第2話 散りゆく牡丹

美しく鋭い毒の華は、みるみるうちに心へ侵食し、小さなタネが芽を出すまで時間は、そう長くはかからなかった。



秋から冬へと時が移りすぎる、ほんの僅かな時間·····。突然、闇は訪れた。


夜の深い闇が切り裂く魔の時刻―――。


深い深い闇夜の間に流れる、独特の香りが部屋一面に立ち込め、そこで眠る少女は深く呼吸するも息が詰り上手く空気を取り込めず、苦しさのあまり一瞬の間に開いた瞳の奥に映っしだした光景は、息を飲むほど紅く·····深紅に染り、床一面に、無惨にも散り落ちた牡丹の花のような現実味のない光景が無造作に広がっていた。



―――その刹那、鼻をつく焦げた匂いに立ち込める煙。喉の奥が悲鳴を上げた。


夕刻まで笑い、語り合っていた祖父母の無惨に姿――――。断末魔の叫びが木霊する。


その傍らに、血飛沫を浴び生ける屍と成り果てた少年の、あまりに滑稽な姿。見るに耐え難い少年の姿に、思わず手を差し伸べる少女。少年は、少女の手を強く掴み、深く呼吸をすると、少女を瞳を見つめた。


その瞳に映る、血みどろの自分の顔。少女は凛とし美しい立ち姿で恐れることなく真っ直ぐ少年の見つめ返していた。少年の瞳に生気が戻り、炎に包まれた屍に言葉を投げ掛けた。


【死を持って償え、それがお前達が背負った罪への代償だ】


強く握り返された少年の手は氷のように冷たく、そして小さく震えていた――――。




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