第50話 決着の先に……
「これで終わりだ!!」
誾千代は自分のできる最大量の雷を政宗の脳に直接叩き込んだ。
当然、腕をつかんでいる左手からは政宗の体に雷を流し込む。
誾千代自信もダメージを負いかねない、あまりに強大な雷、政宗は叫び声を上げながら苦しみ、誾千代も痛みに耐える。
二人の絶叫が入り混じり、彼女の体が限界に達すると雷の放出は止まる。
政宗の邪眼は消え、それと同時に後ろへとゆっくり倒れ、一緒に刀が誾千代の体からずるりと抜ける。その際に刀が彼女の内臓を傷つけ誾千代は激痛で意識が消えそうになる。
彼女の体ももう限界、全身が悲鳴をあげ、早く休めと訴えるように誾千代へ容赦ない激痛を送る。しかしまだ政宗は息がある。
政宗はゆっくりと起き上がりたち膝の状態になるとそこで動きを止める。限界なのは政宗も同じ、彼もこれ以上動けないのだ。
トドメをさすまでは倒れられない。
この戦いは自分の手で終わらせなければならない、誾千代は全身に言い聞かせる、これが最後だと、この一振りで休むから、だから今一度動いてくれと。
そしてゆっくり、本当にゆっくりではあるが誾千代の両腕は腰の刀を抜き、上にあげる。
あとはこの刀を振り下ろせば全てが終わる。誾千代は全ての意識を腕に集中させ、刀を振り下ろした。
肉を斬る確かな手応え、だがその刃は政宗にはとどいていない、彼女が斬ったのはとっさに二人の間に割って入った水樹の背中だった。いくらスレイヴといえどあれほどの限界状態で放った攻撃では威力が足りず、水樹は背中から血を流しているが致命傷にはなっていないようだ。
もう駄目だ、今のが残りの力を振り絞った最後の攻撃だったのだ。もう彼女に攻撃するだけの力は残っていない、それでも誾千代は再び意識を集中させ、もう一度刀を持ち上げようとするが刀は上がらない、しかしそれを敵に悟られるのはまずい、時間稼ぎの意味も含め誾千代はかすれた声で水樹に言う。
「き・・・貴様・・・・そこを・・・どけ・・・・でなければ貴様ごと斬り殺すぞ・・・・・」
しかし水樹は涙を流しながらも必死に抵抗する。誾千代の方を向き、両手を広げ立ちふさがる。
「いやです!」
「殺すぞ!」
「殺されてもどきません!!」
そして水樹は極度の痛みと緊張により乱れた呼吸を整えると誾千代に涙声で誾千代に言う。
「お願いです・・・・・私から・・・・・・・政宗くんを取らないで下さい・・・・・・」
「・・・・っ・・・・・」
誾千代の体はそこで限界だった。彼女の意思とは関係なく意識が途切れ、後ろに倒れ、動かなくなる。直人は誾千代に駆け寄ると彼女を抱き上げ、優しく抱きしめると耳元でささやく。
「よくがんばったな・・・・誾千代・・・・」
それだけ言うと直人は駐車場の出口に向かって歩く。
「・・・・トドメを・・・・・ささないのか?」
政宗のかすれる声、それに直人は余裕に満ちた声で言い放つ。
「これは誾千代とお前の戦いだからな、俺が手を出すわけにはいかないよ、もしお前が俺に襲い掛かってきたら話は別だけど、今のお前にそれをするだけの力はないだろ?」
そう言って直人は駐車場を去り、政宗は考える、これは引き分けなのかと、いや、違うだろう、水樹が割って入らなければ自分は死んでいた。誾千代に負け、水樹に助けられたという事実に動揺しながら政宗の体も限界に達し意識を失った。
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