第35話 実際に草原で使ってもらう

「俺が台車とトイレを作っている、というのをどうやって知ったのかは知らんが、何故作ってほしいってなるんだ?トイレぐらいどの家にもあるだろう?」


 台車はまだいい。あれはそもそも荷物の運搬、若しくは移動手段として作ったから、人の手で簡単に移動させる事が出来るからだ。車輪があるから持ち運ぶのではなく移動させると言った方がいいか?


 トイレは事情が異なる。

 トイレは地面に穴を掘り、【土】スキルで一から便器を作り、衝立も作っている。

 現地で使い捨て前提で俺が自分の用を、若しくは2人の少女に恥をかかさないために作ったのであって、決して持ち運びを考えて作ってはいないんだよな。

 だが今後他の冒険者の利便性を考えると、持ち運び式のトイレを考えた方が?

 うーん、男なら小便だったらその辺でできるが、女はそうはいかないよな。


 さてゲロってもらおうか、どういう理由か。

 だがそこから出た言葉は意外な結果が待っていた。


「それはですね、クーン様はニールス様の弟君と聞き及んでおります。そして最近ニールス様率いる【雲外蒼天】の活躍は王都ではそりゃあもう有名ですわ。そしてその原動力の一つに台車があるのですが、私、実は思い切ってニールス様に聞いてみましたの。ニールス様ははぐらかしていましたが、パーティーメンバーのノールチェ様に聞いてみた所、何とニールス様の弟が作ったのだよ!と教えてくれまして。その後密かに調査しておりましたら、トイレを確認しまして非常にその有効性に魅力を感じ、双方お願いしたいという事になりまして。」


 すまん、そんなに喋りまくってくると、こっちの集中力が削がれてしまうんだが。

 それにあれがトイレだとどうして気が付いた?


「なあ、衝立で囲っていたのにどうしてトイレだと気が付いたんだ?少なくとも周囲に人の目はなかったはずだぞ。」


「それはもう、とある方から使用感を・・・・ってい、今のはなかった事に!」


 つまりフロリーナかヤーナ、若しくは2人から聞いたんだな。

 女性だから2人とそう言った話はしやすかったのかもしれん。

 口止めはしなかったからな。

 口止めをしていたのは、毎日寝る前に魔力を使い切る事だけだったからな。

 うーん、まさか作ってと言われるとは思っていなかったからな。どうするか。


「それはいい。別に言っちゃあ駄目とは言わなかったしな。それより台車は直ぐにでも作る事はできるが、トイレは難しいぞ。そもそも持ち運びを考えて作っていないからな。」


 トイレは使用済みになれば土に戻してしまうからな。

 それをずっと持ち運べるようにするとなると、そもそも作り方を変えないといけない。


「ではまず台車をお願いします!」

「因みに荷物の運搬用と移動手段としてのキック台車、どっちだ?」

 多分運搬用だろうが、道具作成のスキル持ちが作れば、もっといいのを作る事が出来るんじゃないか?と思ったが、どうやらスキル持ちに台車を作成するという発想が無いらしく、俺が車軸や車輪を工夫して作ったのだが、そう言った知識も考えも持ち合わせていないらしい。


 一台二台だったらいいが、何十台も作れ、となれば俺の活動が台車作成に制限されてしまう。金になるのだったらそれはそれでいいのだが。


「今から作るから、素材の確保をしたいから外に行きたい。」


 俺は2人と共にいつもの薬草採取をしている付近に向かった。


 俺は目の前の2人を信用していないので、一人で作成した。


 トイレの時に用意する衝立で俺を囲ってしまい、その中で作った。


 すると何故かフロリーナとヤーナが凄い勢いでやってきたんだが、トイレは作っていないぞ。


 しかもあのセバスチャンを引き離してここまで来ていた。何だお前達、やればできるんじゃないか。


「どうでもいいから早くトイレを用意しなさいよね!!」


 ヤーナは我慢していたようだ。珍しくトイレを作れと言ってきた。

 いつもはそれっぽい事は言うが、直接は言わないからな。


 俺は急いでトイレを作り、ついでにもう一つ作ってみた。

 もうひとつを完成させた途端、フロリーナが入っていった。

 うーん、これはどうしようか。台車にトイレを用意したらどうなる?意味が分からんな。つまり台車に組み立て式のトイレとしての機能を持ち合わせるか、組み立て式のトイレを収納するスペースを確保した台車を作成するか。

 目の前の少女は外で用を足すのには抵抗があるようだ。

 だから俺が衝立を用意したのを確認して、すぐにこっちに来たんだな。

 もし自分で簡単に持ち運べ、簡単にトイレを組み立ててしかも人から見られないように用を足せるのであれば、女性に需要があるのではなかろうか。

 あ、パウラさんが何か言いたそうにしているぞ。

「もしかして小便したいのか?」

「う、じょ、女性にそのような事を聞いてはいけませんよ。こういう時はお花を摘む、と言うのですよ。」


 ヤーナが出てきた途端、入れ替わって入っていった。

 使い方ってわかるのか?


 暫くして用を足し終えたパウラさんだが、目を輝かせていた。

「絶対に持ち運び用のトイレ、作って下さい!」


 トイレは作る事が出来るが、水を出す設備は無理だぞ。


 あ、もしかして簡易ウォシュレットの事か?

 いつものように衝立に掛けてあったっけ。

 よく使い方が・・・・ってフロリーナかヤーナに聞いたのだったら分かるか。

 ただこれには欠点がある。水の確保だけはあらかじめ自分でしてもらわないと駄目なんだ。


 この後試行錯誤して完成した簡易トイレ。

 後に王都で爆発的に売れる事になるのだが、これはまた別の話。

 特に売れたのが簡易ウォシュレットだ。

 水を入れ、自分で筒に刺さっている棒を押すと、筒の中に満たされている水が押し出され、押し出しただけの水が出てそれを尻の穴に当てる事で綺麗になる。これが評判を呼びとんでもない事になった。意外かもしれないが作り方は簡単。

 女性は別の使い方(おまたを綺麗に、と言う意味で)をする事で評判を呼び、女性に大人気となっていく事になる。


 一応この簡易ウォシュレットは水筒代わりにもなる。

 あまりお勧めはしないが水が出るからな。


 すまんが肝心の台車は次の話だ。

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