第64話 クーンとヤーナのデート
天馬に翼はあるが、翼で空を駆けるわけではない。
実際天馬・・・・ペガサスとも言うが、もし天馬が人を背に乗せ空を駆けるのに翼をはためかす必要があれば、翼に当たり怪我をする、落下する等々酷い結果になるだろう。
だが実際には翼をはためかす事はない。
●注:この話の中でのペガサスの扱いです。
天馬は魔力で空を駆ける。
そして天馬が従魔となれば、その速度は騎乗した主の魔力総量に左右される。
だがクーンの魔力総量はけた外れ。
天馬の天ちゃんは、その魔力に戸惑っていた。
【なんという量だ。これは下手に全力を出せば、とんでもない事になるな。】
「どうだいヤーナ、空からの眺めは格別だろう?」
クーンはご機嫌だった。
「素晴らしいわね!上から見ると王都ってこうなっているのね。」
天ちゃんに少し傾くように伝えれば、眼下に王都の街並みがよく見える。
「よし、今度は少し遠くに行こう!」
「ええ?今から街を出るの?直ぐに暗くなるわよ。」
「大丈夫さ、天ちゃんには全力でかっ飛ばしてもらうから。」
天ちゃんの戸惑いは現実のものとなった。
【主よ、よいのか?主の魔力量は信じられぬほど多い。その魔力を用い全力で駆ければ、恐ろしい事になるやもしれぬぞ。】
「いやそこまで大事にはならんだろう?まあそれに、天ちゃんがどれほどの速度を出せるのか知りたいしな。」
クーンは何も考えず天ちゃんにスピードアップを命じた。
《ビューン!》
あっという間に王都を出、見知らぬ土地に。
因みにクーンの出身地とは正反対に向かっている。
「きゃあ!クーン凄い!景色が流れるように見えるわ!」
空を駆ける天馬の天ちゃん。
そして気が付けば雲を突き抜けていた。
「雲って何だか想像していたのと違う・・・・」
雲とは霧のようなもの。
そんな中を通れば細かい水の粒子で濡れてしまう。
但しずぶ濡れにはならず、肌に服が張り付くような感覚。
そのせいで二人の不快感が増した。
「も、戻ろうか。」
「え、ええ・・・・このべたつき、早く何とかしたいわ。」
クーンは天ちゃんに王都へ戻るように指示を出した。
一方この頃王都では・・・・
「何だ今のは!結界を突き抜けていったぞ!」
「あ、あれは天馬です!しかも人を乗せています!」
「馬鹿言え!いかに早い天馬といえども、あのような速度は無理だ!」
「しかし!どう見ても・・・・ひ、姫!そ、それに王子まで!」
「天馬がどうしたんだい?」
「は!実はカクカクジカジカで御座いまして・・・・」
「成程そう言う事か。ここはビーフストロガノフの出番だね。」
ビーフストロガノフ。
クーン達が手放した天馬につけられた名前。
何故料理の名前を付けたのか、そのセンスは??である。
「二人の魔力を合わせれば追いつくのではありませんか?」
「そうだねえ、僕は試してみたかったのだよ、ビーフストロガノフの本気の走りを!」
「素晴らしいですわ、あに様。早速参りましょう!」
姫と呼ばれた少女と王子と呼ばれた少年は、大臣達が止める間もなく天馬で空を駆けて行ったのだった。
・・・・
・・・
・・
・
「あに様どうですか?」
「魔力を辿っているのだが、どうやら我々2人の魔力総量を遥かに超えた化け物らしいね。」
「まあそれは。そのような人が在野で埋もれているのですね。」
その時前方から何かが近づいてくるのが分かった。
「何か来る!回避!」
王子と呼ばれた少年はビーフストロガノフにそう命じたが遅かった。
とてつもなく速い速度で近づいてきた何かを避けようとしたが、相手が速すぎた。
そのまま衝突・・・・と思いきや、ギリギリ回避。だが通り過ぎた時に発生した衝撃波が凄すぎて、2人とビーフストロガノフはバランスを崩し、落下してしまった。
「きゃあ!」
「ぎゃああ!」
「あれ?今何かすれ違った?」
「主よ、同族の気配がある。戻ってもよいか?」
「そうだな、気になるし。」
あっという間に戻ったが、クーンが見たのは天馬と人が落下していく姿だった。
あれ?もしかしてさっきすれ違ったと思ったのはあれ?
何だか揺れた気がしたけれど、何だろうと思ったんだ。
うーん、このままでは地面に激突だな。
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