第33話 五日目 夜3

「・・・」

ぼーっとする

「・・・・・・」

視界がまだぼやけているが

「・・・・・はははははははははははははははははははははははは!!!」

あの耳障りな笑い声で意識が少しづつはっきりする

フラ

足元がなんか柔らかいでも

フラフラ・・・グ!!

足に力を入れる

その様子をみて

「あは!あはははは!!!あははははははははははははははははははははははは!!!!」

はっきりと挑発するように笑い声をあげる

むかつく

でもそんなことにかまってられない。

俺にはやらないといけないことがある・・・

「はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

続く笑い声を背に違う部屋に向かう

そして

藤井さんが最後においたゴミ袋を探す

ガサガサ

ガサガサガサ!!

激しく音をたててゴミを漁る

「あはは!!あはははははは!!!あはははははははははははははははははははははは!!!」

背後では声を高らかにうるさいぐらいに響く笑い声

正直邪魔でうるさくてイラついた。

でもそんなことは今は些細な事

今は・・・

今は藤井さんが俺に送ったメッセージ・・・

それをただ

ただこいつにぶつけるんだ・・・

ガサガサ

ガサガサガサガサ・・・

「あ・・・」

あった。

俺をそれを拾い上げて見つめて

藤井さんが見ていた裏にも目を通した。

そして言いたいことをいうために

しつこく笑い続けるその声に向かい歩く

タッタッタ・・・フラ・・・ッタッタッタ・・・

足元がおぼつかない

でも

それでも

俺は向かった

「あはは!!あはははははははははは!!!なにやってんだ!?あははははははははは!!」

そんな俺をみて笑い続けている

そいつの前に俺は立ち

まっすぐそいつの顔をみた

見引かれて

瞳孔がひらかれて

血走った

そんな目を俺は正面から見た。

「あははは!!あははははははははははははははははははははははははは!!!」

それでもこいつは笑うことをやめない

むしろ

俺の目を見据えてもなお

笑っていた。

まるで馬鹿にしたように・・・

まるで見下したように・・・・

誰であろうと憎しみには逆らえない

その憎しみに心を染めてここにきて

オイルをまいて

燃やしてなくそうとした俺を馬鹿にして

笑ってる。

認めてやる。

そうやって俺はここに来た。

憎かった。

俺の生活

日常

人生

すべてを壊されたと思って激高した。

復讐してやりたい。

こんなバカげたことをこれ以上続けたくない。

俺をこんな風にした報いを

目に見えないのなら元凶ごとつぶしてやるって・・・

「あははは!!!!!あはははははははははははははははははははははははははははは!!!」

絶えない笑い声をあげるそいつに

俺はさっきの写真を

バッと目の前にかざした

「あははははははは!!!・・・・・は?」

そいつはその写真をみて首を傾げた

「おまえとおまえのことを裏切ったっていう女の写真だ!」

そいつは顔色を変えた

すべて憎しみにまかせて女の顔を消したっと

思っていたよな・・・

それでいてそれをみせて自分自身を挑発してきたっと

感じて・・・

そいつの顔をみるみる変わる

「おまえ!!!」

狂気じみた笑い声と同じだがその声は明らかに怒りを感じる。

俺に明らかな怒気をぶつける。

心の中でおもった

(やった!!)

なんだか馬鹿にしてきた分

それをある程度仕返ししたような気分だ。

でも

それが目的ではない。

その声に俺は怯むことなく続けた。

「これがお前を裏切った女か?裏切ったっていう女か!?」

見開いた目がまだ開く

これ以上は目玉が落ちるのではないかというくらいだ。

「この女はお前を裏切ったかもしれない・・・お前のもとから去ったかもしれない・・・お前の日常を・・・変えたかもしれない・・・」

「しれないじゃない!!!この女は俺を裏切った!!!俺から日常を奪った!!!!」

怒りはとどまらない。

声を張り上げて俺の声をかき消す。

「でも!!」

その声をさらにかき消すように俺が言い放つ

「この女のせいにして前を向かなかったのはおまえだ!!!新しい日常を神頼みにして叶わなかったって日々を憎しみに染めたのはお前だ!!!!!」

「・・・・・は?」

その男は首をかしげてまたおかしな声を上げる

そしてどうしたのか

首がカクカクとかくつかせてひねって見せる

「は?は?は?・・・・・・」

その間、男はずっと声をだす

その様子は本来恐ろしいものだろうが

今の俺には滑稽に映った

「おまえは自分で自分の未来を消した!!おまえは自分で自分の過去を呪った!!そこにはたしかにあったはずの幸せを!!!おまえは自分で捨てたんだ!!」

カクカク・・・

カクカク・・・・・

声は無くなり

男の首はまるでストップモーションのように

奇妙に動く

その男の前に写真の裏を見せた

「これがそうだろ!?ふたりは確かに幸せがあったはずだろ!?」

そこには

『私とあなた、ずっといっしょ!』

女性が書いたのであろう

文字は丸みをおびて

そして時間があったであろうにしっかりと書き込まれていた

「あんたらはこの文ようにはいかなかった・・・それは残念だし悲しかっただろよ!!でもさ!この時はお互いに本気で思いあってただろ!?時間が二人を割いたとしてもこの時は本物の時間だろ!?」

カク

その首はまた傾げたようになって止まった。

「それにさ・・・この時間に囚われて未来に歩みだせたはずなのに前を見ないで一歩を踏み出さなかった・・・それはおまえだろ?」

「・・・」

男はそのままの姿で手を前に出す

写真を取ろうと手を伸ばすが

その手は空をきる。

「あ・・・あ・・・あ・・・」

何かを言いたそうにしているが

俺は最後に言いたかった

「自分勝手にあきらめた人間が!!人様を巻き込むんじゃね!!!てめぇの生き方!てめぇの日常!!それをあきらめたやつにほかの人の人生をめちゃくちゃにする理由なんてこの世にはない!!!!」

言い切った・・・

すると緊張の糸はきれて力が抜けた

その反動で膝から崩れを落ちる

ゴン!!!

その反動で頭を打った・・・

なんか頭があたたかい・・・

それに何かが流れているそんな気がする・・・

その時手放した写真がハラリと舞い落ちてきた

「・・・・子・・・・」

男がなにか言っていたそんな気がした

窓の外が赤く点滅している

ドンドンドン!!!!

ドンドンドン!!!!

何かが扉を叩いている・・・

でも

「もう・・・いい・・・や・・・・・」

床が冷たい。

目を閉じた。

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