第34話 ライオンハート

「ははははは、やっぱこうでなくちゃあな、あんな静かな場所よりずっといいぜ!」


 その様子を見た直人と誾千代は歯を食い縛り男をにらみつける。

 すると後ろから直人を呼ぶ少女の声がする。直人が振り返るとそこには現代の服を来た義経(よしつね)と並ぶ晶の姿があった。


「晶・・・・なんでここに?」

「なんでって、あたしだって街に買い物ぐらいくるよ、そんなことより、戦うならうちの義経(よしつね)貸すよ」


 それを聞いた直人が理解不能の顔を提示すると義経が晶に困った顔で言う。


「ちょっと待って下さい晶、そんなことしたら彼らに私のことが・・・・」


 男は言う。


「じゃあ始めようぜ、獅子の心を持ちし王、ライオンハートとはこの俺よ!リチャード一世様よ!!」


 無視して直人が・・・・・


「義経、お前よくも晶を無理矢理ロードにしやがったな、誾千代、あいつよりも先に義径を倒すぞ」

「はい」


 リチャードは言い放つ。


「ライオンハーーート!!」


 無視して晶が・・・・・


「ああこれ、いや、あたし実は普通に協力しているだけだから、義経のあれ演技だから」

「ちょっ、晶、何で私の本性暴露(ばくろ)してるんですか!?今までの打ち合わせ覚えてますか!?」

「別にいいじゃん、冷静になってみれば最初から直人と協力関係になればよかったんだよ」

「ちょっと待て俺はそんなの信じないぞ、今の晶の言葉だって義経の鬼道で無理矢理言わされているかもしれないじゃないか!」


「なっ、あなたは私を疑うのか!?・・・まあ疑うか・・・でも晶は嘘を言いません」


 リチャードは叫ぶ。


「獅子・心・王!!」


 無視して直人が・・・・・


「こんな人殺しのことなんか信用できるか!晶こっちにこい、こんなやつすぐに・・・」

「いや、直人、あたしは正気だから大丈夫、それよりもあたし達と組んで戦わない?それでこれからは仲間同士に・・・」

「晶、あなた何か私のロードによからぬ事を考えてないか?」

「そっ・・・そんなことあるわけないでしょ!」

「わ・・・私の冷酷な人間作戦が・・・・」

「とにかく俺は義経を倒すって決め・・・・」


 リチャードの額に青筋が立つ。


「てめえらいい加減にしやがれえええぇぇ!!!」


 リチャードが声を張り上げ叫ぶとちょうど今到着したルイスとジャンヌを含め六人の視線はようやくリチャードに集まり、リチャードは呼吸を整え、意気揚揚(いきようよう)と喋りだす。


「獅子の心を持ちし王、ライオンハートとはこの俺よ!!リチャード一世様よ!!!」


 義経が真剣な面持(おもも)ちで誾千代に問い掛ける。


「誾千代、見たところあなたの体はもうボロボロ、後ろの異人の女性は仲間のようだが彼女に戦闘は無理だろう、とりあえず今は私と組んだほうが得策だと思うのだが、どうだろうか?」


 誾千代は少しの間をおいて。


「ふむ、どうやらそれが一番のようだ、いいだろう、直人、私も彼らとの共闘を提案します。彼女の言うとおり晶が洗脳されているとは思えません」


 直人は義経と晶を交互に見ながら少し考えると晶を見て言う。


「信じていいんだな?」

「あたしが嘘言ったことなんてあるか?」


 少しの沈黙が流れ直人は言う。


「誾千代、義経と一緒にリチャードを倒せ!」

「はい!」


 それを聞くと誾千代と義経はリチャードのほうを向き言い放つ。


「大友家家臣、立花家城主、立花誾千代参る!」

「源家武将、源義経、参る!」

「イングランドの王、リチャード一世に敵はねえ!!」


 リチャードが背中に挿している長剣を抜くと三人は一瞬で間合いを詰め斬りあい始めた。

 戦いが始まり数秒後、晶が言う。


「ていうかルイスも参加者(ロード)だったんだ・・・・・」

「そうですよ」


 邪念のない、さわやかな笑顔でルイスが言った。



 二対一、普通ならば誾千代たちが優勢に見えるが誾千代の体は忠勝とジャンヌとの戦いのせいでまともに戦えるような状態ではない。リチャードの攻撃を防御するのがやっと、時々放つ攻撃は狙った場所には当たらない。


 義経は誾千代との戦いでは見せなかった鬼道の術、主に式神を使いながら戦うが義経の召喚した獣や侍はリチャードの一振りで両断されてしまう。そのうえ忠勝にも迫るほどの重厚な鎧のせいで刀による攻撃がうまくきまらない。


 やがて誾千代と義経はリチャードの巨体から放たれる圧倒的なパワーとリーチに圧倒され、義経は誾千代をかばって二人ともリチャードの攻撃を受け、衝撃で後方へ飛ばされる。


 血を吐き苦しむ誾千代と義経にリチャードが近づき、特に誾千代に対して見下した目つきを浴びせ言う。


「弱えなあ、まあてめえら日本人(サル)じゃこんなとこか、そもそも史上最強を決める戦いに女が参加してる時点でおかしいっつうの」


 その言葉に誾千代はリチャードをにらみつけ怒りを乗せた声で言う。


「・・・・・・するな」

「あぁ?」

「私を女扱いするなと言っているのだ!私は武士だ!!一人の戦士として私は男の道を歩んできた!!そのわたしを・・・」


 ドスン

 リチャードが誾千代の顔を強く蹴り飛ばし、そのまま彼女の背中を何度も踏みつけながら叫ぶ。


「戦士だ?武士だ?てめえ何言ってんだ!!?例えどんなこと言ったっててめえは女だ!その事実は変わらねえ!!そして女は筋力でも体格でも男にゃ勝てねえ、男として生きた!?そんなのてめえの妄想だよ!!」


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