第10話 魔術の核心

俺は、裕福な貴族の家系に生まれた…だが、幼少期に使えた魔法は碌なものがなかった。次期当主の座は弟に奪われて、俺は13才の若さで家を追い出された…自分で家事もして、料理もして、お金も稼いで、そんな毎日を繰り返していた。

15になった頃、気になる子が出来た。当時俺が時々働かせてもらっていた肉屋の娘だ。それはもう、美人の中の美人だった。

ある日、その子が包丁を落としてしまい、膝を切ってしまったのを見た、俺はちょっとした回復魔法を使えたため、すぐに治してあげた、今でもその娘の感謝の言葉を忘れていない。

17になって、俺はその肉屋で頻繁に働くことになった。必然的にその娘とも仲良くなった。

ある日、いつも通り肉屋に出かけると、近所の人たちに囲まれた。

「お前だな!?あの娘を誘拐したってのは!!」

何を言っているのかが、よく、分からなかった。

「近所のクリスが言っていたぞ?お前が、催眠魔法をかけて無理やり連れて行ったと!!」

「だから、最近この店に通っていたんだな?」

俺はクリスの名前が出てきた瞬間に全てを悟った。クリスはあの娘に好意を持っていた。

「妬んでたんだな…クリス…お前は、」

4年前、俺はなぜ家を追い出されたか…碌な魔法しか使えない。って理由だけじゃない。13になると“素質“の検査がされる。“勇者“やら“冒険者“のどの#職業__ジョブ__#に向いているかを検査するものだ。

俺の素質は“魔族の主“すなわち“魔王“だ。親たちは、俺を殺そうとした、だから、俺は逃げてきた。

『クロス・デット』

「やれ!!生捕にしろ『フレイム!!』」


「…魔術が…使えん。」


『ビースト・レトバティス』


「なっ、火の…矢?」


『ドドドドォォォーーーン!!!!』



…俺は1つの街を焼け野原にした。


「いい気分だ。」


俺は17で魔王になった。





『黙って、俺の配下になっていれば良いものを…』


「誰か、そう簡単に配下になるやつがいたか?いねぇだろ?」


『居た。』


「マジで?」


『まぁ、強制服従だがな。』


「そんな、ことだろうと、思ったわ!!」

“身体強化“魔力生成“

『フレイム!!!』


『ビースト・レトバティス・コネック』


「炎矢を一つにまとめたのか…“魔壁“」


『ドドドドォォォーーン!!!』


「け、消し飛ばされた、俺の全力。」


『あと一押しってところだな』


『魔力の核心すら分かっていないお前に…何ができる?』


魔力が尽きることは無い、ただ、圧倒的にあっちの方が攻撃力が高い、俺のカンスト攻撃力より強いって、どうなってんだよ。


「魔力の核心ねぇ。」

じゃあ、まず、それを瞬時に習得するか。

“熟練度増加“

「これの事か?」

熟練度を…ありったけの魔力であげまくったら良いだけの話。

『!?』


『ドッドドドドドドォォーーン!!!!』


「結界の端っこまで…到達したな、俺のストレート一発で。」


『フッ、面白い、ここまで、ダメージを喰らうのh、』


『ズドォォォォーーーンン!!!』


「お話しする暇あったら、戦えよ、」


『……ッ!!』


『フレイム・ブリザード』


『ビースト…』


「おっと、それやるのは、反則、『クロス・デッド』」


『……ッ!!!』


「お前も使えば!?」


『ズズゥゥゥゥゥーーーン!!!』


『ガハッ!!クソッ!…くっ、!!』


「まだ、生きてんのか…」


『お前に…ここで…殺られる訳にはいかない、』


「……」


『転移』


この場合…一件落着なのか?


「お前、魔術、今使えないんだぞ?」


『……貴様ぁ!!!』


「俺悪くないだろ…『ボルタイル』」


『ガッ…ハッ…』

簡易な電流を流す魔法だが、俺が使うと威力が高い。


「…一件落着。」


遅いよ、色々。

…結界が解除されない。

「違う奴が張ってるのか。」


「お迎えに上がりました#主__あるじ__#。」


(!?)

気づけなかった…気配の消し方がうますぎる。


『遅いじゃないか…待ちくたびれたぞ。』


「申し訳ございません。」


そんな、簡単にはいかないか…





宴会場


「なぁ…こんな華やかな宴会、荒らしたら痛い目見るのは承知の上で来とるんちゃうんかぁ?お前ら。」


「グッ…!!」

(なんてやつだ、我が魔王軍の第二分団を全滅させただと…しかも一人で。)


「せっかく、仕立ててもろた、スーツに汚い血ぃつくやろ?」


「クリーニング代、高いねん。」


「!?…っ、がはっ!!」

(見えな、、かった。)


さて…この数の軍が来とるってことは、、あの気配はやはり魔王か。


「ほんま、めんどくさいなぁ、毎度、毎度。」




『今回はあまり戦う気はなかったんだがな…』


「俺を殺したくせにか?」


『大人しく死んでおけば早く済んだものを…他の奴らもこうだよ、最後まで意地を張る、何がそこまで生きる信念を与えているのか理解ができない、いまだにね。』


「大人しく、殺される奴なんて#この世界__・__#にはいないみたいで何よりだがな。」


『ふんっ、まぁ、そのおかげで最近は退屈はしてないな。』

俺らは忙しいがな、お前のせいで。

「おしゃべりは終わりだよ、魔王。」


『安心しろ、これ以上喋るつもりも、#ここにいるつもりもない__・__#。』


「……?」


『転移』


「っ……」



「…せめて、結界解除してから帰れよな。」

俺はこれから結界を破るために途方もない時間を費やすことになった。




「で、魔王が何をしに来たのかってことが話されたんやけどな?」

疲労回復に勤しみながら俺は特部の拠点で隊長の話を聞いていた。

「それがな…国務官関係者の中に協力者がいるんじゃないかっていう結論に至ったんや。」

あの事件の後に開かれた「会議襲撃事件・事後調査委員会」といわれるものが開かれた。

それに出席した隊長が今、これからの俺らの方針について話している。


「なぁ、それって本当に俺らでやらないといけないやつなの?」

キリトが不服そうに呟いた。

「どういうことや?」

「俺らが扱うには規模が大きすぎるだろ、流石に。」

「いや、こういう仕事を扱うために集められたんやからな?俺ら」

「そういえば、そうだったな。」

謎の納得を得たキリトは自分の部屋に戻っていった。


「要するに俺らは、これから激化するであろう、魔王軍との戦いに備えておけばいいのだな?」

「そう言うことや、ソウマ。」


「俺らの圧倒的戦力見せたろか。」


「ん?誰にだ?」


「魔王軍討伐第七拠点に出向や。」


魔王軍討伐第七拠点…

本格的に交戦開始ってわけか…


「あぁ、そうやキョクチ、お前に言っておく事があるんやけどな…」


「キリトとソウマって転生者やねん。」


え…?転生者?

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