第69話 王都襲来

 ニールスが率いる【雲外蒼天】のメンバー、そして最近立ち上がったクーンをリーダーとする【ワンチャンス】、そしてセバスチャンだが、商人ギルドからほぼ指名依頼扱いの依頼を受け、辺境方面とは逆の場所へ来ていた。


 台車とウォシュレットの生産に欠かせない【空気草】や【油草】が多く採れるポイントがそちらだったからだ。


 普段は辺境側で薬草採取をしているクーン達。

 そしてニールスはティーデとヒセラを一時的に預かり、やはりパーティーメンバーと共に辺境方面とは逆の方面で活動をしていた。


 つまり【空気草】・【油草】を採取していたのだ。


 パーティー結成後、食事をし解散、王都の門近くで宿を取り明日に備える・・・・そのつもりだったのだがまだ時間がある。


 クーンとヤーナは従魔に騎乗しデートに行ってしまい、既にこの場にはもう居ない。


 他のメンバーも特に予定がなく、外で素材の採取をする事になり、結局先の2人を除き、残った全員で王都の外へ向かい採取をする事となった。


 クーンとヤーナが勢い良く空を往く。


「流石は天馬だね。早い!」

 ニールスはそんな事を呟くが、


【いや、我等は単独であそこまでの速度は出せぬぞ。】

 ニールスの従魔である天馬がそう伝える。

「じゃあどうしてあんなに速いんだい?」

【簡単な事。あのクーンという・・・・天ちゃんの主が内在している魔力のせいだろう。】


「魔力を使えばその分速度が上がるのかい?」

【そうだ。】


 その後もう一体の天馬が王都を出て行ったのだが、その頃には皆地面とにらめっこしつつ採取をしていて、誰も気が付いていないのだった。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 さてどうするかとクーンが考えていると、突然王都方面から凄まじい音と共に、今現在4人がいる場所はそれなりに王都から離れていたのに、すさまじい衝撃波がこの場を襲ったのだ。


「きゃあ!」

「いやああ!」

「うぎゃああ!!」

「うひ?」


 4人ともその衝撃波に驚く。


 するとシロが現れた。

 シロのせいかよ!

 思わずクーンがそんな事を思ってしまったぐらい完璧なタイミングで現れたからそう感じてしまったのだ。


【違うぞ主よ。辺境方面からドラゴンが襲来し、王都を襲っているようだ。】


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・



 ドゴ――――――――――ン!!!!!


「「「「「きゃああ!!!」」」」」


「うわ!」


「何事?」


「ムキュ・・・・」

「ぐぼべろげ!!」


「うわあああ何これ楽しい!」

「風が暴れている!」


 雲外蒼天とワンチャンスのメンバー、そしてセバスチャンである。


 誰がどのような反応をしたのかは、本人の名誉のため伏せておく。


「な、何だ今のは!」

 真っ先に立ち上がったニールス。


 直ぐに従魔達がやってきた。


【王都が、辺境方面が襲われているぞ。】


 今現在とは正反対である。それでこの衝撃波。


「何に襲われているんだい?」


【分かるだろう、ドラゴンだ。】


「クツーゴ領を滅ぼしたドラゴン達かい?」


【それ以外にはあるまい。だが解せぬ。いくら何でもここまで来るのが早すぎる。何かに誘導されたのではないか?】

「何かって何だい?まさかドラゴンには子が居て、それを誰かが捕獲して王都に連れ込んだのを救出、じゃないよな。」


【それは違うだろう。】


 そんな事を思っていると、クーン達がニールス達の所にやってきた。


 因みに天馬は王子と王女が騎乗し、クーンとヤーナはそれぞれわんこフェンリルに乗っている。


「ニールスにい!何だかすさまじい音と衝撃波があったから、急いで戻って来たんだけど。シロはドラゴンが王都を襲っているっていうんだけど何か知らない?」


「クーンが無事でよかったよ。うん、どうやら従魔の話だとそうらしい。」


 さてどうしようか。

 そう思っているとフロリーナがこっちに来た。


「まあ!其方にいらっしゃるのはディーデリック王子とサスキア王女ではありません事?」


 そう言えばお互いの自己紹介がまだだったな。

 さて今から自己紹介、という時にあれだったからな。

「おや、僕達の名を知っているのは誰だい?ってなんだフロリーナじゃないか。君も一つスキルだったね。」

「まあフロリーナ、久しいわね。」


 うーん、王都が襲われているというのに、何を暢気に挨拶しているのだろう。











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