第46話 日本オールスターズ
鉄砲を使わせないよう、日本軍と接近したまま後退し、敵を挟撃部隊が潜む山と森まで誘いこむ。
それが呉の兵に伝えられた作戦だった。しかしその命令は無駄と言えよう。何故なら日本軍はおびき出すまでもなく我先にとある者は馬を走らせ、ある者は自らの足で全力疾走をして激進する。
呉軍は徐々に後退どころか全力で逃げてもいいだろう。そう、日本軍は……
「伊達の武勇を見せるは今ぞ! 軟弱な南国連中に東北男児の力を見せつけい‼」
『猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛猛‼‼‼』
寒く厳しい土地に鍛えられた益荒男達が馬上から槍を操り先頭の政宗に続く。
《東北の覇王・独眼竜・伊達政宗》
「どうした宿敵その程度か‼ 武田騎馬軍団の名が泣くぞ‼」
「お主こそ軍神が聞いて呆れるわ‼」
進攻上全ての敵を殺し尽くす二軍、その先頭で二人の男と女が返り血を浴びながら笑みを交わし合う。
家臣達も関東の龍虎の名に恥じぬ戦をしようと奮起する。
『軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍軍‼』
『獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣獣‼』
《軍神毘沙門天の化身・越後の龍・上杉謙信》
《戦国最強の騎馬隊王・甲斐の虎・武田信玄》
「宗茂‼ この義弘とお前、どちらが総大将の首を獲るか勝負ぞ‼」
「宗茂‼ この誾千代の夫ならば一番に敵本陣へ着かねば許さぬが大将首は私のだ‼」
「うわぁ、俺モテモテじゃん、鬼と雷神にだけど……」
「鬼ならばここにもいるぞ、そして貴様は風神であろう。さぁ、最強の鬼を決めようぞ‼」
「まぁ風神と雷神て見た目鬼と同じだけどな、それじゃ……どばーっと行きますかねぇ‼」
四人の鬼神が猛る。鬼神が叫ぶ、鬼神が獲物を振るい脆弱な人間達を地獄に叩き落とす。
彼らの軍が進めば左右に死体の山が築かれ、通り過ぎたところには血肉の海が広がった。
《鬼島津・勇武英略の傑物・島津義弘》
《雷神・西日本最強の女武者・立花誾千代》
《風神・西日本最強の男武者・立花宗茂》
《四国の覇者・鬼若子・長曾我部元親》
「おいおいこれ何万人いるんだよおい! これ全部殺していいのかよ、たまんねぇなぁ‼」
「呉軍てのは戦の楽しみ方も知らないのか? いいから全員まとめてかかってきな‼」
「ちょっと幸村! 武将見つけたら教えなさいよ! あたしが討ち取るから!」
「いやいやそんな事言ってる暇、あ、今斬った人の兜立派だったな」
「何してんのよバカぁ!」
《天下一の槍使い・槍の又左・前田利家》
《天下御免の傾奇者・天下一の無法者・前田慶次》
《無名の新人武者・真田幸村》
《自称最強の女武者・成田甲斐》
「よし弁慶競争だ! 俺が先に本陣についたら静御前の下半身を剃毛する。お前が勝ったら静御前は一年間腰巻(女性用下着)の着用禁止!」
「御意!」
「勝手な事言うなぁ!」
「あーごめん、お前剃るだけ生えてないっけ?」
「与一あんた弓持ってるんでしょ! 早くこいつを射ってよ‼」
「ははは、そんな事言ってる間に二人とも行っちゃいましたよ」キラキラ
義経は兵士達の頭を足場に頭上を走って本陣へ、弁慶はそれに比肩する速度で雑兵を薙刀で一掃しながら敵本陣目がけて疾走していく。全ては静御前を恥ずかしい目に合わせるが為に。
