第57話 ヤーナの告白

 翌日、いつものように薬草採取。

 フロリーナとヤーナに教えつつ・・・・今回は何故かマースもいる。

 どうやら昨日のうちに、フロリーナが誘ったようだ。

「おはようございますクーンさん、本日は宜しくお願いいたします!」


「ああうん、って俺が教えるのか?」

「え?違うんですか?」

「そうだなあ・・・・セバスチャンに教えてもらったらどうだ?彼には天馬は過ぎた報酬だ。それぐらいはしてくれるんじゃないか?」

 2人の面倒で手一杯だ。

 そしてセバスチャンと言えば、

「わかりました。私で正しくお教えできるかどうかは分かりませんが、誠心誠意教えていきたいと思います。ではマース殿、こちらへ。」


 マースはセバスチャンと共に去った。

 フロリーナが寂しそうな顔をしているが、

「もしかしてマースと一緒にしたかったか?」

「え、ええ、その、私が誘ったのですから、一緒に行うのかと思っていましたの。」


 まあセバスチャンはフロリーナの従者、いや執事だ。

 一緒にいてもらうか?

「じゃああっちで一緒に教えてもらったらどうだ?」

「はい!では行ってまいりますわ!」


 走って去って行った。


 そして残された俺とヤーナ。

 しばしの沈黙。

「ねえクーン、私と二人っきりじゃ駄目?」

 正確には従魔が3体いるんだけど、ノーカンだよな。

「お、俺は別にいい。ヤーナこそどうなんだ?」


「私はクーンと二人がいいかな。」


 あれからすっかりヤーナは変わってしまった。

 上から目線はすっかり鳴りを潜め、話しやすくなった。


「じゃあ早速始めよう。」


 よくわからんが今のヤーナは覚えがよかった。そして疑問に思うとすぐに俺に確認をする。


「ねえクーン、これはここを持てばいいのよね?」

「これは雑草でよかったわよね?」


 ・・・・

 ・・・

 ・・

 ・


 この日一日でヤーナは、今までの覚えの悪さは何だったのかと思うほど、完ぺきにこなしていった。


 そして未だ二人っきり。

 そんな時ヤーナが、

「クーン、私今まで嫌な娘だったでしょ?」

「・・・・うん、常に上から目線だったし、俺に妙に突っかかって来たし、いつも喧嘩ばかりだったし。」

「そ、それを言われるとあれだけど、私あれから色々思ったのよ。そしてね、以前の私って背伸びして、無理に自分をよく見せようとしてたのね。そう、子供だったのよ。そりゃあまだこの身体は子供よ?だけどいつまでもあんなのじゃいけないわよね。」


 まあ確かに。そして何か知らんが、ヤーナは俺が気を失った前後の出来事で何かを感じたようだ。


「クーン、私貴方に言っておかなくてはいけない事があるの。あ、深刻な話じゃないわよ?」

「びっくりしたよ。実は私男だとか言われるんじゃないかと思ったからさ。」


「そんな事ないわよ!そうじゃなくって、わたしね、クーンが好き。」

 俺は固まった。

 日本にいる時から告白なんて一度もなかった。

 それがこの異世界で、しかもこんな美少女に告白されるんだ。

「私、言わないで後悔するよりも言ってから後悔したいの・・・・私ヤーナ・アンネリース・レインチェスはクーン・カウペルに告白します。私と恋人になって下さい!」

 俺は迷った。

 いいのだろうか。

 だがヤーナの目は真剣そのものだ。

 俺はどうしたらいいか・・・・だが思わず抱きしめていた。

「ヤーナ、俺でいいのか?」

「クーンがいい。」

「俺こそヤーナと付き合いたい。」


 この後2人は口付けを交わした・・・・ただし2人は11歳。

 もし結婚するにしても、ヤーナは侯爵家から追放されたとはいえ、まだ侯爵家に籍は残っている。


「い、言っておくけれどここまでだからね!え、エッチな事は15歳になるまで駄目なんだからね!」


 顔を真っ赤にさせながらそんな事を言うヤーナ。

「分かっているよ。我慢する!」

「そ、そう、わかればいいのよ。それと、他の女の子に色目を使っちゃ駄目なんだからね!」

「分かっているさ。さ、そろそろフロリーナ達と合流しないと。」

 こんな平和な時がもっと続けば・・・・

 そう思ったクーンだったが、この後ヤーナも含めフロリーナ、マースと共に大きな渦に巻き込まれていく事になろうとは、この時はクーンの身近にいた人々は誰一人として予期していなかったのである。


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