第140話 意外な事実が書いてあったりする

 俺は親父から手紙を受け取り、読んだ。

 どうやら、俺にも見せる事が前提の手紙だったようだ。

 何故か宛先は書いていない。親父が何故こんな手紙を持っているのか?

 わざわざ聞く事でもないから、聞かないが。


 ヤーナも俺にくっついて手紙を見ている。

 うっ!

 最近のヤーナは、自覚無しでやっているのか、妙にくっついてくる。

 それも嫌らしくない。と言うより自然にくっついてくる感じと言えばいいのか?

 しかもこれがまたいい匂いがするんだよ。

 たまにくらっと来るが、相手はまだ10歳ぐらいの子供だ!え?11歳、もうすぐ12歳だって?


 で、俺も子供だって?

 まあこの身体はそうだが、精神的には20代?

 24から11年生きているから30代だって?

 まあそんな事はどうでもいい。


 肝心なのは手紙の内容だ。


 驚いた事に、国王は親父とお袋を知っていた。

 どうやら親父とお袋は元々冒険者で、それが縁で結婚したらしい。

 A級まで行ったようだ。

 信じられないな。

 何でそんなに強いのにあんなど田舎クツーゴで農作業を?


 そう思ったのだが、総じて滅んだ3領に住んでいた人間は、実力者ぞろいだったようだ。

 あ、親の方ね。

 俺達にはそんな実力はないぞ?

 そう思ったのだが、違ったようだ。

 俺が生まれたクツーゴ領とその周辺は、かなり強い魔物が住んでいたはずだ。

 領地に近づいてきた魔物を、あそこの住民達は自分達で始末していた。


 これは【異世界あるある】、つまりよくある【最後の町】なのではないか?

【始まりの町】の周囲には弱い魔物しか出現しないが【最後の町】の周辺には、育ち切った状態でないと仕留めるのが厳しい魔物が闊歩している。


 まさしくこの状態だ。

 そしてそんな環境で生まれ育った俺達は、自然に強くなる・・・・なるよな?


 いかん!脱線しちまったぜ!


 で、親父達には色々と詫びの言葉があった。


 俺達を危険に晒し、領地を守れなかったうえにその後始末をさせてしまった、と。


 そして何故か、親父を含め3名を滅んだ領地の【総督】に命じるとあった。

 何だよ総督って。


 つまり親父がクツーゴ領、他の2人がリーバクーヨ領とギーコア領の総督。


 そしてしれっと俺が貴族になるのを嫌がっているから、取り敢えずの措置としてこういう任命となった、と書いてある。


 取り敢えずって!

 但し、その後の文面で俺は思わずヤーナを見てしまった。


 そしてこの場にはいないがフロリーナだ。

 一体何の事だ?と思うだろう?


 ヤーナとフロリーナは、それぞれ侯爵と公爵の子女だ。

 その大貴族が動くらしい。

 今更な気もするが、領地の再開発には国から大量の職人が動員されているが、それはあくまでモノづくりとして、つまり物質的な支援だ。

 だが領地が再び人々の暮らす場所となるのであれば、税や、もろもろの権利の問題が出てくる。


 そこで大貴族の登場という訳だ。

 彼等にはこうしたノウハウが、何世代にもわたって蓄積されている。

 ついでに言えば、これは貴族の子女を危険に晒した国からの詫びらしい。


 つまらん事に巻き込むんじゃない!


 ああ、忘れていたがマースは獣舎を作る指導と管理を行っているので、最近はあまり俺達と接していない。

 当然ながらフロリーナもだ。

 今回ばかりはここに来るよう、予め呼び出しをしている。

 そして今丁度やってきた。

「クーンさん、僕って忘れ去られていた訳じゃありませんよね?」

「それ俺に聞く?」

「そうでした。で、何でしょうか?」

「私までどうしましたか?」

 背後にはセバスチャンが控えている。

 最近国から派遣された人材の中に、複数の執事がいたのだ。

 なのでセバスチャンはクランの拠点を管理する・・・・一度破壊されているから今はその任にはついていないが、晴れてフロリーナ付きに戻る事が出来た。


 俺はフロリーナにも手紙を見せた。

 マースと仲良く見てやがる!リア充爆発しろ!

 あ、しまった!他人から見たら俺とヤーナもそうなんだろうな。


 そしてフロリーナとヤーナが何やら話している。


「あのね、私とフロリーナの兄がここに来るらしいわ。」

「そうなのですわ。嫡男ではありませんから、爵位を引き継ぐ事はありませんが、何が目的なのでしょう。」

 俺に分かるはずがないじゃないか!

【彼等には領地の運営に関するノウハウを学んでもらっている。思う存分使ってくれたまえ!】


 と言う紙切れが見つかった。


 訳が分からん!


 結局3日後に、彼等は10台の馬車と共にやってきた。

 2人じゃないのかよ!

 馬車10台でやってくるってどうなんだ?





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る