2-6.愛して愛されて
──映画の後、夕飯を食べてから帰宅。
お母さんの帰りが遅い日は、私の家で22時頃まで柊と過ごすことが多かった。柊のママには、部活仲間の家にいると伝えてあるらしい。
お父さんも相変わらず仕事で帰りが深夜なので、私たちは二人の時間をたっぷりと満喫することができた。
「最近お母さん、友達の家よく行くよな?」
「うん、お店の手伝いしてるんだって」
たしかに初めてのあの夜以降、私のお母さんが友達の家に行く日が急に増えた。
「ふ〜ん。ま、おかげで遅くまで一緒にいれるから、お母さんに感謝だな」
柊はベッドの端に座り、私を自分の脚の上に跨らせ、向き合う形で座らせる。
「……いっぱいイチャイチャできるし?笑」
いたずらな顔をして笑うと、私の胸に顔を埋める。
「ダメだ俺……お前に触るとすぐ勃つ。笑」
戯けて笑う柊と向かい合う私の間に挟まれて……硬く主張するものを感じる。
「もー……ばか」
急に恥ずかしくなって、私は柊の頭に顔を寄せて抱きついた。
柊は私を上目遣いに見つめてきて……
「………しよ?」
囁くように言って私を軽く持ち上げると、ベッドに寝かされて覆い被さってきた。既にスイッチの入った瞳で私を見下ろす柊。
ゆっくりと始まる甘いキス……太い首に腕を回し、応える私。
──柊は行為中、いつも私を気遣ってくれた。
独りよがりな行動など一切せず、全身で愛を伝えるように甘く優しく抱いてくれた。私はこの人に愛されてるんだと、いつも感じさせてくれた。
「……いれるよ?」
「……うん」
慣れた手つきでゴムをサッと付けると、柊は私と座って向き合ったまま、ゆっくりと私の中に入ってくる。
私たちは座位の体勢で、ギュッと抱き合いながら愛し合うのが大好きだった。
お互いの顔も声も吐息も一番近くに感じられる。
一つになっていることも、全て。
その体勢で繋がったまま何度もお互い気持ちを伝え合った。
「亜妃……大好きだよ」
「しゅう……だいすきっ」
身体をピッタリと隙間なく密着させ、ゆっくりとお互いのポイントを探るように揺れる。
2人でときどき見つめ合い微笑み合いながら、毎回心と身体を深く深く結び付けた──
──行為後はいつも柊が腕枕をしてくれた。
手や脚を絡め、素肌を擦り合わせながら、お互いの心を通わせた。
この時間が私はたまらなく好きだった。
「まじでさー、俺って運いいよな」
「ん?」
「だってさ、なんで亜妃みたいな最高に良い女が、俺なんか好きでいてくれてんだろ?って不思議だもん。いっつも」
真面目な顔でそんなことを言ってくれるから、急に恥ずかしくなる。
「ねぇ、柊褒めすぎ。なんかもう……恥ずかしいからやめてよ。笑」
私も柊の胸に顔を埋めて、心の内を放つ。
「柊の方こそ……、何で私なんか好きでいてくれてるんだろっていっつも思ってるよ?すごいモテるし。何回も告白されてたし……」
負けじと伝える。
柊はふっと笑ってから、悪戯に私を見た。
「あー。お前のこと好きで全部断ってたけどな?笑」
サラッと驚きのカミングアウトをする柊。
「え?!そうだったの?でも……女に興味ないからって……」
「あー。それ、“亜妃以外の女に興味ない”の間違いな。つーか、小3で気持ちに気付いてからずっと好きだったって言ったろ?」
柊はいつも私が喜ぶ言葉を簡単に口にしてくれる。
「でもさ、私なんて16年も生きてきて、告白してくれたのって柊と……天王寺くん?だけだよ?モテなさすぎて一時期不安になったもん。笑」
ずーっと思っていた。どうして私ってこんなにモテないんだろう?って。
「お前さ、本気で自分モテないとでも思ってんの?」
「え?」
「さっきも言っただろ?柏木が亜妃のこと好きだったって」
“柏木”……そう先生を呼び捨てにする柊。
嫉妬心の現れのようで、なんだか可愛い。
「つーか、亜妃がモテない訳ねーから。誰がどう見たって可愛いし。男は皆好きなタイプだからな……」
「え……そーなの……?」
見上げると、柊が深刻そうな顔をしてるもんだから、じゃあ何でこれまで誰にも言い寄られなかったんだろ?という疑問が湧いてくる。
柊は私の頭に浮かんだはてなに気が付いたらしく、悪ガキみたいな顔をして私を見下ろす。
「なんでお前が誰からも告白されてこなかったのか、教えてやろーか?笑」
柊はペロッと唇を舐めると、私の両頬に手を添えてじっと目と目を合わせ……
「俺が牽制してたから」
ニヤニヤ笑いながら、衝撃発言をした。
「え、何それ。牽制って?!」
「亜妃のこと可愛いとか好きとか言ってるやつ見かけたら、片っ端から仲良くなって、俺が亜妃のこと好きってアピールしまくって諦めさせる!って戦法。笑」
なるほど……そうだったのか。
考えてみれば、柊は学年や部活に関わらず、幅広い男子たちと仲が良かった。
それってもしかして……そうゆうこと……?
「ごめん、気持ち悪いよな。引いた……?どんだけ亜妃のこと好きなんだって、自分でも引いてるわ。笑」
柊は気まずそうに視線を天井に向ける。
「ま、天王寺は俺が手を打つ前に豪速球放ってたからな。さすがに牽制できず。笑」
身体を起こして私を見つめ、髪をそっと耳に掛けると……柊は寂しそうに言った。
「好きすぎてごめんな?」
やさしく頬に触れる唇に、胸がじんわり熱くなる。
こんなに真っ直ぐで優しくて素敵な人に、こんなに愛されていて良いのだろうか……?
ふと、そんな不安が襲ってくるほど、柊の愛が伝わって、心から幸せを感じた。
「なんで謝るの?嬉しいよ。私も大好きすぎてごめんね?」
私も柊の胸元に……ちゅっとキスをする。
「うっ…、今のキュンと来た……死にそう。笑」
「もー……、ばか」
そうして親の帰宅間際までベッドの上で素肌を寄せ合い、穏やかで幸せな時間を共に過ごしていた──
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