第3話 一日目
今日もいつもの通り仕事へ向かう
あるアパートの一室
なかなか年季がはいった建物で
なんとなくノスタルジーというのだろうか?
そんなものが感じられる気がする
「さてと、今日もはじめますか」
なんとなくつぶやき
扉の前に立つ
そして合掌をして黙とうをする
(どうか成仏なさってください)
心の中で思い合掌していた手をほどく
「よし!」
それから俺は支度を始める
防護服を着用して
マスクそして手袋
いつもの格好をして預かった鍵でドアを開ける
ガチャ
キー・・・・
外観同様扉もすこし音を立てる程の古さ
目の前はほの暗い玄関
靴やポスティングされたチラシ
あとたくさんの段ボール・・・
よくある光景多分中はもっと雑然としているのだろう
そう考えるのはたやすいお出迎えだった
「・・・」
チラシなどを乗り越え全体を見るためにリビングに入る
そのためには扉前の物をすこし寄せてからの作業になる
雑に物を寄せながら思うのは
この状態でよく生活できていたなということ
まぁ、最終的に生活できなかったから
なんというかお亡くなりになったのだが・・・
それでもこの状態で何日かまたは何か月か過ごしていた
そうでなければこうはならない量が積んである
警察や管理人の方が入ったであろうのに
この状態なのだから相当である
そうやって扉前を片付けて中を覗くと
そこはさらにすごかった
「うっ」
匂いがすごかった
腐敗の匂いと生活の匂いそしてヤニの匂い
長年積み重なった生活臭に
放置された台所の物が腐り匂いを発し
そして人体が腐ったことにより匂いは強さを増した
そんな感じのする空間があった
中の様子はゴミや衣服、電化製品やたばこの吸い殻まで・・・
いろいろなものが床に散乱し積み重なっている
なんというか
【汚い】というかそれを超えて
【謎】である
この状態でよくこの事態に陥るまで生きていた
というのが感想として浮かんだ
つまりこの現場はかなり重い案件だと思う
2LDKというやつか広さはないが部屋は区切られ
そこにゴミが山積されているので部屋の大きさより
小さく感じる
そんな感想を抱くながら
ざっと室内を確認して
作業に移ろうとしたが・・・
「なんだこの部屋?」
最後に確認した部屋には神棚
そしてよく宗教などでみるような大きな祭壇
そこにはいろいろな紙が貼ってあって
神様みたいな姿をしたものや念仏のような言葉が書かれた
そのようなものがたくさん張ってある
そしてここは比較的きれいであるが
畳のうえにたくさんのメモ用紙
一つ拾って目を通す
そこには
『どうしてわたしだけ』
や
『なぜなぜなぜなぜなぜ』
という殴り書き
なんとなくぞっとする・・・
「ここにいた人はなにか宗教でもやっていたのかな?」
神棚や仏壇そして特定の宗教の本など
その人によってやることは自由なので
それ自体は珍しいことではない
現になんどか大量の神棚を祭っていた
そんなお宅も清掃したことがあった
しかし
このように本人であろう言葉が書いてある
紙が散らばってるのは
さすがにはじめてだった
「とにかく片付けるか・・・」
何となく重い気持ちを持ち直し作業にかかる
まずは大きなリビングのゴミをさらっていく
表面の弁当の箱やペットボトル
生活で消費していくモノたちがそこらにある
それを一心に拾っては入れ拾っては入れ
いつもの作業をしていく
消耗品はわりかしプラ素材が多いからか
見た目より重量はなく数分もすれば
中層から床あたりを見れる
そこに写真が落ちていた
こういう故人の思い出などは確保するケースもあるが
今回はすべて捨てていいとのことなので
そのまま捨てようとしたが
何となく気になり手に取った写真を少し見る
そこには古い感じの雰囲気がある光景
そして二人の人
一人は男性
そしてもう一人は女性
しかし、女性の顔はポールペンのようなもので
つぶされていた
「うわ・・・・」
闇を感じる写真に気持ちが引く
さっきの部屋の感じもあり尚更である
「・・・うん、見なかったことにして・・・」
そういってゴミ袋に入れる
こんな物はホラー映画でしかないと思っていた
「さぁさぁ、続きをしますか」
なんとなく声色明るく自分に声をかける
しかし
「マジか・・・」
ゴミを掘るとそこには写真がバラバラと
しかもそのどれもが写真が損傷している
そしてそのどれもが女性であろう方が
なんらかの形で消されている
「・・・」
言葉を失う
あれだろうか?
ここの方が男性で
この女性と・・・別れた?
しかも男性の思ったような別れではなかった?
みたいなことなのか・・・
どうにしろ不気味でしかない
すこし気分が悪くなってきたので
外に出て少し休憩することにした
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