第2話 仕事風景
雑然とした部屋
そして独特と言うには強すぎる
鼻につく匂い
今日は部屋は孤独死した方の部屋である
孤独死というだけあり
発見が遅れてたいていは腐敗して
体が溶けてしまった状態で見つかる
体は形を保っているのは生きているから
保全機能を失った体は水分の多い物となり
血液などの体液が外へと流れ出る
それはその場所に最後の遺言のように
床に形を残していく・・・
今回は布団の上と言っても
布団があったであろう場所に体液が残り
量が多かったのか床にも跡が残った状態であった
物に足をとられながらも
その最後の場所へとむけてゴミを袋へと詰めていく
「・・・」
終始無言で片付けをしていく
この部屋の状態は俗にいう
【セルフネグレクト】という状態で
自らの生活をやめてしまった・・・
片付けや食事しいては排泄に至るまで
すべてを放棄して生きている状態・・・らしい
その医学的なところはよくわかってない
ただこの部屋の状態で人が生きていたということに
最初のころは驚いた
だが慣れとは怖いもので今ではなんとも思わない
はじめのころは
「わっ!!」
とか
「おー・・・」
とか
感情が言葉に漏れてしまうような感じだったが
今では言葉もなく
ただの作業とかしているのだから・・・
黙々と作業をつづけると
部屋は幾分かきれいになる
と言っても
俗にきれいという状態からはまだ遠いが・・・
「ふ~」
ここでやっと一息がつけた
思うことは沢山ある・・・
けどそれよりも今は目の前の仕事に集中する
なんといってもここが
この人の最後の地で遺体があった場所だから・・・
ちなみにこの【特殊清掃】は遺体を処理するわけではない
あくまでそのあとの状態を掃除するので
遺体を直接触るわけではない
しかし・・・
「やっぱりな・・・」
先ほども言ったように
遺体は腐敗すれば液体に近く
皮膚などは溶け落ちている
なので頭皮も溶け落ち
警察もすべてを遺体として回収は出来ず
「結構あるな・・・髪の毛・・・」
布団の上には髪の毛が残っている
そこにある人だったモノがあった痕跡
これはいくら見てもあまり慣れることはない
仕事とはいえ民間の人間がなかなか見ることがない光景
無理な人は無理だろう
けどなぜか俺はこの光景を見ても
ある程度心を決めることができて
仕事と割り切り作業をすることができた
今回もそうだ
「髪の毛・・・物の上でよかったわ~」
そんな感想を漏らしながら
布を痕跡を内側にしながらクルクルと巻き
そのまま袋に入れる
さっきも言ったようになれたわけではない
だからこの作業をするときはなぜか声が出る
でもこの作業を終えると
後は普通の片付けと同じ
ゴミを袋に詰めていく
こうして片付けは終わる
「あとは・・・」
物がなくなると残るのは
この独特な匂いと痕跡だ
消臭にはいろいろな薬剤を使う
有名なところだと次亜塩素酸だろうか・・・
昨今の状況でいろいろ有名になった薬剤
除菌に効果的な薬剤だが・・・
これで消臭?と思うだろか
けど、理にかなっているというか
よく匂いの原因は菌という話がある
詳しい仕組みは俺自身はそこまでわかってないが
菌がなんやらかんやらで匂いがでる
だから菌をシバク!!!
的な事らしい・・・
あと人間は結構菌をもっている
それは時に感染になるほどなので
それを防ぐためにも薬剤で部屋をきれいにするのだ
シュー――シュー―――
噴霧器で部屋にくまなく撒く
匂いはこの瞬間は塩素の匂いで満たされる
何となくクリーンな気がする
「フンフンフーン♪」
気分をあげていくために少し陽気に撒く
不謹慎かもしれないだが
真摯に向き合っていたら気分が重い
もちろんこの場で人が亡くなったことは忘れてない
むしろ痕跡はわかりやすくらいだ
だが慣れとは怖いもので仕事になってしまったら
どうやって楽しく効率よくなんて
【特殊清掃】という仕事性に思いが行ってしまう
そんなこんなで消臭剤を撒き
次は痕跡を消すのだが・・・
「う~ん・・・これ、下に染みてない?」
体液の量が多いと床の表面を通過して
下地に到達してることがある
この痕跡消しだが
実は結構大切
それは痕跡があると気味が悪い・・・
だけではなくさっきほども言った
菌が残ってしまうのだ
次亜塩素酸はあくまで表面的なもの
匂いは跡として残る痕跡より
匂いとして残る痕跡の方が正直手ごわいのだ
「・・・会社に連絡しようか・・・」
この奥の方に行ってしまった体液は
薬剤で消えなくもないが
そのまま下地を変える方が効果的な時がある
そうなるともう【清掃】の範疇を超えるので
違う業者に入ってもらうことになる
「もしもし、お疲れ様です。あの今の現場の・・・」
状況を話したところ
建物の管理人と話がつき
違う業者に入ってもらうことに
だが
「いちよう、表面の形が分かる感じは消してもらえるかな?」
「はい、わかりました。では失礼します。」
会社からは痕は消すように言われた
これはやはり人の形や明らかに血痕があると
後の業者の人によってはダメな人がいるから
これもさっきいった
人を選ぶってやつだ
その話がつき痕跡に向き合う
表面的だが消すように薬剤を撒き
血痕などをふき取る
作業用の手袋をしてるとはいえ
遺体の後をさわる・・・
最初のころは多少の抵抗はあった
けど、これも慣れである
いままで一貫として思ってること
それは【作業】なのだ・・・
遺体があったとしても掃除して
遺体があった場所を片付けて
遺体の血痕をふき取って
すべてに【遺体】という言葉が入っているだけ
それを抜けば大まか掃除をしているだけなのだ
そんなこんなで俺ができるのはここまで
人によっていろいろ役割は違う
俺ができることはこんなところでもっとする人もいる
適材適所・・・
そんな言葉がピッタリはまるそんな【仕事】
そういうふうに流れて終わっていく
そして違う現場へとむかうのだった
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