第101話 フスタ・ペイル
クーンはクランの設立後から基本物作りをしていたので、殆ど冒険者ギルドに顔を出していなかった。
相手はもっぱら商人ギルドの担当者2人。
ドリースとパウラだ。
因みに冒険者としての依頼は、必ずしも冒険者ギルドで受ける必要も、報告する必要もない。
商人ギルドも同じカードを使用するので、商人ギルドでも問題が無いのだ。
それに【ワンチャンス】のパーティーメンバーも冒険者ギルドに向かう用事が殆どなかったので、平和に過ごしていた。
マースのテイムした魔獣は専用の買取組織が存在しており、そう言った場所で引き取ってもらう事が可能だったので、マースも利用していた。
それにティーデとヒセラも、商人ギルドでの依頼である素材の採取を行っていたので、冒険者ギルドに顔を出していなかったのだ。
一方クーンとは違い、毎日のように冒険者ギルドに顔を出していたニールス。
これは【雲外蒼天】の活動が、主に魔物を仕留める事による素材集めだったからだ。
魔物を仕留め素材を、または魔物そのものを運んでギルドで買い取ってもらう。
クーン製の台車に天馬やフェンリルによる台車のけん引が可能なので、最近は運搬量も増え、仕留める魔物のランクも上がりギルドでの買い取りも凄い事になっていた。
そんなある日、それは起こってしまった・・・・
Side 【一騎当千】
そんなある日、クラン【一騎当千】のクランの代表は、同じくクランメンバーと共に冒険者ギルドに来ていた。
月に一度行われるパーティー及びクランに関するランキングの変化を確認する為だ。
これは純粋に【ギルド】と名の付く組織においての依頼達成及び素材・製品の引き取り価格が反映される。つまり稼いだ金がそのままランキングになるという、そう言ったランキングが存在している。
ここで言う【ギルド】は個人カードを扱う組織、冒険者ギルドや商人ギルドだ。
他にも鍛冶ギルドや従魔ギルドなどが存在している。
そしてこのランキングだが、パーティーランキングの場合は、たまたま一山当てた場合に一気にトップに躍り出るのであまりあてにはならないが、クランの場合は組織力がものを言うので、一つ二つのパーティーが突出してもあまり影響がない。
クラン【一騎当千】はロッベモント王国に於いて唯一のS級ランク。
当然ここ数年は常にトップに君臨していた。
しかしここ数ヶ月の間王都の襲撃など相当変化があったので、普段の活動が出来なかった部分があり、少し不安になっていた。
そんな【一騎当千】を見たギルドの職員は、どう対応していいか分からず困惑していた。
当然ながらこのようなクランの場合、ギルドの受付は専用の職員が当たる。
いつもは常にトップを行くクランなので何も問題が無かったのだが、今回は異変があり、受付嬢は非常に困っていた。
この受付嬢が【一騎当千】の担当になり3年、常にトップを行くクランだった為、然もそれが当たり前と思っていた。
しかし、今回このランキングに異変が起こってしまった。
クラン【一騎当千】の月の取引価格は大白金貨数十枚(数十億円)に達し、他のクランの追従を一切許さなかった。
そもそも月の売り上げが億を超えるクランは殆どない。
超えるクランはA級の数クランのみ。
それもやっと2桁に乗るか乗らないかだ。
今回【一騎当千】の評価価格は大白金貨50枚(50億円)に迫ろうとしていた。
しかし今回それを遥かに上回るクランが現れたのだ。
クラン【以一当千】、まだ立ち上がって半年足らずの、しかも最近FからEランクに上がったばかりの新米クラン。
そのクランが何と月の売り上げが大白金貨100枚(100億円)を超えていたのだ。
それを見た受付嬢は【一騎当千】にどう伝えるべきか悩んでいた。
しかしどう伝えるか決めかねている時に、現れてしまったのだ。
勿論【一騎当千】の代表とその取り巻きが、だ。
「ようねーちゃん、もうランキング出ているんだろう?見せてくれよ!」
「あ、ああ、は、
思わず声が裏返ってしまう受付嬢。
因みに隣に座っているのはクラン【以一当千】の担当でもあり【雲外蒼天】パーティーリーダーであるニールスにただならぬ関心と好意を向けているあの受付嬢だ。
彼女の名は、
フスタ・ペイル
「ちょっとどうしたのよ?」
心配になり、狼狽える受付嬢に声を掛けるフスタ。
「せ、先輩・・・こ、これ・・・・」
彼女もランキングを見て愕然としていた。
何せ今目の前にいるニールスが副代表を務めるクラン【以一当千】が堂々のランキング1位なのだ。
「あ、ニールス様申し訳ありません、その少々問題が発生しまして、少し待って下さい!」
隣にいる【一騎当千】の代表達もギルド内の様子がおかしい事に気が付く。
「ね-ちゃん早く見せろ!」
「は、
受付嬢はランキング票を見せた。
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