第31話 ジャンヌの頼み
「ルイス・ドラクロワ、参ります!」
ルイスの攻撃は今までに見たことの無い型の剣術だった。
刀よりも重量のある剣の攻撃は一撃一撃が重く、これまでの経験がうまく役立たない。
しかし直人は慌てない、それはルイスも同じはずだからだ、ならばとことん東洋の剣術を見せてやればいい、直人はルイスの攻撃を刀で受けず、日本剣術特有の足さばきでかわし、時には攻撃を受け流し、力の方向を変えてやる。
戦いは直人の優勢、元々、現代人相手ならばまず負けることが無い直人が誾千代(スレイヴ)の特訓を受けているのだ。もはや達人の域を越えた力を持っていてもおかしくは無い。
するとルイスは剣を片手で持ち、突き主体の戦い方に変えた、途端、戦いが互角になる。
「言ったでしょう、フェンシングもやっているって、突きは威力もリーチも剣技最強、よってそれを主体にするフェンシングこそ最強なのですよ」
ルイスの突きがほぼ同時に三発放たれる。直人はその全てをかわし次の攻撃へと繋げる。
剣を片手でレイピアのように扱うのにも驚かされるがなによりもルイスがさきほどから自分と互角の戦いをしていることに直人は驚く。
「やるじゃないか・・・・」
「ええ、あなたも・・・・」
ルイスは不敵な笑みを浮かべる。
誾千代とジャンヌの戦いはジャンヌがやや優勢のまま進んでいる。
誾千代はまだ忠勝に斬られた左腕が本調子ではないのだ。
しかし原因はそれだけではない、誾千代がジャンヌに攻撃しても軽いケガなら徐々に再生してしまうのだ。その速度は誾千代の再生術と同じかそれ以上だ。
「傷が再生している!?」
誾千代の言葉に直人も動揺し、ルイスが答える。
「フフ、直人君も聞いたことがあるでしょう?ジャンヌの奇跡、受けた傷が次の日には完治し、胸に矢が刺さり致命傷を負ったにもかかわらずすぐに目覚め戦った。それが聖女ジャンヌの持つ神の加護の一つ、超再生能力、だから彼女は軽いケガなら戦いの中で治し、どんな重症も一晩寝れば完治する。そして彼女の体は疲労することはなく、死ぬまで全力で動けるのですよ」
直人は舌打ちをし、刀を振り続ける。するとジャンヌの剣が白い光りを帯び始め、その光りは徐々に大きくなり、やがて剣全体を包み込む。
「これが神の力だ!死ね!!誾千代!!」
ジャンヌは叫び、誾千代に斬りかかる。
誾千代の体は忠勝との戦いですでにボロボロだ、力を使えばその肉体にさらなる負担をかけることになるが出さねば誾千代はジャンヌの剣に斬り殺されるだろう。
誾千代は全ての力を解放し、自らの刀を雷と高熱を宿らせた剛刀(ごうとう)へと変え、ジャンヌの剣と打ち合わせる。
あの義経ごとうしろの橋を切り裂くほどの威力を持つそれはジャンヌの剣を弾き返す。
ジャンヌは目を見開き、誾千代の剣を凝視する。
「バカな・・・・・!?」
次の瞬間、ジャンヌ体は鎧ごと左肩から右腹部にかけて切り裂かれる。
傷口から内臓に直接雷(いかずち)を叩き込むそれは傷口を焼き、巨大な傷口にも関わらず出血はほとんどなかった。
ジャンヌの技がよほど強力だったのか、それとも彼女の体が神の力で守られているのか、うしろの塀(へい)にはなんの影響もなく、ジャンヌも生きている。
それでもジャンヌは無言のままに後ろへ倒れ、騎士の象徴である剣も地面に落とす。
「ジャンヌ!!」
ルイスは直人との戦いを放棄し、ジャンヌに駆け寄る。
ルイスは涙を流しながら何度もジャンヌの名を呼び、その姿に誾千代は忠勝に敗れた自分に駆け寄った直人を思い出す。
少しの間をおいたが誾千代は刀を握りなおし、ジャンヌに近づく。
「悪いが、ほおっておけばジャンヌはまた再生する。トドメをさすが死にたくなければ貴様はどけ」
するとルイスは慌てて顔をあげ、直人と誾千代にむけて口を開く。
「待ってくれ!ボク達は君達に頼みがあって来たんだ!ボク達の話を聞いてくれ!!」
ルイスの血を吐き出さんばかりの訴えに直人と誾千代は顔を見合わせ、直人が頷く。
「どういうことか説明してくれないか?」
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