5-3.過去に嫉妬


 居心地の良い空間。


 お互い気分が良くなってきたので、家の冷蔵庫に残っていた缶ビールとチューハイを一缶ずつ空けて乾杯した。私が柊の前でお酒を飲むのは、これが初めてだった。



──二人とも少し酔いが回って来た頃…


「あー……、まじでダメだ俺……」


 柊は私の肩に、甘えるように顔を埋める。


「亜妃が他の奴の彼女だったとかキスしたとか……まじで嫉妬で狂いそう……」


「お前はさ、俺のあんな汚い過去も全部……余裕で受け止めてくれたのに……。俺の器小さすぎて情けねーわ。笑」


 気まずそうに笑いながら、肩に頭をすりすり擦り付けてくるから……私は短く切られた黒髪をそっと撫でる。


「ふふっ、かわいい柊」


 こんな風に子供みたいにヤキモチを妬いてくれる柊も……昔と変わってなくて、愛おしい。


「何がだよ。普通に嫌だろ?他の奴とキスしたとか」


 どうやら真剣に嫉妬しているようで。あまりに可愛いから、思わずキュッと横から抱きついた。


「柊さ……“お前は余裕で受け止めてくれたのに”って言うけど……、私だって嫌だよ?」


「柊が他の女の人と……そうゆうことしてたとか……考えたくない」


 わざと少しむくれて言ってみる。


「そうだよな……ごめん……」


 柊はシュンとした様子で、静かに謝った。



「──すっげー生々しい話してい?」

「え………なに?」


 なんだか聞くのが怖くて、ちょっと怪訝な顔になってしまう。


 柊は思い切ったような口調で話し始める。


「俺さ、他の女とヤってる時も、いっつも亜妃のこと考えてたんだよね……。肉体的には違ったけど、頭ん中ではお前とシてた」

「え……?うそやだ……なにそれ。笑」


「ほんとにさ、冗談じゃなくてまじで。他の女に欲情できなくて俺。どんなに綺麗な人でも……無理だったの」


「だからいっつも目閉じて、頭ん中を亜妃でいっぱいにして……、最後まで目閉じてた……毎回。ほんとこれまじだから」


 柊は突然、私をソファーの上で押し倒してきて。

 両手を私の顔の横に付くと……


「でも今はさ……リアルな亜妃とできるから」


「ちゃんと目見て、顔見て、身体に触れて……。心の底から抱きたいって、お前に欲情してんの」


 そう言ってキスをしながら、私の太腿に主張する下半身を擦り付けてくる。


「お前に触るとすぐ勃つの……今でも変わってねーわ、俺。笑」


 柊は笑いながら、ちゅっと私の首元に吸い付いた。



「変わってないよ?柊は何も変わってない」


 お返しに私からも……もっと深く、口付ける。


「私の10年分……これからの人生で、いっぱい抱いてね?」


 わざと甘ったるい声でそう言うと、柊の主張するものを服の上からそっと撫でた。


 柊は驚いた顔をして。


「……お前さ……酔うとこんなんなるわけ……?笑」


 少し呆れたように色っぽく笑う。


「まじで亜妃……、どんだけ俺を夢中にさせたら気が済むんだよ……」


 3日連続の深くて甘い夜へと……二人は堕ちていった──

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