第41話 VS呉国
「呉の南半分、全武装解除は整っているな?」
「はい、統治した土地の徴兵された兵は全て解放。平民に戻し工事や農作業に当たらせております。武士階級の者は残してありますが、完全に支配下にあり恭順済み。反乱の意志は無いと思われます」
ベトナムの首都、ハノイの城で蘭丸は信長に甲冑を着せ、光秀が信長の質問にテキパキと答えていく。
周瑜が二五万の兵を建業へ入城させたと聞いてから、信長はすぐさまベトナムに駐留する直属軍五万のうち三万に戦支度をさせた。
呉の最強軍師周瑜が出てきた以上、呉軍本体が出て来るに違いない。加えて忍びの情報では、未だ信長の統治下に入っていない呉北部の町で新たな徴兵が始まったらしい。
決戦の予感を感じながら、信長は光秀に問う。
「東南アジア組はどうなっている?」
「滝川殿、尚巴志殿の軍が島々を、丹羽殿と山田殿が大陸部を完全統治。島津殿、長曾我部殿は五〇〇門の大砲と火縄銃五〇〇万発分の火薬を船に積み込み、呉の杭州湾へ向かい、徳川様と合流する予定です」
「呉の攻略軍で最も消耗している軍はどこだ?」
「柴田殿の軍です。野戦での近接戦闘では積極的に戦われ負傷兵が多く兵も疲れています」
「よし、統治した東シナ海と呉の海岸線を含む東部は九鬼、池田率いる三万の軍、中央と西部は柴田二万の軍で管理防備を固めろ。それと北部と南部の間には奪った城と砦がいくつもあったな?」
「はい、籠城すれば焼き落とされると学習した敵は籠城せず、野戦ばかり挑むようになりましたので、全軍北上する途中からは城と砦は無傷で手に入れられるようになりました。必然的に日本の統治下にある地とそうでない地の間には占領した砦と城が並んでいます」
「ならばその管理は光秀、お前の二万の兵にさせろ。疲弊した柴田の軍では国境線を守るのは苦しい。代わりに大砲二〇〇門を与えるが、お前は俺についてこい」
光秀の顔に困惑が浮かんだ。
てっきり自分は国境線を守る任務につかされるのだと思ったのだ。信長は小さく笑う。
「お前には俺が呉を統一する瞬間を間近で見せてやる」
「!? …………はい‼」
鎧を着た信長は外へ足を早める。その後ろから蘭丸と光秀も続く。
ハノイの城門を出ると、三万の信長軍が待っている。象の鳴き声がして、信長は首を回した。
「アウ、戦支度をしてどうした?」
そこには鎧を着て戟を持ったチュウ・アウが戦象に乗っていた。
「聞きましたよ、呉との一大決戦だって。ならベトナム軍が出無くてどうするんだ。ベトナム軍二万、従軍させてもらう」
「お前と俺の兵二万、合計四万でベトナムを守らせるつもりだったがいいのか? ベトナム全土を俺の部下が守る事になるぞ?」
アウは笑い飛ばし、信長を見つめる。
「何を言う、ここベトナムは信長殿、貴方の領地で、我らは貴方の家臣。躊躇う理由がどこにある?」
「言うなアウ。いいだろう。ベトナム軍も来い」
「「信長様!」」
アウの戦象の横から二人の女性が進み出る。
ベトナムの女王チュン姉妹。姉のチュン・チャックと、妹のチュン・ニだ。
二人とも真剣な眼差しで信長を見上げ、力強い言葉を送る。
「「どうか、御武運を‼」」
「ああ、言って来るぞ‼ 全軍進めぇえええええええええええええ‼」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼』
五万人の鬨の声がハノイを揺るがした。
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