第120話 魔族が移動を開始した

「何故今になって!」


 親父は向かった先で話し込んでいたが、余程の事があったのか珍しく大きな声で、半ば叫ぶような感じで言い放った。


 どうやら俺達がここに来たのが偶然なのか、俺達のせいなのか、今までの対応が嘘のように何処かへ移動していったらしい。


 俺、攻撃しようと思っていたんだが、しなくていいのか?


 そう思ったのもつかの間、ポチから連絡が。

【どうやら本隊が到着したらしい。先ほど居た数倍の人数でこちらに近づいている。】


 どうやら今までの魔族は先発隊とでも言うのか、本隊ではないらしい。

 その数倍での人数でこちらに押し寄せているのだとか。

 という事は、今までの魔族がそこに合流する・・・・のでいいのか?

 一寸待て、数倍と言ったな?

「親父、どうやら本隊が到着したらしく、さっきの数倍の人数でこっちに向かっている。」

「何故それが分かる?」

 そう言えば親父には、まだ俺の従魔を見せていないんだった。


「俺にはポチとシロ、天ちゃんと言う従魔がいるんだ。」

「従魔だと!」

【主よ、何かするのであれば急いだ方がいいぞ。】

 いかん、時間切れだ。

「親父、時間が無い!俺は今から【土】で壁を構築するよ。」

 俺はそう言い、元々あった壁に俺は邪魔だからと、作ったばかりの剣と盾を立てかけた。

 まあ紛失しちゃってもまた作ればいいし?こういうのを元の土に戻してもいいのだが、作ったのと同じぐらいの魔力が消えるんだよな。勿体ない。

「クーン、私も精霊を沢山召喚できるわよ?」

「ヤーナ、こういう時は量より質だ。サラマンダーの上位、イフリートを頼む。他にも上位の精霊がいいな。」

「そう?まあいいわ、クーンの言う通りにしてあげるわよ!」

 そう言ってヤーナは火の精霊イフリート、水の精霊ウィンディーネを召喚。


 早速何処かへ消えて行った。

 いかん!俺の活躍が無いじゃないか!


 俺は親父の先導で、今まで壁を構築していた場所へ連れて行ってもらった。


 早速別の壁を築いていく。

 あと今回は秘策がある。試した事はないが。


 わんこフェンリル部隊だ。

 わんこ部隊の地脈に潜る能力を活用する。

 魔族の足元にわんこ部隊が出現し、そのまま地脈へ引きずり込むのだ。

 この作戦の胆は、魔族をただ単に地中に引きずり込むのではなく、頭だけ地上に出したままにしてしまうと言う、そうしちゃったらどうなるの?みたいなやつを実行するつもりだ。まあ場合によっては難しいかもだから、それは各わんこの判断だ。

 何せ数が多いからな。頭を出すのに拘り過ぎて、実際に埋めた数が少ないのも問題だからな。


 そして敵が何人いるか知らないが、一網打尽にしてみせる!

 最後はあれだな、ポチドラゴンが空からブレス。


 完璧じゃないか!

 え?まったくもってザルな作戦だって?失礼な!


 そしてもうひとつ、えげつない事を思いついたんだぜ!しかもたった今!

「クーン、さっきから何ぶつぶつ言ってんのよ!」

 俺の心の声は駄々洩れだったようだ。気を付けよう。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 敵が来た。

 こっちが仕掛ける前から魔法が飛んでくる。

 もうやっちゃっていいよね?


 俺が展開した壁に張り付いた敵。これからどうなるかなんて想像すらしていないのだろうな。


 何せ壁とは敵の攻撃を防ぎ、侵入を防ぐための存在。

 その壁を、本来の役目とは全く違う使い方をするなんて思いもしないだろう!


 だから俺は壁を敵目掛けて倒してやった。

 そうそう、壁は三段構えになっていて、見た目は今までの壁と同じ。だけど内側にはレールがあって、簡単に後ろの壁を、敵から見えている壁の上に置く事が出来るんだ。それを3つ。

 まあフォークリフトのフォークに近いかな。

 上がり切ったら、壁の上に壁が乗るように調整しておいた。

 だからあっという間に壁の高さが3倍。

 一応こっちに倒れない様、壁と壁のつなぎ目には【土】で補強をするのを忘れない。

 ふふふ!壁がいきなり、つまり壁の高さが一気に3倍になるんだ、驚くだろう?

 それが自分達の方に倒れてきたら、もうパニックさ。


 ズド―――――――――――ン!!


 凄まじい地響きと共に、壁は倒れた。









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