第3話 出逢い

あの事件から時は過ぎ数年後。少女は20歳を迎えた。―――名は結月詩織ユヅキシオリそして、その傍らに当時の面影を若干、残した少年。名は高藤蒼介タカトウソウスケ蒼介は今年で17歳になる。2人は同じ時間トキを生き、そして共に罪を背負い生きてきた。あの日、あの時、交わした約束は2人にとって忘れてはならない永遠の誓いなのだ。自分の祖父母を殺した、蒼介を憎むことも恐れることもなく、そればかりか彼を守り、支え共に偽装し2人の死を隠蔽した。


共に村を出た2人は、今までどのように生きて来たのだろうか?―――この残酷で無情な世界で、唯一の救いを求め、抗い、もがき、互いを信じ求め共に背負った罪の意識に苛まれながら。そんな2人の世界を灯す唯一無二の灯火は、優しく厳しい愛に満ち溢れた強い人だった。



ルーロン皆は彼をそう呼ぶ。本名は李 琉羽橙リ ルーチェンルーロンの名は、代々受け継がれてきた名だと聞かされていた。


詩織と蒼介は、彼の描く理想に、共感し今、生活を共にしてる。台湾で生まれ、過酷な環境で育ち、悲惨な境遇に苛まれながら幾度となく大切な仲間を、家族と呼べる存在を失いながら、生きながらえてきた。そんなルーロンは2人と出逢った瞬間、自分と似た何かを感じた。


そして彼らを自分の後継者として育てよう。彼らなら自らの人生を切り開いていく力があると確信した。彼らが独り立ちする、その日まで無事に育て上げようと強く心に誓ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る