第4話 隣人

カチャ

異界の扉を開ける気分で外に出る

外は部屋の中とは違い

太陽の光がまぶしいくらいだ

「はぁーー」

ため息がでた

今まで何度もやっていたが

このようになんというか

奇妙?

それとも不気味?

言葉にしがたい部屋の様相を見たことはなかった

ホラーが苦手なわけではない

しかし、こう精神にくるものは

なかなか耐え難く感じた

そんな風に外でうなだれると

ガチャ・・・キー・・・バタン

お隣の扉が開き

そしてお隣さんが出てきた

そしてこちらをみて会釈する

それに

「こんにちは」

声を出してお辞儀した

すると

「おつかれさん」

お隣さんは感じのいいおばさんだった

するとそこらに向かってきて

「おにいさん?ここの掃除かい?」

そう言いながら歩いてくる

「あ、はい。もしかしてうるさかったですかね?」

クレームかと思い丁寧に対応する

「いやいや、こういう部屋を掃除するなんてご苦労なことだと思ってね」

そう言って俺の前に立ち止まる

「はー、えー・・・」

言葉を濁していると

「亡くなったでしょ?ここの人?通報したのよ。大家さんからも聞いてるから」

「そうでしたか、はい、今片付けてまして・・・」

どうやらこのおばさんは事情が分かっているようだった

「いや~、参るわよね。いろいろと変な人だったし、いつかはとは思ったけど・・・」

「そうなんですね・・・」

立場上プライバシー保護的な観点から

俺からは多くは話せなかった

それでも

「いやね?何度も大丈夫かと思って大家さんとかに相談してたのよ~」

「なるほど、そうでしたか」

こちらは相槌を打つだけだが

おばさんはどんどん話す

「夜もなんかぶつぶつというか、一人言みたいに、たまに大きい声も・・・あれは病気だね。苦情も入れてたんだけどね。」

こちらから特に聞いてはいないが

ここに住んでいた人のことを話す

「はー、なるほど・・・」

こういうときうまく話を流すことができなく

何となく似た言葉で相槌する

しかしおばさんは話すことをやめず

「さすがにね・・・人が死んだら気味悪いからねぇ、そろそろ引っ越ししようかと・・・」

なんとなくおばさんの話に終わりが見えてきたとき

急におばさんは小声で

「なんかさ、気味悪いのもあるけど、ここの部屋から声するのよね・・・」

「え?」

急なおばさんの話に驚き声がでた

「毎日毎日・・・・」

まるで普通のことのように話す

「・・・」

何をいっていいかわからず黙ってしまう

「いや、気にしないで!じゃ、がんばってね!おにいさん!」

「あ、はい。ありがとうございます」

そのままどこかへと歩き出すおばさんに

軽くおじきをしてその姿を見送る

気さくに話していたおばさんから突然でた最後の話

そこだけが記憶に強く残る

「声・・・」

再びこの部屋の中に入ることが

すこし嫌になった

それほどおばさんの話と

部屋の状況はなんとなくマッチしていて

そして不気味というか怖かった

「ふー、どうするかな・・・」

何となく浮かない空気と作業という事務的な考え

その合間で揺れてしまうが

今日だけはと心を決めて再び部屋に入る決意を固める

しかし、作業はどんよりと淀んだ心と同じく

あまり進まず

その日耐えきれず上司への人数の補充の電話をして

今日を終えることになった

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