 俺は知らなかったんだが!

 だがまあ、これはある意味大事な問題だ。

 つまりこの再開発は、俺はただの下っ端扱いって事でいいんだよな!



 注:そんな事は決してありません。むしろ最重要人物と位置付けられています。

 但し国王夫妻はクーンの考えをほぼ看破していて、こうした対応をした、という事です。


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