第34話 トイレと台車
こんな生活が1週間程続いたが、相変わらず2人の少女フロリーナとヤーナ、両名の薬草採取は上達していない。
何故かセバスチャンは日を追う毎に上達している。
何だろうなこの違いは。
そんな中俺は2人には宿に戻ってから、必ず寝る前に実行するようにと伝えているある事柄がある。
「いいか、これから俺が言う事は他言無用、セバスチャンにも知られるな。実際間違っている可能性もあるが、俺はこれで魔力が増大した、そう言う手応えがある。」
「それは何度も聞いている!執事には言っていない!何度言えばわかるんだ!」
ヤーナが俺に怒りをぶつけてくるが、だったら薬草採取をいい加減に身につけてくれよ!
「じゃあ言うけど、お前達2人には前科がある。いい加減薬草採取を身につけてくれ。無理なら別の事で身を立てろ。」
「クーンさまどうかお見捨てなきよう願いますわ。」
フロリーナは俺の言う事を聞いてはくれるが、何故か覚えが悪い。
「その為に毎日寝る時、布団の中で魔力を空にして寝ろ、と言っているんだ。万が一の場合は魔力の多さが生死を左右する可能性があるからな。」
たった1週間だが、セバスチャンが2人の変化に気が付くほど目に見えて効果があらわれているようだ。
「おはようございますフロリーナさまヤーナさま、そしてクーン様。時にお聞きしたい事がございますが、皆さま何かありましたか?何やらこの1週間で随分と魔力総量が増えたように感じますが。クーン様に至っては元々が多いようでございますからさほど変化は見受けられないような気もしますが、実際クーン様の魔力総量の増え方は尋常ではありませんな。」
この爺さんやはり実力者だな。言わずに見破るとか信じられんがドンピシャだ。
食事を済ませ、一応毎日ギルドで依頼を確認しているが、薬草採取は常時依頼。
依頼が無くても必ず相場で引き取ってくれる。
冒険者にはポーションが必須なのだ。
だが今日は違った。
いつもの受付のお姉さんに呼び止められたからだ。
「少々宜しいですか?」
宜しくないが何だろう。こういった時は断らない方がいいと思うが、何かろくでもない事の場合もあるからな。
「クーン様、私共は先に向かいます。」
セバスチャンは何かを察したのか、2人を連れて薬草採取に向かったようだ。
あの調子であればもうセバスチャンに薬草採取の指導をさせてもよいのではなかろうか。
もう俺は充分教えた。身につかなかったのは2人の努力が足りなかったのか才能がなかったのかは分からんが、もう教えなくてもいいよな?
俺も自分の事やティーデとヒセラの事もあるし、いつまでも2人にかまっている事は出来ないんだよ。
弟と妹はニールスにいに任せっきりだが、ニールスにいもパーティーの活動があるだろうし。
俺は別室に連れていかれたが、そこで話があるようだ。
部屋の中には既に2人組の男女が居た。どうやら俺が来るのを待っていたようだ。
「クーン様紹介いたしますわ。ロッベモントの商人ギルドに在籍している2人です。」
商人ギルド?
「お初にお目にかかります。私商人ギルドに勤めておりますドリース・ヤンセンと言う者でございます。こちらは本日補佐として同行しておりますパウラ・ボーハールツでございます。」
「クーン様、本日はお会い下さり感謝いたします。先程紹介がありましたがパウラ・ボーハールツでございます。」
何が始まるんだ?
俺は身振りで示されたので椅子に、いやソファーに座った。
俺の身体はまだ子供だが、子供に対して大人と同じ対応とかなかなかやるじゃないか。
「俺は何も聞いていないんだが、一体何の用だ?」
男の方が喋り出した。
「事前に会う約束をしていなかったにも関わらず、こうして時間を割いて下さり感謝いたします。実は私共、クーン様がおつくりになる道具に興味がございまして、もし可能でございましたら売って下さる事はできないでしょうか、と思いまして。」
台車か?しかも俺が作っているって言ったな。
「何を売ってほしいんだ?」
今度は女の方だ。
「単刀直入に言います。台車とトイレでございますわ、クーン様。」
台車はまだいい。だがトイレを売れとは何だ?
「売るって余分はないし、トイレに関してはそもそも持ち運びを前提にしていないから無理だ。」
台車は移動手段としても活用できるしそっちはいい。だがトイレは移動できんぞ。いや組み立て式や折り畳み式で、現地で広げて組み立てていく方法だったら無理ではないが。
だがそれだと作るのが面倒だな。色々な機構を考えないと駄目だし、持ち運ぶのであれば大きさ、重さも考慮しないといけないしな。
単純な造りにすればいいんだが、俺の場合は【土】スキルででサクッと作って、用が終われば土に戻すだけだからな。
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