5-7.運命?遺伝子?
──撮影を終えて、二人で帰宅する。
部屋に入ると、柊が後ろからふわっと抱き締めてくれた。
「俺まじで……お前と出逢えてよかった」
心の底から伝わってくるようなあったかい声で、そう言ってくれる。私は身体をくるっと後ろに回して柊に抱きつくと、大きな背中に腕を回した。
ふと、私は先日の佐藤さん夫妻の話を思い出していた──
「柊……?」
「ん?なに?」
「もしね?私たちが、幼馴染とかじゃなくて……たとえば柊のパパと私のお母さんみたいに、お互い既に結婚してて子供もいて近所に住んでるって状況で出逢ってたら……、柊どうしてた……?」
身体を離して、見上げながら聞く。
「んー……」
柊は想像を巡らせてるようで、私の髪を撫でながら少し考えていた。
そして、気持ちが固まったようにくしゃっとした笑顔を私に向けて……
「親父と同じこと……してたかもな?笑」
ソファーへ私を導くと、自分の隣に座らせる柊。
「私も……お母さんと同じことしてたかもって……ちょっと思っちゃった。笑」
柊が思っていた通りの答えをくれて嬉しくなり、私は話を続ける。
「もしかしたら私達ってさ……、魂が惹かれ合ってるのかもなって……最近思ってて」
「え?魂って……?」
柊は不思議そうに私の顔を見る。
「だってさ……?親同士が駆け落ちしちゃうほど惹かれ合ってたんだよ?私たちもすごい小さい頃からお互い好きだった訳だし……」
「なんかもう……惹かれ合う遺伝子をお互い持って生まれたってゆうかさ。運命とか……前世とか……上手く言えないんだけど……」
なんだか照れくさくなってくる私。柊は私の手をそっと握ってくれる。
「この前ね、担当したお客さんから聞いたの。『ツインレイ』ってゆうの……知ってる?」
柊を見ると、予想通り頭にはてなを浮かべている。私はスマホで『ツインレイ』と検索した結果を、柊に見せた。
「前世では一つの魂だったんだって。……なんか私たちに当てはまってる気がして……」
スマホを見つめ、じーっと読み込んでいる柊をチラッと見る。
「うん。たしかにな……」
柊は「ありがと」とスマホを私に返すと、ぼんやり部屋の壁を見つめていた。
──すると突然、ふはっと笑って、
「……なるほどな、そっか。よかったー」
納得したように柊は私を見る。
「なんか俺、ぜんぶ腑に落ちたわ。笑」
「……ん?どうゆうこと……?」
「俺さ、ずっと不思議だったんだよ。なんでこんなに亜妃じゃなきゃダメなんだろ?って」
「変な別れ方したから執着してるだけなんかな?とか。他の女が全員無理だった時も……俺なんか変な病気になったんかな?とか。まじでいろいろ悩んだんだよ……笑」
私の手に、優しく指を絡める柊。
「でもさ……?」
「ガキの頃にツインレイに出逢っちゃってんだから……そりゃ、仕方ねーよな?笑」
心から安心したように、ふわりと笑った。
「それに……お前もずっと俺のこと想ってくれてたんだろ……?」
繋いだ手にキュッと力を込める。
「うん……私も…柊じゃなきゃダメだった」
改まって伝えると照れてしまって、少し俯きながら答える私。
「……ツインレイ決定だな?俺たち。笑」
柊もちょっと照れたように目尻を下げて笑っていた。
──ゆったりとした沈黙の後……柊はちょっと悪戯に微笑んで言う。
「………じゃあさ…?」
何かを企んでるような顔をしながら身体ごと横を向いて、ゆっくり私をソファーに押し倒す。
「ツインレイの二人から生まれてくる最強な赤ちゃん……見てみたくない……?笑」
「ふふっ、……うん。見てみたい」
二人とも笑いながらキスをする。お互い少しずつスイッチが入っていくのを感じた。
──────
───
座ったまま向き合って、柊が入ってくる直前……
「なんか……ドキドキすんな……?笑」
初めての隔たりのない行為を前に、私もドキドキしていた。
「……いい?」
「……うん、いいよ」
柊がゆっくり入ってくる。彼の温かい熱を直に感じて、下半身がキュンと疼いた。
「……ちょ、待って。動けねーわこれ……気持ち良すぎて……」
柊が必死に堪えようと呼吸を整えてる姿が愛おしすぎて、胸がギュッとなる。
「……すげー……なんだこれ……」
「……なんか……ゾクゾクする…っ」
柊は眉間に皺を寄せ、体内から湧き上がる感覚に陶酔しているようだった。
柊と繋がっていると……毎回、不思議な感覚になった。
このまま本当に一つになれると錯覚してしまうくらい、彼の身体と私の身体はピッタリ何かが合わさって共鳴するような……そんな感覚を覚えていた。
単純に、“相性が良い”というのでもなく。
純粋に、“幸せ”というだけでもなく。
言葉には言い表せない何か……もっとずっと深い部分で繋がっているような気がした。
生身の肌と肌で結び付いた今、言葉にできないその感覚を最大限に感じ、身体の内側から何かがゾクゾクして来て止まらなかった。
……柊も同じようにそれを感じているのが伝わってきた。
この感覚こそがまさに『ツインレイ』の証拠なんじゃないかと……なぜだか私は、そんな気がしていた。
「亜妃……愛してるよ……」
「ふふっ」
私も同じ言葉を言おうとしていた矢先の柊の言葉。
思わず笑ってしまうと……
「……なんだよ。もう聞き飽きたって?」
少し不貞腐れてしまった柊。
私は柊の首に腕を回して、自分から深く口付ける。
「……ちがうの。私も同じこと言おうとしてたから」
身体を沈め、更に繋がりを深めてから柊の瞳をしっかりと見つめる。
「柊……愛してる」
気持ちを込めて伝えると、柊は幸せそうに嬉しそうに笑った。
「一緒にイこ……?」
柊は私を絶頂に導くように、腰の動きを早めた。
こうして私たちは、人生で初めての隔たりのない甘い夜を、ゆっくりと越えていった──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます