第132話 どうするか

 拠点だった場所には何も残っていなかった。


 いや、正確には地面の下に残っていた。

 そう、源泉だ。

 地下深くまで通していたあの管は無事だったのだ。

 そう、俺がガチガチに強化したからな。

 炉の暴走にも耐えたのだ。

 え?他の設備もそうしておけよって?


 大きさがなあ。

 管は小さいんだよ。

 人の頭ほどの太さだ。

 それが何百メートルとあるんだが、気が付けばやっちまっていた。

 それが功を奏したのだが、炉の周囲もそれなりにしっかりとした作りだったんだが駄目だったようだ。

 いかんせん爆心地から近すぎた。

 じゃあ何故管だけ無事だったのかだって?

 地下にあったからだな。

 それとこういった事故を想定して、逆流防止の弁はちゃんと設置してあったから、噴き出さなかったんだ。

 だからすぐには気が付かなかったんだよ。


 温泉はいずれ再開できる。

 炉も作り直せばいい。だが・・・・また同じ事が起こるかも。

 そうだった。元を断たないといけない。

 どう探せばいいんだ?


「・・・・にい、くーんにい!」

「いい加減に気が付いて―!」


 は!俺はどうやら考え事をしていたようだ。


 そしていつの間にかティーデとヒセラがいた。

「すまん考え事をしていた。それよりどうした。城に居たんじゃなかったのか?」


「王様とお妃さまが呼んでいるよ!」

「謝りたいんだって!」


 国王が俺に謝りたい?できれば俺は個人的にあの2人には二度と会いたくないんだが。

「クーン行きましょ!!」

「俺は行かん!!あっちから来たらいいじゃないか!温泉にでも・・・・ってないんだったな。」

 あの国王夫妻はよく温泉を満喫していたんだよ。

 会うと碌な事が無いから、極力会わないようにしていたのだが。

「行くって言ったら行くの!」

 ヤーナがえらい剣幕だ。どうしたんだ?

「折角クーンの弟と妹がこうして知らせてきたんだから行かなくちゃ!それに私も精霊達がどうなったのか知りたいのよ!きっと元の世界に戻っているはずなのよ!だけどここでは存在が感じられないのよ!」

 そうだった。今回暴走したのはヤーナの精霊だ。その精霊がどうして、そしてどうなったか心配するのは当然だ。

 それと、存在が感じられないってどういう意味だ?

 それに折角ティーデとヒセラが知らせてくれたんだ。城に行くか。

 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 城門の前でディーデリックとサスキアが待っていた。

 どうやら俺達がやってくると知らせがあったようだ。


 開口一番、

「クーンすまん!留守を任されていながらこの失態。」

「兄さまは留守を任されていたのではなく、一騎当千の事を任されていたのですから謝る必要はありませんわ。」

「サスキアよ、それは違うぞ。一騎当千のせいだから謝っているのだ。」

「そうでした。そう、兄さまは悪くありませんわ!兄さまは常に完璧なのですから悪いのは全て私ですわ。」


 相変わらずの兄妹だ。

「結局一騎当千の仕業なのか?あいつらダンジョンじゃなかったのかよ?」

 確か70層目指して云々だと思ったんだが違ったか?


 注:117話参照


 件の商人にそそのかされている一騎当千のリーダーヘイスの記述あり。


「それについては、中で話そう。」

 俺達は城門をくぐった。






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