第17話 穢されたもの

「紗夜は何も知らないよ」


頭上から降ってきた優しい父の声。


「この計画は全て、俺と沙那恵が2人で作り上げたものだ。愚かなお前達を救ってやろうとな」


優しかった父は変わってしまった。


「父さん·····それで貴方は幸せですか?」


涙は止まり怒りを通り越し父を哀れだと可哀想な人だと嘆く。


「可哀想な人」


「可哀想?俺が?」


父はそんな華菜枝を嘲笑い余裕たっぷりに笑うと手を振り下ろし華菜枝の頬を強く叩いた。


バチィンッ

身体が揺らぎ倒れ込む。


「何を言っても無駄だというに、まだお前は自分の存在理由を分からないのか!お前はな子さえ産めばいいんだよ!!」


華菜枝の身体の上に馬乗りになった父は華菜枝の細い首に手を掛け強く締め上げていく。


ひゅっと喉の奥で音がした――――。


「っ·····くっ·····かはっ·····と·····さん·····」


ボヤける視界に薄れゆく意識。


首から手が離され大量の空気が気管を責め激しく咳き込む。


「うっ·····げほげほげほっ」


父の表情は醜く歪んでいて、おぞましかった。


「怖がる必要はない。父さんが優しく華菜枝を大人にしてあげるからね」


床に激しく打ち付けられた身体と首を強く締め付けられた苦しさもあり華菜枝は抵抗すら気力も、抗う力もなく、されるがまま犯された――――。


衣服を無理やり破かれ強引に唇を塞がれる。父から繰り返される口付けに何度も顔を背けるも、男に力に叶うはずもなく救いを求めて伸ばされた手は父に阻まれ行き場をなくす。


父の手が華菜枝の肌を滑り執拗にイヤらしく這っていく――――おぞましく気色悪い感触が身体を支配し吐き気がした。


ギュッと強く目を瞑り、この悪夢が過ぎ去ることをひたすら堪えていると、いきなり両足を大きく開かされ父の身体が中心に入ってきた。


「っ·····い·····いやーーーーーーーーーっ」


次の瞬間、強い痛みが下腹を襲いパチンッと何がが破け裂けた音がした。


大人の男の大きな熱の塊を、まだ幼い少女が受け止めるには余りに辛く苦しいものだった。


快楽とは程遠い恐怖と痛みに支配された世界·····目の前が真っ暗になった。


その地獄のような苦しみは数時間にも及び、華菜枝は何度も何度も·····何度も何度も――――父から辱めを受け続けた。


地獄のような苦しみ…大好きだった父からの裏切り行為に悲しみと怒りと切なさが入り交じり言い様のない感情が華菜枝の中を埋めつくし世界が黒に染った。


その日を境に、父との関係は続いた。母が出掛けた日は必ず華菜枝を呼び寄せ淫ら行為に時間を費やす。身体を犯される度に華菜枝は自分とは別の人格を、何時しか心の中で作り出すようになっていった。今こうして父と行為をしているのは自分とは別人で、本当の自分は今、幸せなのだと…愛する人と肌を重ねているのだと思うようになった。


そう思うことで少しだけ心の傷も体の傷癒え苦しみから解放された気がしたから。


こんなこと許された行為なはずかない…それでも、この世は残酷で弱い自分は逆らうことも抗うこと出来ない…。母にだけは絶対に知られてはならない――――。この

事実が知られては大好きな母を苦しめることになる。それだけは、どうしても避けたかった。


――――必死に理性を保とうと、この行いを正当化しようと心を奮い立たせる。


「私が母を守らなければ·····」


自分は結月家の一員としてお努めに励んでいるのだ。早く子を宿し位を上げ母に親孝行してあげる為に私は行為は正しく間違ってなどいない――――。


母の幸せの為だけを·····それだけを願った。――――願い続けていた。








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