「ぎゃああああああああ、あの下衆武将共‼」
静御前は叫びながら舞い踊り、踊るような動きで次々兵士達を投げ飛ばし、転ばし、時には顎を打って気絶させる。
兵士達は皆頭から地面に落ちて死んでいく。
「あいつらはいつも賑やかだな与一、この為友にはついていけん」
「ええ、本当に」キラキラ
義経と弁慶を追いかけるように源氏軍は呉軍をかきわけ突入。源為友と那須与一の二人は弓兵でありながら彼らと共に前線で弓を射ながら義経を追いかける。
与一は一度に三本の矢を射ながら全てが敵兵の顔面に命中。
為友の剛弓から放たれた矢は一発で敵兵二〇人の頭を兜ごと貫通してようやく止まった。
「逃げるな豚共それでも貴様ら男か! 違うと言うならばこの場でセンズリをこいてみるがいい‼ 逃げる者は全員金玉を潰すぞ‼」
そこらの不良程度なら刺し殺せそうな眼光の巴御前を前に、呉の雑兵達は股間を押さえながら逃走。
そして全員背中からバッサリ斬り殺された。
《源平最強の武士・源義経》
《源平最強の僧兵・武蔵坊弁慶》
《戦う戦場白拍子・源静》
《日本最優の弓兵・那須与一》
《日本最強の弓兵・源為友》
《東日本最強の女武者・源巴》
敵兵の首を刎ねながら沖田がこぼす。
「ぼく達市街戦は得意だけど野戦は苦手なんだけどね、ねぇ斎藤くん♪」
斎藤が刀で敵兵の頭を兜ごと貫きながら漏らす。
「命令ならば殺す……町でも外でも地獄でも……な」
土方が諸手突きで敵兵三人の胸をまるごと貫通。抉るようにしてひねり抜いて次の敵を探す。
「鬼の副長のお通りだ! 死にたい奴はかかってきな!」
「みんな苦しい時は一緒だ。私も苦しい。だからみんな私に続くのだ!」
近藤が刀一本で槍兵部隊に突っ込み、全ての槍をかわして敵兵の首を刎ね飛ばす。
《新撰組最強の光・沖田総司》
《新撰組最強の闇・斎藤一》
《新撰組鬼の副長・土方歳三》
《日本史上最強剣士団新撰組局長・近藤勇》
「呉は我々の長年の敵! 日本にばかり活躍はさせないぞ!」
鎧で武装した戦象軍団が雑兵達を踏み潰し、跳ね飛ばし直進する。
軍馬よりも遥かに背の高い象の背からは槍ですら届かないが、ベトナム兵達は象の背から弓矢を放ち、チュウ・アウは弩を放ち周囲の敵を次々射殺していく。
遠くの敵が戦象の上に乗って目立つアウを弓で狙ったが、アウは矢を右手でつかみ取って握り潰した。
《ベトナム最強の女大将軍・チュウ・アウ》
そして何よりも、誰よりも。
「轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟‼‼‼」
巨大な漆黒馬、三国黒にまたがりソレは駆ける。
天下三名槍の一本、蜻蛉切を振り回しソレは行く。
兜は鹿の角をあしらった鹿角脇立兜と黒糸威銅丸具足に大数珠を身に付けソレは進む。
全身にまとった斬撃の嵐が敵の弓矢の軌道を捻じ曲げ、敵を鎧兜ごと斬り殺す。
ソレの足を誰一人止められず、ソレの足を誰一人遅らせる事もできず、ソレが先頭に立ちソレが率いる部隊は軍馬の全速前進を以って呉軍本陣を目指す。
「我が名は本多平八郎忠勝‼ 此度の勝利を主君家康公の為に捧ぐ‼ 道を空けよ‼‼」
《東日本最強の男武将・日本第一古今独歩の勇士・本多平八郎忠勝》
一騎当千どころの話ではない。まさしく万夫不当、天下無双の大将と言われるに恥じない忠勝の武勇が戦場を突き抜ける。
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