5-4.特別な感覚~柊side~
──北海道から名古屋に帰った日…
俺はまず美容院へ行き、髪を黒く染めた。
仕事を辞める決意を目に見える形で表したかった。
そのままクラブのオーナーに辞めると告げに行った。
正直なところ、あのホストクラブの売上のうち半分以上が、俺目当ての客だったから……オーナーには猛反対された。
……けれども、俺の意思は硬かった。
俺のホストとしての可能性を見込んで拾ってくれたオーナーには感謝しかなかったけど。どうしても一緒になりたい人がいると正直に話すと、オーナーは渋々承諾してくれた。
そこからその脚でマンションを解約しに行った。
家賃ウン十万のだだっ広い部屋でわりと気に入っていたけど、手放すことに何の迷いもなかった。
──夕方、新幹線に乗り東京へ出る。
東京駅からそのまま銀座の街へ出て、高級ジュエリーショップに婚約指輪を購入しに行った。
店員にいろいろ尋ねながら、最終的に亜妃のイメージに合う上品なデザインのを選んだ。
アームに小さなダイヤが散りばめられていて、トップに一粒の大きなダイヤが付いてるその指輪。
号数なんて知らなかったけど、何となく感覚で選んだ。
そして、亜妃に家の住所を聞いた。
到着するや否や、仕事を辞めたことと家を解約してきたことを伝える。
亜妃は驚いていたけど、嬉しそうに笑ってくれていた。
その場で指輪を渡し、2回目のプロポーズをする。
思った通り……その指輪はまるで亜妃のために作られたものみたいに、ピッタリと指に嵌って輝いていた。
──あれだけ反応しなかった俺の身体……
亜妃に少し触れるだけで、驚くほど敏感に反応を示していて、我ながら笑ってしまうほどだった。
亜妃の匂い、声、表情、肌触り、その全てが俺の欲を掻き立てて、毎晩いくら抱いても抱き足りなかった。
ここ数日目まぐるしく変わる環境の中で、お互いに酷く疲れているはずなのに……俺たちは毎晩何度でも、お互いを求め合っていた。
その日、酔っ払って気が大きくなったらしい亜妃は……これまでになく積極的で。
亜妃の新たな一面を知った俺の興奮は止まらなかった。
「──しゅー…、……ちゅーして?」
「……っ、なぁ……おまえ酒弱すぎ。笑」
蕩けきった顔して夢中で唇に吸い付いてくる。
「ねぇ……脱いで?」
「ふはっ、はーい」
初めて見る積極的な亜妃。なんつーかもう……ご馳走様です。笑
二人とも全裸になって、ソファーからベッドへと移動する。
抱き合って舌を絡め、甘いキスに酔いしれていると……
「…──っ─…亜妃……?!」
亜妃が俺の上に自ら乗り、いきなり俺を自分の中に押し込もうとしてきた。
おいおい……まじかよ……。笑
「……待って。…さすがにゴムしよ……、……な?」
ぶっちゃけこんな亜妃の姿見せられたら、興奮しすぎてそのまま挿れたかったけど……酔った勢いって、何か嫌じゃん?
慌てて準備を整える俺に、後ろから絡みついてくる可愛い酔っ払い。
チューハイ一缶でこれは……まじで危険すぎる……。
「……っ…、しゅー……」
再び俺を押し倒し、艶めかしい声を発しながら自ら揺れて、タガが外れたように乱れる亜妃。
「あーもー……、こんなん俺……持たねーよ……」
「だーめ。がまんして?」
色気ダダ漏れでゆるゆると自分で腰を動かす。
「っ、ちょ、待って無理……まじで」
慌てて亜妃の身体ごと抱えて起き上がり、座位の体勢になる。
「…っ…、……、…っ……」
それでも尚、自分でゆらゆらと腰を動かして、気持ち良さそうな顔で色っぽい声を出す亜妃。
「…っ…、亜妃……、待っ……っ」
そのまま貪るように唇を求めてきて、再び俺を押し倒そうとしてきた。
「……あっぶねっ…、落ちるから。笑」
ベッドから落ちそうになり、慌てて亜妃の中から引き抜く。
抱きかかえるようにして、ベッドの中央に戻りながら体勢を逆転させ、彼女を下に組み敷いた。
亜妃は俺の頬を両手で包み込むと……
「しゅー……、もう離さないからね〜……」
とろんとした目で、ふにゃりと幸せそうに微笑む。
『私がぜんぶ受け止めるから』
……なんて、かっけーこと言ってくれてたけど。
こいつだってきっと俺と同じくらい辛くて、ずっと、寂しかったんだろうなぁ……。
そう思ったら、また涙が出そうになった。
酔っ払いの愛おしい彼女をギュッと抱きしめる。
これからは一生、亜妃の側にいる。
何があってもずっと。
俺は改めて心に強く誓いつつも……酒に酔ってあまりにも大胆になっている亜妃に、ひとつ忠告。
「亜妃……?頼むから俺以外の前では酒飲まないで」
わりと真剣な声で伝える。
「ふふっ、柊にしかこんな風にしないもーん」
小悪魔化してる酔っ払い。
いちいちキュンキュンさせられて……でもやっぱり、心配で。
冷めやらぬ興奮を押し付けるように、亜妃の唇を貪る。
向き合って座り、改めてゆっくりと彼女の体内に入る。
見つめ合いながら繋がるこの体制……死ぬほど幸せを感じる。
亜妃との行為は、ただ単に快楽を求め合うものではなかった。
彼女の中に入って彼女の温度に触れる度、俺は毎回不思議な感覚に陥っていた。
脳内の他の思考は全て停止し、亜妃の存在と亜妃から伝わる刺激だけに、全神経が集中するような感覚。
他とは比べようのない気持ち良さなのはもちろん、二人はこのまま一体化して溶け合ってしまうんじゃないかと思うくらい……怖いほど、深い深い繋がりを感じた。
間違いなく、これまで抱いてきた他のどの女性に対しても感じ得なかった特別な感覚。
俺はもう本当にこいつ以外無理なんだなと、行為を終える度に深く実感していた。
……この不思議な感覚の正体が亜妃の言葉によって後日判明し、俺は深く強く、納得したのだった──
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