15話
話し合いの後、那緒は気を失うように眠りについた。宇久森のくり出す奇想天外な攻撃に脳みそがショートしたことも要因ではあったが、主は怪我による体力の低下だ。
那緒は重症患者だ。
いくら元気に会話していようと、どんなに無駄に思考を回せようとも、痛み止めの効力が切れれば床をのたうち回るほどの痛みに苦しむし、トイレに立つだけで息が上がる。
はっきり言おう限界だった。
痛み止めは万能ではない。飲んだからといって痛みの全てを消し去ってくれるわけではない。くるくると頭を回すことで痛みから目を背けることには成功していたが、遂に限界がきて熱を出した。
39.3度。体温計に表示される数字を見て頭を抱えたのは宇久森だった。顔色は真っ青を通り越して白粉でも塗ったように白かった。
ゲラゲラ、コンコン。
那緒が笑う。笑ってはゲホゲホっと咳き込んでひゅーとか細い息をして、その度に黒い真珠は歪んだ。
ざまあない。
散々振り回すからバチが当たったのだ。
いや、被害を被っていてるのは那緒だけなのだけれども。それでもいい気味と笑う。
「うっかりしていました。那緒さんがあまりにも元気に振る舞うものですから」
ぺりぺりと薄いビニールを剥がしながら宇久森が呟く。おでこを冷やす青い固いジェル状のそれが顔を出して、すぐに那緒の額へと貼り付けられる。茹だるような頭が冷んやりとして気持ちがいい。
「解熱剤を飲んだので少しすれば熱は下がりますが、今日は一日大人しくしていて下さいね」
「ゲホッ」
お前もな、と意味を込めて咳をする。
困ったように眉を下げた宇久森は、汗ばんだ額に張り付いた髪を払うと名残惜しそうに部屋から出て行った。
「けほっ、けほけほ」
ほっと息を吐く。
そのまま、気絶する様に眠りに落ちた。
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