第90話 本

 城から宿に向かったクーン達だが、この日は解散となり翌朝集まる事となった。


 クーンは自分の部屋に戻り机に向かい、机の上に並んでいる本・・・・・・・・・・の背表紙を見る。

 うーん、今日は何を読もうかな・・・・・・・・・・

 クーンはそのうちの一冊を手に取る。

食器・陶磁器とガラス製品・・・・・・・・・・・・・・

 やっぱり食器だよな!ガラス製品も捨てがたいけれど、磁器もいいよな!

 あれ?こんな本あったっけ?


 クーンは違和感を感じたが、これらは皆土だよな?明日は食器を作ってみようと思いその事で頭がいっぱいになり、元々クーンの部屋には一度も本が置いてなかった・・・・・・・・・・・事実に気が付かないのだった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 クーンは本を読みながらいつの間にか寝落ちしていたのだが、誰かに起こされた。

「クーン、出かけるから起きるんだ。」

 俺は目が覚めた。ニールスにいだった。

 あれ?こんな朝早くに約束だったっけ?

 俺は寝ぼけながらニールスにいに着いていく。


 暫く進むとあれ?ここは富裕層のエリアじゃなかったっけ?

 こんな所に何の用?

 そう思ったけれど、ニールスにいは止まらない。


 そして気が付けば貴族が住むエリアに来てしまった。

 どっかの爵位持ちに会うのだろうか?


 で、さらに進むニールスにい。

 俺はついていったが、ニールスにいはでっかい館の門の前で立ち止まり、何とそのまま開けてしまい中に入っていくじゃないか!

 すると何故かヤーナが現れ、

「おはようクーン、遅かったじゃない!」

 遅かったって?するとフロリーナがヤーナの後ろから顔を出した。

「クーンさまおはようございます。なかなかいい館でしょう?ここはさる伯爵家が所有していたのですが、後継者に恵まれず、爵位を継ぐ者が絶えてしまい、空き家となっていたのですわ。」


 はあ?意味が分からん。

「話はついていると言っただろう?今日よりクランの拠点として活用するから、クーンも今日からここで住む事になる。管理は執事のセバスチャンがしてくれるし、メイドも数人住み込みで働いてくれる事になっているんだ。」


 ニールスにいが稼いでいたのは知っていたけれど、まさか貴族の館を購入するほどのお金があったとは驚きだ!

 それともフロリーナかヤーナの伝手か?


 注:ニールスはそこまで稼いでいません。フロリーナとヤーナの伝手で手に入れた物件でもありません。


「やあクーン、君のお陰で色々と助かったよ!今後ともよろしく頼む!」

「兄さま共々、皆さまクランを盛り上げていきましょうね。」

 ディーデリック王子とサスキア王女が何でここに居るんだ!


 しかも今さらっと凄い事を言った気がするんだが!【皆さまクランを盛り上げていきましょうね】って言ったよな!

 あの2人もクランに入るのか?いつの間に決まったんだ?


「クーン、宿に残した荷物はメイドが全部ここに運んでくれるから心配いらないからな。」


 どうしてこうなった?


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 ロッベモント城


 国王陛下は床に落ちている盾と剣を手にした。、この盾と剣はクーンが自分を囲う前に作ったのだが、クーンはすっかり忘れていた・・・・


 当然ながら盾と剣の存在をすっかり失念してしまったクーンがここに置きっぱなしにしてしまったのだ。


「ステファニー、この盾と剣、あの少年があっという間に作り上げたのだが、信じられるか?」


 そう言われ盾と剣を見る王妃。

「ま、まさか・・・・信じられませんわ。」

 驚く王妃。

「まあ見ていろ。おい誰かそこにある剣と盾を持って来い。」

 近くに居た近衛が剣と盾を持ってくる。


「この盾をしっかり持っていろよ。ステファニー、これはミスリル製の剣だ。」

 そう言って近衛にはクーンが作った盾を持たせ、国王はミスリル製の剣を構え、盾に切りつける。


 キーン!!!


 変な音がしたのだが、見事に剣が折れてしまった。

「次はこの盾を構えろ。絶対に動くなよ。」


 国王はクーンが作った剣を手にし、再び盾を切り裂く。

 今度はバターが切れるような感じで盾が真っ二つに。


「あ、貴方・・・・これは!」


「信じられるか?やはりあの少年は何かある。ディーデリックとサスキアに上手くやってもらわねばな。」


 この後この盾と剣は、王国一の腕前と言われる職人の手により、見事な盾と剣に生まれ変わった。


 後にこの盾と剣は、ロッベモント王国の象徴となるのだが、クーンは知らない。

 クーン曰く、

「俺ってあんな凝った意匠を凝らす事なんかできないから違くね?」

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