第30話 転校生はジャンヌ・ダルクのパートナー


 直人の家に着くとルイスは珍しそうに家の中を見て回り、最後に茶の間で直人のいれたお茶を飲みながら剣道について話した。


「じゃあ直人君はその剣道っていう剣術のチャンピオンなんだね、ボクも向こうじゃ剣術をやっていたんだ、フェンシングと一緒にね」


 ルイスのまるで邪念の無い、さわやか笑顔で直人と誾千代に話し続ける。


 直人はこの時期の転校生だからと疑ったが、ルイスは敵(ロード)でないと思い始めた頃、ルイスが誾千代に目を向ける。


「でも、誾千代さんて強そうだね、誾千代さんの戦績は?」


 直人は少し動揺しつつも誾千代はまだ大会とかには出たことが無いとその場を誤魔化す。


 するとルイスは、フフ、と笑い言った。


「直人君も立花さんも強くていいなあ、でも・・・・」


 途端にルイスの顔に邪念が生まれる。


「ボクのジャンヌのほうが強いよ・・・・・・」


 直人と誾千代が立ち上がるとルイスが叫ぶ。


「出ろ!!ジャンヌ・ダルク!!」


 ルイスはそう叫ぶと後ろへ跳び、それと同時に直人の家の塀を飛び越え、白い鎧を着た少女が庭に降り立ち、ルイスに剣を投げ渡す。


 ジャンヌは誾千代に負けないぐらいに美しく、金色の髪は着地した時の衝撃でやわらかく揺れ、肌は抜けるように白く、エメラルドのように美しい瞳がこちらを捕らえる。


「立花誾千代、私と勝負だ!!」


 少女の鋭い声に誾千代は熱のこもった声で応える。


「望むところだ!!・・・・直人!!」

「ああ、誾千代、ジャンヌを倒せ!」


 その言葉を聞くと誾千代は自らの名を宣言し、ジャンヌに斬りかかる。


「立花家城主、立花誾千代、参る!」

「フランス軍、ジャンヌ・ダルク、参る!」


 雷神、立花誾千代と聖女、ジャンヌ・ダルクの戦いが始まり、庭が刀と剣がぶつかり合う金属音で満たされると直人が言う。


「まさか、本当に腕輪の持ち主(ロード)だったなんて、ここまで予想が当たると気持ちいいな、しかも相手の家にきていきなり戦闘なんて、今回はわかりやすいことこのうえない」


 ルイスは邪念のこもった笑みのままで右肘を上に曲げ、袖をまくりロードの証(リング)を見せる。


「このほうが手っ取り早いでしょう?」

「その剣、お前も戦うのか?」


「ええ、家臣(スレイヴ)だけ戦わせるよりも主(ロード)と家臣(スレイヴ)の両方が戦えばどちらかが勝てば勝負がつきます。ボクが勝てば必然的にジャンヌも勝ちますから、効率がいいでしょう?さあ、直人君も武器を取ってください、丸腰の相手と戦うのはボクの騎士道に反しますから」


 直人は忠勝との戦いを越え、木刀ではあまりに無力と悟り、普段は竹刀と木刀を入れている袋に三本目の得物をいれていた。


 それは父から譲り受け、どうしても力が必要になったら使うよう言われていた真剣だ。


 直人は布袋からそれを抜き放ち構える。


「これが俺の武器、連夜(れんや)だ」


 直人の手に握られた刀は銀色に光り輝き、その美しさと存在感を示す。

 それを見たルイスは思わず感嘆の声を漏らした。


「・・・・美しい」


 直人はルイスに鋭い視線を突き刺す。


「神弥流剣術二十代目、神弥直人、参る!」


 ルイスは今までの笑みを崩し、鋭い、戦士の顔を浮かばせる。


「ルイス・ドラクロワ、参ります!」

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