5-5.戻ってきた幸せ


──翌朝…


 ゆっくりと目を開けると……私の部屋に柊がいることに、一瞬頭が混乱する。


 そしてテーブルの上にはネイビーブルーの小箱。


 ん?これって………やっぱり夢……?


 まだ少しお酒の残った頭で、ぼーっとそんなことを独り考えていると……


「はよ」


 柊が私の脚に自分の脚を絡めてくる。


「おはよ、柊」


 分厚い身体に腕を回し、横からそっと抱きついた。


「お前……もう外で酒は禁止な?」

「………はい」


 記憶は結構しっかりあった。

 酔いが覚めた今、思い出すと顔から火が出るくらいに恥ずかしい。



「……ま、やーばいエロくてめちゃくちゃ燃えたけどさ。笑」


 柊は私の腕をすりすり触る。


「家ではたくさん飲ませちゃおー。笑」

「もー……、やだ柊……」


 私は拗ねたふりをしながらも、愛する彼との幸せな朝を噛み締めていた。



「──今日ね、仕事で8:00には出なきゃいけなくて…」


 時計を見ると、現在時刻6:20を示している。


「ん、俺も朝から仕事探し行く」


 やさしく微笑みながら私の頬に鼻を擦り付けてくる。


「家はさ、やっぱ休日一緒に見に行かない?一緒に住むんだし……その方が良いっしょ?」

「だね。あ、でもホテル行かなくて良いからね?ヒモとか思わないから。ずっとここにいて?」


 私は柊の胸元に、そっと自分の手を置いた。


「わかった……ありがと」


 そのままベッドの上、二人でまったりしていると……柊が私の服に手を潜らせ、腰のあたりの素肌をさわさわと触り出した。


「俺まじで……お前の肌触り好き過ぎるわ」


 その手を腰から全身に這わせるようにそっと動かす。


「ちょっと……くすぐったいよ。笑」


 身を捩ると、


「ごめん。笑 いやまじでさ、人によって全然違うんだよな……肌って。このすべすべで手に吸い付く感じたまんねーわ。肌の相性も良いよな?俺らって」


……今度は腕をすりすりと撫で回してくる。



「ふ〜ん、そうなんだ……」


 妬きもち半分、好奇心半分で、ちょっと意地悪を言いたくなって。


「私は柊しか知らないからわかんないやー」


 ちょっと不貞腐れてみる。


「いや、ごめ……、そうゆう意味じゃなくてさ……」


 焦り出す柊を見て、内心ふふっと笑いながら様子を見る。


「待って、ごめんな。でも……嫌かもしんねーけど……言わせて?俺ほんとにお前以外の肌ぜんぶ無理だったの。まじでもう思い出すだけでゾワゾワして吐きそう……」


……と、そんなことまで言い出す。


「じゃあ……これからはもう、他の人とシちゃダメだよ?ヒカルくん?笑」


 ニヤニヤしながら言うと、


「ばかお前……!その呼び方まじでやめろって!笑」


 柊の反応が面白くて、ケラケラ笑ってしまう私。


「つーかさ、俺の身体……お前としかできない作りになってるから。嘘じゃなくてまじだからこれ。安心してな?」


 真面目な顔をしてそう言って、沢山キスしてくれた。


 過去のことは仕方のないこと。柊とまたこうして逢えたんだから。それで良い。


「──てかさ……、」


 突然……片肘をつき頬を緩ませて、私を見つめる紫耀。


「まじで俺……亜妃の最初で最後の男でしょ?お前のエロくて可愛いあの姿知ってんの、この世で俺だけってことっしょ……?」


 照れながらこくりと頷くと、完全にニヤニヤと緩みきった顔をして。


「最高すぎるなそれ……やーば……」


 嬉しそうに私に覆い被さる。



「なぁ……朝はダメ……?」


 悪戯な顔して甘えたような声で聞いてきた。



「……ダメ……じゃない」


 出勤時間まであと1時間……なんて、うっすらと考えつつ。


 二人の甘い朝を、じっくりと堪能した──




──次の私の休日…


 早速、婚姻届を出しに行った。


 ここ数週間の展開があまりにも早すぎて、何が何だか頭が付いていかないままだったけれど。


 柊の行動力に、身を委ねてみることにした。


 そして……私たちは正式に夫婦となった。



 それから少しの間は私の家で生活をしていたけれど、


「家に転がり込んだ感じがヒモみたいで嫌だ」


 と、柊がやたらと言い続けるので……


 私の仕事が落ち着いた週の休日に家を探して、広々とした2LDKのマンションへと引っ越した。


 私たちは、10年もの期間離れていたのが嘘のように、自然に寝起きを共にし、毎日存分に触れ合い、穏やかで笑顔の絶えない日々を取り戻した──

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