第66話 ヤーナの驚き

 俺とヤーナは、恐る恐る気を失っていると思われる2人の所へ向かった。


 天ちゃんは同族の所に行った。

 すまん、ぶっちゃけ天馬って一緒に見えるんだが。

 それを言うなら、わんこであるシロもそうなんだが。


 そして2人の顔を見たヤーナは絶句した。

 俺は人がこんな風に驚くのを初めて見た気がする。


「な、何故ここにこのお二人が・・・・」

 暫くフリーズしていたヤーナだが、ヤーナが放ったその言葉が気になった。

「ヤーナ、知り合いか?」

「あ、クーンは知らないわよね、王都に来て確かまだ1ヶ月だったわよね。それに元々平民だ・・・・ご、ごめんねクーン。」


 なぜそこで謝る?

「俺が平民だとヤーナが謝らないといけないのか?」

「そ、そうじゃないのよ、この2人なんだけど、対応を間違えればとんでもない事になるわ!」

「なあヤーナ、そう言うからには知り合いなんだな?つまりあれか、貴族とか?お、おいまさか王族か?」


 ヤーナの表情から俺は察してしまった。

 俺はこの時本来気が付くべきだった事柄に気が付いていなかった。

 この2人が乗っていた天馬って、俺達が・つまりマースがテイムしたやつじゃなかったか?


 そうであればどこに引き取られたんだったっけ?思い出せ俺!

「ちょっとクーン、どうしたのよ。」

 俺が突然無口になったので、心配したのだろう。

 で・・・・思い出した。確か天馬ってA級だからと、国が引き取ったんじゃなかったか?


 つまり目の前にいる・・・・少年と少女か?見た所今の俺とそう大差ない感じに見えるんだが・・・・つまり国が手にした天馬に乗ってしまえるほどの立場、あるいは身分って事だよな・・・・


 ここで気が付いた。これはあかん奴だと。


 異世界では王族、それも王子や王女・・・・お姫様とお近づきになる事がよくあるが、今回のこれはまずい!

 何がまずいって出会い方が悪過ぎる!


「な、なあヤーナ・・・・もしかしないでも二人って王族だよな、それもかなり上の立場の。」

「よく気が付いたわね。2人はそれぞれ王子様と王女様よ。つまり現国王陛下の息子と娘ってわけ!私も何度か舞踏会などで見かけた事もあるし、踊った事もあるわ。王女様とは年齢が近かったうえに身分も比較的近かったから、フロリーナと一緒に何度かお話もしたのよ。」


 これはヤーナに賭けるしかない!


 俺の異世界あるあるの知識からすれば、この後暫くしてやってくるはずだ。何がって?

 城を抜け出したであろう王子と王女を探す、城の近衛か騎士か分からんがそんなのが。


 だがここには2人と知り合いだというヤーナがいる!

「私に期待しても駄目よ。どう見ても無理があるから。」


 いきなり詰んだ。


 しかも間の悪い事に、俺がどうするか対応を考えている時に、どうやら2人は気が付いたようだ。

「あれ?あれれ?ここはどこだい?」

「兄さま、何故私達はこんな所で寝ているのでしょうか。」

 何とも危機感のない声だ。

「そう言われると何故かな?うん?そこの君、誰だい?それにそこの淑女レディー・・・・って、どこかで見た事があるなあ。ああそうだ、確かヤーナと言ったね、君も一つスキル・・・・・・・だったんだってね。」

 先ほどから王子様?王女様の何とも言えぬ会話が繰り広げられていたのだが、どうやら王子様はヤーナを知っていたようだ。

「え?ヤーナですって!まあ!本当にヤーナなの!このような所でどうされたのかしら?」


 王女様もヤーナを知って、いや覚えていたようだ。

「お久しゅう御座います。」


 何だとってもフレンドリーじゃないか!安心したぜ!

 だが何か気になる事を言っていた気がするぞ。

 君も一つスキル、って言ったよな?






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