第89話 城の修復

 ヤーナが俺に抱き着き泣いている。

 思わず抱き返したが、一体どうなっているんだ?

 そして見ると何故かポチがいる。というか何したんだポチ!

 城の一部が崩壊しているじゃないか!

「ヤーナ、俺って何だか記憶があいまいなんだが、何がどうなってポチが城を破壊しているんだ?」


「ひょっとして覚えていないの?」

「気が付いたら自分で壁を作っていたらしく、そこで寝そべっていた。」

 何だか魅力的な何かがあった気がしたんだけど、思い出せない。

「ここって謁見の間だよな?あれ?俺ってどうしてこんな所で壁なんか作って寝てたんだ?」

 確か王様と王妃様に会って、何か言われた気がしたんだが、気のせいだったか?

 見れば玉座らしき場所には誰も居ないし。


 するとニールスにいが来てくれた。

「すまないクーン。話はつけてあるから一度帰ろうか。体は大丈夫かい?」

「話って?まあ普通に歩けているし、腕も動くから大丈夫なんじゃないかな?記憶だけがあやふやだけど。」

「わかった。一旦出よう。では皆、ここから出よう。それでは国王陛下及び王妃様、一度戻り出直します。」

 そのままクランメンバーとなる予定の全員が謁見の間を出ようとしたが止めた。

「あれを修復するから待ってくれ。」


 うーん、何だったんだ?

 あ、俺は急いで戻った。

 ポチがそのままだったうえに、修復しておかないと。


「ポチ、人と関わらなくて済む場所まで移動してくれ。場合によっては好きな所に行くといい。俺は一旦修復だけ済ませておく。」

【そう言う事であれば我の背に乗り、外から修復するのがよかろう。瓦礫の大部分は下に落ちた。それに主の魔力とスキルをもってすれば、一瞬で修復できるであろう。】


 こんな大掛かりな修復ってした事ないぞ?


 注:毎日のように王都の壁を修復しまくっていたので出来ます。


 まあいいや、えっと念じながら【土】で直せばいいのか?

 ぶっちゃけ素材って土だよなこれ。

 まさか鉄筋コンクリートではあるまい。モルタルだったか?


 そうだ、このままポチの背に皆を乗せ、修復しつつ戻ればいいんだ!

 俺は皆にポチの背に乗ってもらい、俺自身もポチの背に乗り修復を試みる。

 俺はポチが破壊したと思われる場所を修復し、多分周囲の外観と違和感がなさそうだったので、結果?に満足しポチに移動を開始させた。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



「貴方、行かせて良かったのですか?」

「仕方あるまい、あれは人に御せる代物ではない。幸い余の行動が件の少年に敵対行為と思われなかったようだから、まだ何とかなろう。ディーデリックとサスキアに任せよう。」

「まさか一つスキルの2人にこのような希望の未来があろうとは予想もできませんでしたわね。」

「ああ、余のスキルで先が見通せなかったのは初めてだ。この世は既に破綻している。神も半ば放置している現状、訳が分からんあの少年に託すのも一興。」

「ただ、戦闘に関しては大味すぎるようですわ。少年の本分は物作りのようですし。」

「ああ、物作りと言えば、最近【ウォシュレット】なる物がずいぶんと流行っておるようだが、何だそれは。」

「貴方、まだ使っていなかったのですか?」

「余の所に現物が届いておらぬ故知らぬ。」

「では後々お教えしましょう、私一つ持っておりますの。」


「そうか、それはいいな。」


 今回かなり重大な出来事が発生したのだが、その後の展開が恐ろしすぎて誰一人それに関して口を開く事は無かったのだった。

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