第65話 トカゲとの戦闘の回顧とクーンの弱点

 すれ違った時に発生した衝撃波。

 何故クーン達に影響が殆ど無かったのか。

 これはヤーナのスキルに起因する。


 ヤーナのスキルは【精霊】。

 元々ヤーナのレベルでは大した精霊を使役したり召喚したりできない。レベルが低かったからだ。


 だが先だっての戦い、クーンはトカゲと戦ったと思っているようだが、事実はドラゴンとの戦闘、これにヤーナも参戦した。


 低レベルの人間が戦えば間違いなく死ぬ。


 だがクーンもヤーナも生き残った。


 あの時ヤーナは精霊を・・・・それも上位の精霊を召喚・使役した。

 だがレベルの低い彼女では精霊を維持する魔力もスキルのレベルも乏しく、数秒で精霊は消滅した。

 だがその僅か数秒でドラゴンの口に傷をつける事に成功、これにより大量の経験値が入り込んだ。


 レベル差の激しい敵と戦えば、経験値を得るのには必ずしも倒す必要は無いのだ。

 そしてその瞬間大量の経験値がヤーナに入り込み、彼女は考えるよりも前にスキルレベルを上げた。


【サラマンダー】を召喚できるまで上がったスキルレベル。そしてヤーナは躊躇なくサラマンダーを召喚。

 サラマンダーはドラゴンの口に入り込み、クーンがドラゴンの中に突っ込んだ土を熱し、更なるダメージを与えここでも経験値が。


 こうした事が起因となって、彼女の精霊を扱う能力は劇的に向上した。

 だが実際ヤーナは、まだ己がどれほどの事が出来るのか把握していない。


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 クーンとヤーナが空のデートを満喫している時も、精霊がヤーナを護っていた。

 そして天馬が速度を上げ、何かとすれ違った時に天馬の能力だけでは防ぎきれない衝撃波が発生、本来であれば天馬もろとも、衝撃波の影響でクーンもヤーナも意識を失うはずだったのだが、そこは精霊がしっかりと防いだ。

 但しヤーナだけを護るのは難しく、密着していたクーンと天馬も、その影響で護られたのだ。


 そんな事とは露知らず、無事だった2人。


「ねえクーン、あれ一寸何とかしないと駄目なんじゃない?」

 クーンはヤーナの言わんとする事に気が付いていた。だが無理だろうあれ。


 既に2人と一体の意識はないようだ。

 速度を増しつつ落下していく。


 そしてクーンはまたまた【土】で何とかしようとしたのだが・・・・

 スキルが発動しない!焦るクーン。

「ヤ、ヤーナ!俺のスキルが発動しないんだ!」


 冷静になればわかる事だが、クーンは焦ってしまい、何故自分のスキルが発動しなかったのか考える余裕が無くなっていた。

 ヤーナも精霊を召喚するには色々と条件があり、それが揃っていないと特定の精霊を召喚・使役が出来ない。


 しかしヤーナは冷静だった。

「クーン!クーンのスキルは【土】でしょ!土が無いとスキルが発動しないのは当たり前じゃないの?」


 あ、そうだった。

 クーンは今まで土のある場所でしか、スキルを使っていなかった事に気が付いた。

「ヤーナありがとう!おかげで冷静になれたよ。よし天ちゃん、先に着地してくれないか?先回りしてからスキルで何とかする。」


【分かったが間に合うのか?】


「先に着きさえすれば間に合うさ。さあ急いでくれ!」


 天ちゃんは恐ろしい速度で地面に激突・・・・する前に急停止、俺は思わず前に座るヤーナにしがみ付いてしまった。


「きゃあ!クーンのエッチいい!」


 俺の頬には紅葉マークがついた。

 そしてその時の衝撃で、俺は天ちゃんから落ちてしまった。


「ぎゃああああ!!!!!!落ちるううううってあれ?痛くないぞ。」

 俺はどうやら地面に激突する事なく、無事地上に降り立ったようだ。

 だが時間が無い!


 俺は上を見た。

 2人と1体の姿を確認する事はできたが、もうすぐ地面に激突だ!


 急いで【土】で斜めの板を作成・・・・板と言っても数十メートルはあるぞ?しかもどんどん長くしていく!

 で、俺はそれを落下する2人と1体の近くに展開していく。

 辛うじて間に合った板に、2人と1体が接触する。

 だが斜めになっているのでそのまま滑り落ちていく。滑り台みたいだな。

 そのまま地面すれすれのと所で今度は上向きに変えていく。見る場所を変えれば

 U字になっている事に気が付いただろう。


 こうして落下の勢いを殺す事に成功、暫くして対象は右に左に移動し、やがて静止した。


 ふう、危なかったぜ!


 まさかあんな所に、こんなのがいるとか思わないだろう?

 しかし驚いたな。

 土が無い空では、俺は無力だったんだな・・・・


 だがクーンは勘違いをしていた。

 地面に接していないと【土】スキルが使えない訳ではないのだ。

 手持ちに土があれば使えるのだが、まだそれに気が付いていないクーンだった。




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