第2話 英雄に殺された不良たち


 直人が通っているのは直人の住む多日市(たびし)に設立されている多日中学だが中高一貫性の学校なので何かしらの事情がない限りはそのまますぐ隣にある多日高校へと進学することになる。直人はついこの前、中等部の三年生になったばかりだ。


 学校に着き、窓際の一番後ろにある自分の席に座るといきなり数人の男子と一人の女子が直人に話し掛けてくる。


「なーおちゃん、先週の大会、凄かったねぇ」


 そう言うのは小柄で活発そうなショートヘアーと大きな目を持った女子で、三年生になり、同じクラスになってから、何度か直人が主将を務める剣道部を覗いている。名前は望月忍(もちづきしのぶ)、彼女に続いて男子生徒達も直人の優勝を祝う言葉をかける。


 直人は複雑な顔で彼らとしばらく話していると教室のドアが開き、先生が入室すると生徒達は自分の席に戻る。


 先ほどまで話していた生徒達が周りからいなくなると直人は空を眺めながら耽った。


「・・・・なにが武者修行の旅だ、もうそんな時代は終わった。今の時代、強くてもなん

の役にも立たない、今はまだ門下生も大勢いるけどそれだっていつまで持つか・・・・・」


 直人は自分が幼い頃の事を思い出す。


 当時の自分は地上最強を目指し、父はそんな自分に修行をすれば史上最強の戦士になれるなどと言っていた。


 直人は空に向かって一人つぶやく。


「馬鹿だなぁ、なれるわけないのに・・・・」


 直人は青い空を眺め続けた。





 学校が終わり、直人は下駄箱へ向かって廊下を歩いていた、するとそこへ。


「よっ」


 突然、強い衝撃が直人の後頭部を襲う、驚きうしろを振り向くとそこには忍とはまた違った雰囲気のショートカットの活発そうな女子が立っていた。忍が陽気で明るい活発さに対して彼女のはバリバリのスポーツ少女の活発さだ。


「・・・晶(あきら)か・・・」

「・・・晶か・・・じゃないでしょ、アンタ部活は?」

「ああ、それが、俺の親、今朝から武者修行の旅に出てるから、今日から俺が門下生達に稽古をつけなきゃいけないからしばらく出られないんだ」


 そう言うと直人は肩を落とし大きなため息をついた。


「そうなの?でも剣道部の主将が休んじゃまずいんじゃない?」

「仕方ないだろ、今日だって五時から中学生、六時からは大人の人たちが来るんだから、部活なんてやってる暇ないよ」

「そっか・・・でも・・・」


 晶の拳が直人の顔面に向けて放たれる。直人は左手に持っている布袋の中からすばやく竹刀を抜くと晶の拳を叩き落とそうとする、しかし晶の拳は直人の竹刀をかわして直人の顔面に襲い掛かる、目標を失った竹刀は晶の顔面に向かっている。


 直人は急いで竹刀のスピードを落とし、晶の拳が直人の顔面を襲う。

 直人はひっくり返り、仰向けに倒れてしまう。


「剣道部の主将も、この空手部副将にして、大場空手道場二十代目師範代予定のこのあたしには勝てないみたいね、そんなんで家の剣道場継げるの?」


 晶が勝ち誇った顔で直人を見下ろすが直人はわざと攻撃をくらったことは口にせず。


「痛ってーー、お前、自分のほうが強いの知ってるんだからこういうことはやめろよな」


 と言った。


「・・・・・言い訳しないの?」


 晶はその様子を不満そうに言うが直人は立ち上がり。


「言い訳も何も、晶のほうが俺よりも強いんだから、言い訳のしようがないだろ?」


 直人が軽く微笑みながら言うと晶は不満そうな表情で振り返り、空手部の部室へと歩き、呟いた。


「・・・・・バカみたい」


 その様子を見届けると直人は竹刀を布袋に納めて歩き始める。




 夕日が空を赤く染める帰り道、直人は自分に向けられた気配に気がつく。

 直人は誰もいない橋の下へ行くと振り返り。


「ここなら誰の迷惑にもならないだろ、早く来いよ」


 すると物陰から高校生くらいの男達が現れる。

 乱れた制服に脱色、または染髪された髪、見ただけでわかる、絶対に不良だ。

 その頭の悪そうな不良達の一人が前に出て。


「さすがは神弥(かみや)、いいカンしてるじゃねぇか、でもなぁ、それも今日までだ!二度と竹刀を握れない体にしてやるよ!」


 そう言うと不良達は一斉に鞄から違法改造したモデルガンを取り出し構える。

 次の瞬間、リーダーと思われる男の合図とともに不良達は一斉にモデルガンを乱射する。


「・・・・やれやれ」


 直人は大きなため息と共に布袋から竹刀を抜くと不良達に向かって走り出す。


 直人は見事な体捌きで金属製の弾をかわし、それでもかわしきれない弾は竹刀で叩き落とし、不良達の懐に飛び込むと竹刀を横一直線に振る、その一振りで二人の不良を倒し、次の瞬間には残りの不良達もその場に倒れていた。


「ひぃいいい!!」


 直人は不良達のリーダー一人をわざと残す。そして近くにあった大き目の石を拾うと放り投げ、竹刀を一振りする。それと同時に石は粉々に砕け、地面に落ちる。


 そして普段の優しそうな目を鋭い、戦士の眼に変え、不良を見下ろし、静かに、重い声で言う。


「二度とくるな」

「はいいぃ!!すいませんでしたぁーー!!!」


 不良は仲間とモデルガン、それに鞄を置いて全速力で逃げ出した。

 直人がため息をつき、うしろを振り返るとそこには別の不良グループが立っている。


 彼らは先ほどの戦いを見ていなかったのかリーダー格の男が直人は今の戦いで消耗しているとかその証拠に一人逃がしたなどと言い、手下達もそれに応えるように歓声を上げる。


 直人が呆れ、もう一度大きなため息をつくとその不良達はさきほどの不良達とは対照的に鎌や木刀、パイプや鎖などを取り出し、構えるとこちらに向かって走ってくる。


「何年前の不良だ、それに改造モデルガンの弾道を読んでかわせる俺にそんなの当たるわけがないだろ」


 直人は本日五度目のため息を吐くと竹刀を構え不良達に向かって走り出す。


「・・・・・!?」


 その瞬間、直人は今までに感じたことのない寒気を感じた。

 長年、辛い修行を行った一流の戦士のみが感じ取れる危険のにおい、直人はとっさに後へ跳び退いた。しかし不良達は依然として直人に向かってくる。

 その十分の一秒後。


「・・・・・!?」


 視界にいた不良達の体が上下に分かれた。何が起こったのか、直人はいきなりの出来事に頭が混乱する。不良達の切断された体が視界を埋め尽くす。直人はそれを大きく見開かれた目で凝視する。


 もし、うしろに跳んでいなかったらと考えると彼の顔から血の気が引き、眼球は不良達の死体から視線を離そうとしない。すると右の方から若い男の声がする。


「ほう、一人残ったか・・・・・」

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電撃オンラインにインタビューを載せてもらいました。

https://dengekionline.com/articles/127533/

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