クズな妹が私のふりをして婚約者を奪いました。言い忘れていましたが私もクズなので、私のふりをしてもロクなことにはなりませんよ?

下柳

第1話

 子爵令嬢である私、クレア・モーズリーには、双子の妹であるジーナ・モーズリーがいる。

 そしてある日、私の婚約者である伯爵令息のロディ・ボーマンを、妹が奪った。


「お姉さま、残念だけれど、これでロディ様は私のものよ。私はこれから、いきていくわ!」 


 その方法は、信じられないものだった。

 彼女は最悪な方法で、私のふりをすることに成功して、婚約者を奪ったのだ。

 その方法とは、私の顔に、劇物をかけるという卑劣なものだった。

 私の皮膚は溶けて、元の顔には戻らなかった。

 

 そしてジーナは、顔に劇物がかかったのは妹のほうだという話をすぐに広めた。

 両親は本当のことに気付いていたが、ジーナに協力することを選んだ。

 昔から、いつも妹の味方で、私の味方をしてくれたことなんてなかった。

 

 婚約者のロディも、薄々は気付いていたようだった。

 しかし、顔が爛れている婚約者よりも、元々そっくりな顔の妹の方を選んだ。


 こうして、妹は私のふりをして、私の地位を奪ったのだった。

 彼女は私のふりをして、婚約者も奪い、毎日幸せな様子を私に見せつけてきた。

 こんな方法で婚約者を奪うなんて、クズな妹らしいやり方だ。


「お姉さま……、あ、間違えた、ジーナ。あなたも婚約者を見つけたらどうなの? あ、その顔じゃあ無理かもしれないわね」


 妹は高笑いしていた。

 私から何もかも奪って、満足しているのでしょうね。

 私は、笑いそうになるのを必死に我慢していた。


 そうやって、一生私のふりをしているつもりなのでしょうけれど、私のふりをしても、ロクなことになりませんよ?


 言い忘れていましたが、私もけっこうなクズですから。

 私のふりをし続けている報いは、必ず訪れますよ。


 私が本当はどういう人間か知っても、その時にはもう遅いでしょうね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る