第2話
(※ジーナ視点)
お姉さまは家から出て行った。
この家での生活に耐えられなかったのだろう。
ああ、いい様だわ。
私はお姉さまの何もかもを奪った。
そっくりな双子なので、お姉さまに成りすますのは簡単だった。
今では私が、伯爵令息であるロディ様の婚約者であり、モーズリー家次期当主でもあるクレア・モーズリーなのよ。
お姉さまから何もかもを奪い、私の幸せな生活は続いた。
それが、このままずっと続くと思っていた。
しかし、そうではなかった。
私の元へ、次々と人が押しかけて来た。
「クレア・モーズリーさん、あなた、いつになったらお金を返してくれるんですか? あれだけの大金を貸したのに、まさか踏み倒そうとなんてしていませんよね?」
「クレアさん、貴女には、違法賭博への関与の容疑がかかっています」
「うちでは、何もしていない平民に手を上げたなんて話も出ていますよ」
……え、何なのよ、これ。
私は、知らない。
でも、今の私はクレアなのだから、みんな私に責任を負わせようとしてくる。
え、何?
逮捕!?
死刑!?
ちょっと待って、私はクレアじゃないのよ!
しかし、そんなことは聞き入れてもらえなかった。
すでに私は、クレアとして認知されているのだ。
……あぁ、こんなことになるくらいなら、お姉さまのフリなんてしなければよかったわ。
*
私は一人、町を歩いていた。
妹のジーナに何もかも奪われ、私はすべてを失った。
でも実は、妹が私に成りすますのは、これが初めてのことではない。
幼いころから、何回も、何十回も繰り返してきたことだ。
相手の物を奪いたければ、その相手に成りすませば自分のものになる。
相手の評判を落としたかったら、その相手に成りすまして悪事を働けばいい。
私たちはそうやって、何度もお互いに成りすました。
繰り返すうちに、元々どちらがどちらだったのか、自分たちでもわからないようになった。
でも、迷うことはない。
相手がジーナなら、私はクレアだ。
そして、相手がクレアなら、私はジーナだ。
実に簡単なことである。
そうやって、お互いがお互いになりすまし、奪い合い、蹴落とし合ってきた。
でも、今は離れ離れになって、それもなくなった。
あれ?
今の私は元々、クレアかジーナ、どっちだったかしら……。
クズな妹が私のふりをして婚約者を奪いました。言い忘れていましたが私もクズなので、私のふりをしてもロクなことにはなりませんよ? 下柳 @szmr
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