2-4.初夜の約束




 遠慮がちに頬や耳、首……と順番に唇を触れながら、柊はゆっくりと私をベッドに押し倒す。



「口……開けて?」



 言われるがまま、小さく口を開ける私。


 そこから柊の舌がゆっくりと差し込まれ不器用に絡めてくる。私もその動きに必死で応えた。



 ドキドキとうるさく騒ぐ心臓の音を感じながら、しばらく深いキスを続けていると──





 柊の右手がゆっくりと私の胸元へ移動し、服の上から膨らみを控えめに触った。


 だんだんとその動きを強めると、その手を今度は少しずつ下に下げ、服の裾をゆっくりと捲り、直に腰の辺りの肌に触れる。


 さわさわと素肌の感触を確かめるように、ゆっくりその手を上へと進める柊。


 目的地に到達すると、ブラの上から丸く覆い、そっと優しく揉んだ。


 そのとき……柊の手が小刻みに震えているのが分かった。




 しばらくブラの上からもどかしそうに触った後、柊は私の背中に手を回し、ブラのホックを外そうとする。


 けれど、何度かトライするもなかなか上手く外れず……柊は一旦キスを止め、私の首元に顔をうずめた。




「だっせー……。俺、死ぬほど緊張してるわ。笑」


 恥ずかしそうに呟く柊。


 その姿があまりにも愛おしくて、胸の奥がキュンキュンと音を立てた。



 私は自分で背中に手を回しホックを外すと、下着をズラす。


「大丈夫。いいよ、触って?」


 柊の手を取り、胸元へと誘導した。


 柊は少し目を見開いた後、安心したような顔をして、次のステップへと進んだ──





──柊との初めての時間は、終始やさしさを感じるものだった。


 「大丈夫?」と何度も気にかけてくれて、深い深い愛を感じられる時間だった。


 お互いもちろん初めて同士だったけれど、大好きな人と裸で抱き合い、素肌と体温を感じ合えることが、こんなにも幸せなことなんだと知った。


「亜妃、大好き」

「私も、大好き」


 愛おしそうに私を見つめ、そう伝えてくれる柊に、私は安心して身を委ねることができた。


 最初は痛みを感じたけれど、気持ち良さそうに揺れながら顔を歪めている柊の表情が、あまりにも妖艶で美しくて。


 行為の痛みよりも、初めて見る柊の男らしい表情に釘付けになり……


 ときどき漏れ聞こえる彼の甘美な吐息に、ゾクゾクと身体の奥から何かが湧き上がってくる感覚に陥った。



 私たちの初めては、お揃いの香りと愛に包まれた…

 最高に幸せな時間だった──





──行為後、柊に腕枕をされながら、トクトクと音を立てる彼の胸に耳を寄せる。


 幸せを噛み締めていると……


「……やべーわ、俺」

「……ん?」


 私は見上げて彼の横顔を見つめる。


「幸せすぎておかしくなりそー」


 柊は私の方を見下ろして、目が合うと、頭に優しく

キスしてくれた。


「私もすっごい幸せだよ」


 素直に気持ちを言葉にする。

 汗でしっとりした柊の素肌にそっと手を添えた。



「俺さ、今日一日中授業どころじゃなかったわ…」

「え?」

「夜のこと想像しちゃってさ。危うく勃ちそうだったから、考えねーように意識逸らすの必死だった。笑」

「ふふっ、もー……ばか。笑」


 そっか……。


 授業中、全然気にしてないのかと思っていたけど、柊も同じ気持ちだったんだね。


 恥ずかしくて呆れたふりをしてしまったけれど。


 通じ合えてたようで、本当はすごく嬉しかった──




 並んで寝ころび天井を見つめる。

 柊の部屋の天井……こんな色してたんだ。


 下半身にじんわりと痛みを感じながら、事後のほわほわした気分に浸っていると……柊の手が私の頬に触れ、私の顔を横に向かされる。


「ずっと一緒な?」

「うん」

「いつか絶対、結婚しよ」


 柊からの“結婚”という言葉にビックリすると同時に……嬉しさが込み上げる。


「これから一生、他の奴にはこの姿見せんなよ?」

「……この姿って?」

「とろんとしたエッチな顔してるところ」

「もー、やめてよ……。恥ずかしい……」


 柊の胸元をペチペチと叩くと、笑いながら柊は身体を起こして……私の上に再び跨る。




「俺がお前の最初で最後の男な」




 柊は強い眼差しで……

 でもどこか不安そうに、そう言った。


「………約束な?」

「うん、約束する」


 柊の不安を少しでも取り除いてあげたくて、心を込めてそう答えた。

 柊は嬉しそうに頬を緩め、何度も唇にやさしくキスしてくれた。




「………てかさ?」

「ん?」


 柊は再び私の胸元に手を這わせ、膨らみを大きな掌で包み込む。


「お前って意外と胸あんのな。笑」

「もー…、やめてよ……ばか。笑」



 こうして二人一緒に、大人の階段を登り始めた──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る